政府からの「リスキリング支援1兆円投資」や「人的資本開示の義務化」の発表があり、企業というものの“人財”や“社員”への向き合い方が問われている。そんな中、“働くもの”に愛され、社員の力で成長し続ける企業に、その取り組みや今後の展望を伺った。

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(画像=日工株式会社)
辻 勝(つじ まさる)
日工株式会社 代表取締役社長
1960年生まれ、埼玉大学工学研究科卒。造船会社での勤務を経て1987年に当社入社。技術部門において社内のIT化を推進したのち新規事業の立ち上げに従事。その後も営業、工事、企画と様々な部署を経験し2019年に代表取締役に就任。 現在は技術本部を管轄し、主にカーボンニュートラル関係の開発を積極的に推進している。趣味はゴルフ、孫、甘いものを食べること。1級建築士、1級土木施工管理技士の資格を持つ。
藤井 博(ふじい ひろし)
日工株式会社 取締役副社長
1959年生まれ、一橋大学経済学部卒。大手金融機関やコンサルティング会社にて法人営業を30年経験したのち、2011年に当社入社。財務部門にて株主優待制度の導入や株式分割など株主数増加のためのIR施策を推進したのち2023年に取締役副社長に就任。現在は管理部門を管轄し、主に人的資本強化に向けた制度改革や女性・高度外国人材の採用を推進している。趣味はゴルフ、落語。
1919年、世界的商社であった鈴木商店関係者により創業。スコップなどの工具制作からはじまり、今日は日本のインフラを支えるプラントメーカーとして事業展開を行っています。みなさんの足元を支える「道路」、建物を支える「コンクリート」。
その大半は日工のプラントから生み出されています。
アスファルトプラントの国内シェアは78%、コンクリートプラントの国内シェアは40%に上り、プラントの製造やメンテナンスを通してインフラを支えています。

104年の歴史を持つ日工の事業変遷

当社の創業は今から104年ほど前になります。当時の国内最大手の商社の工事部門から分社化に近い形で、シャベルやスコップ、ツルハシなどの土農工具の製造・販売の事業でスタートした会社です。

創業から50年ほど経った頃から、現在の主力事業である、アスファルトプラントやバッチャープラントなどのプラントや建設機械を作るようになりました。その後、高度成長期には順調に成長しましたが、バブルが弾けて停滞期に入ってしまいました。そこで私たちは成長が止まり、なんとか現状維持するという状況がしばらく続きました。しかし、その間に、市場の縮小とともに競合他社が撤退したことで、私たちの事業自体は大きく損なわずに続けることができました。 最近は、全国に行き渡ったプラントのメンテナンス需要が拡大しており、プラント事業の中でも売上の約6割がプラントのメンテナンス事業になっています。これにより、メンテナンスサービスというストック型の収益モデルの事業が大きくなり、企業としての安定感と収益性を高めることができています。

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(画像=日工株式会社)

18ヶ月の対話と努力で生まれた全社員納得の人事改革

私たちの会社は歴史が長く、古くからの習慣が根強く残っていたこともあり、その組織文化や制度の変革に取り組むには難しい状況でしたが、組織の拡大や人材の多様化に伴い、人事制度の刷新は取り組むべき大きな課題でした。 メンテナンス事業の拡大に伴い、お客様との関係値構築だけでなく、事務処理や業者の手配などのメンテナンスにおける業務効率改善の重要性が増しています。設備のIoT化や、業務負荷を減らすリモートメンテナンスなどのIT化が進んでいて、求める人材も、ITを活用しビジネスモデルを変えていくなどの視点を持てるような人材に変わってきています。さらに、現在は国内だけにとどまらず、中国やASEANに拠点を拡大しているため、海外事業においても活躍できるような人材も必要としています。

こうした組織課題や人材需要に対して様々な人事制度の改革に取り組んでいますが、今回はそのうち2つの施策についてご説明いたします。 1点目は、教育制度の改革です。OJTによる教育システムに加え、年一回の集合研修も展開しました。さらに、社内だけでなく、社外の教育プログラムに参加できるような仕組みにしました。また、上司と部下のコミュニケーションにおいても、1年に5回以上、1on1の面談を行うという制度を作り、その上で管理職のメンバーに対しては1on1を有効に活用するための研修も実施しています。 2点目は給与水準の向上や評価制度の改革です。まず、今まで塩漬けになっていた年功序列の文化を廃止し、企業の未来を作る若手社員への待遇を改善するために、若手社員に対し、一律3万円の給与のベースアップを実行いたしました。また、全社の評価制度を根本的に刷新しました。年功序列型の制度ではなく、実績を上げた人や努力をした人が報われるような、公平で透明な新人事制度を今年の4月に導入いたしました。この新たな制度は、説明会や組合との面談など社員との会話を地道に繰り返し、社員が求めるものをしっかりと反映させた上で、全社