1971年生まれ。2002年に現プリモ・ジャパン株式会社入社。2004年に代表取締役社長就任。国内市場での店舗展開とともに業界に先駆けて海外に進出し、プリモグループ全体の指揮を取る。 プリモグローバルホールディングス株式会社の設立に伴い、2021年に代表取締役就任、現在に至る。
貴社のこれまでの事業変遷と組織拡大の沿革
当社は1999年に設立され、今年で創立25周年を迎えています。私は2002年に入社し、2004年から代表の立場を務めており、今年で代表歴20年となります。当初は日本から始まったウェディングジュエリー専門店のリテールビジネスを展開していましたが、2007年から台湾を皮切りにグローバル展開を加速し、現在は売上の約半分を海外で作っている会社になっています。
当社の歴史の中でいくつかのターニングポイントがありましたが、特に海外に軸を振ったことで、ダイバーシティマネジメントが非常に重要となりました。「日本人」・「日本の」という日本を枕詞にしたものだけではなく、多様な文化や考え方を持つ人々と働くことが求められるようになりました。
私自身も昨年から上海に拠点を移し、海外で働くことに挑戦しています。日本人とは全然考え方が違うと感じることが多く、大陸の大きな土地や人口の中で、日本流の考え方だけではうまくいかないことを実感しています。
組織・事業拡大において重要視している点は、優秀な人材の海外派遣です。2007年に台湾に進出した際、組織編成で最もこだわったポイントは、日本で一番優秀な人材を台湾事業の責任者に任命することでした。これにより、日本の組織も大きく変わり、新しいメンバーが育ってきました。その経験を活かし、2016年に中国大陸に進出した際も、日本で一番優秀だった人材を中国大陸事業の立ち上げ責任者に抜擢しました。これらの抜擢文化の結果、会社が大きくなり、幹部も順調に成長していると感じています。そのため日本チームの編成が大きく変わり大変な点もありましたが、新しい国やエリアに進出する際には、常にその時点での日本チームの中で一番優秀な人材を抜擢することを重要視しています。
現在、5拠点でビジネス展開し、売上は200億円を突破しています。日本という狭い範囲でビジネスをしているだけでは、シェアが広がりにくいため、さまざまなエリアに進出し、新たな価値観が生まれることで、成長を遂げています。
これまでぶつかってきた組織課題
お伝えした通り、優秀な人材を抜擢し、事業拡大を進めてきましたが、任せすぎて組織がくずれてしまうのも良くないと考えています。私が社長に就任した2004年の時、副社長として働いていた人は非常に優秀で、まさに私の右腕でした。しかし、タイミングが悪く彼は退職してしまいました。他にも似たようなことがあり、信頼し任せていたものの新しい道に進んでしまうことに対して、キャリアアップとして良いことではあるのですが、組織としての課題を感じました。私自身も落ち込みましたし、任せすぎるのも大変だと感じています。
ただ、私の体感では、300名以上の組織運営をしていると、私以外にも仕事を任せる分身が必要です。副社長が辞めた時の社員数は約350名でした。そのなかでマネージャーの突然の辞職により混乱が生じますが、一定の期間が経つと新たに育っていく人材も見出すことができます。
任せるべきポイントや責任を持たせる意味で、人材を育ててステップアップさせることは重要です。しかし、全てを任せきってしまうと、責任の所在が曖昧になりリスクが高まります。
特に海外では、物理的な距離があるため、人や物、金を結局任せなければならないことが多いです。私は全拠点で代表権を持っており、一定のガバナンスを効かせていますが、現地においては彼らがトップであり、彼らの判断で全てを動かすことがあります。これは難しい問題であり、どちらかというとガバナンスを効かせるよりも、信じ切ることが重要だと考えています。
貴社が考える、今の時代に必要な従業員との向き合い方
信頼性や安心感を大切にして、自分たちが任されていることに自信を持って業務を進めてもらう環境づくりをすることが重要だと思います。当社は後発企業であることから、日本のジュエリー市場においては有名な企業でありながら、世間一般的にはマイナーな存在でした。しかし、接客サービスやホスピタリティを提供することに力を入れており、良質な人材と仕事をしたいという思いが強くありました。
それを実現するためには採用が最も重要であると考えましたが、給与だけ高くても良い人材は集まりません。そこで、女性活躍を重視し、女性が働きやすい環境を整えることに力を入れました。「えるぼし」と「くるみん」のダブル受賞はブライダル業界で最も早く取得したもので、これにより良い人材が集まるようになり、業績も上がるという好循環が生まれました。
また、個性を尊重し、個々の考え方を認め合うことも重要視しています。ブライダルビジネスを展開している当社では、現在Z世代のお客様や従業員が増えています。彼らは情報化社会の中で、様々な情報に追われる、今までとは価値観が全く違う時代に生きています。そのため、従業員の価値向上に向けて、会社が研修や仕組みを通じて人材を育てることが求められています。 私たちは、プリモイズムという文化を持っており、新入社員にはそれに合わせるようマニュアル化をしていました。しかし、今後は多様化やダイバーシティマネジメントが重要となります。特に、グローバル企業である当社では、全従業員の3分の1が海外で働いています。そのため、様々な価値観を持つ人材を大切にすることが重要だと考えています。
従業員の価値(人的資本)向上に向けて取り組んでいることやこれから取り組もうと思っていること
当社では、育児支援や介護支援、自己啓発などの福利厚生に力を入れております。 当社の年間離職率は約15%弱で、平均勤続年数はおおよそ6年弱です。これは、ブライダル業界やジュエリー業界において比較すると、まあまあ優秀な数字だと言えます。
この離職率に関しては、女性の働き方が影響しているかもしれません。女性ならではの結婚や出産などの人生イベントがあると、一度仕事を離れることが多いですが、当社では復帰しやすい環境が整っています。例えば、育児休業を経てアルバイトから復帰し、子供が大きくなってから正社員として働く方もいらっしゃいます。また、一旦復帰するつもりで育児休業を申請される方は95%ほどです。
社員が喜ぶ施策を実施し、会社としてのイメージを高めていくことが重要です。また、社員の方々にライフワークバランスや人生を楽しむこと、結婚のお手伝いをしたいという想いをもつことが大切だと考えています。
さらにダイバーシティマネジメントという観点から、会社の文化を構築していこうと考えています。それは従業員の個性を尊重し、個々の考え方を認め合いながら、社員と向き合っていく体制を作っていくことです。 具体的な仕組みはまだ道半ばですが、当社はお客様を大事にし、チームワークを重んじる会社です、と社員に押し付けるのではなく、当社はお客様を大事にし、チームワークを大切にしたい会社なので共感すれば一緒に実現してほしいとお願いするようにしています。そのうえで、社員が働く中で、自分のキャリアプランを立てることができるように、自己申告シートを提出してもらっています。
これにより、社員がどのようなキャリアを目指しているのか、どういう考え方を持っているのかを理解し、それに応じたサポートを提供しています。 このように、会社や従業員のお互いの考え方を共有することで双方の価値観を尊重し合って個性を活かしていきたいと考えています。
今後の展望と従業員への期待について
来年度にはマレーシアに進出予定です。そのためには宗教の違いも認めていかなければなりません。宗教問題からくる民族紛争もありますが、相手を認めることが世界平和に繋がると信じています。
私は、人の幸せを心から願うパイオニアのような人になりたいと思っています。そのためには、相手を認めることが原点だと感じています。これまで私たちは社員にプリモイズムという文化を押し付けてきましたが、これからは個人の個性を認め合うことが大切だと考えています。
そうすれば、良い人材が入ってくるでしょう。人材に関しては教育も大事ですが、採用も重要で、恵まれた人と一緒に仕事ができるかが重要です。面白くて楽しくて優しい人が入ってくるような会社の環境を整えることが、会社にとっても良い結果をもたらすと信じています。
- 氏名
- 澤野 直樹(さわの なおき)
- 会社名
- プリモグローバルホールディングス株式会社
- 役職
- 代表取締役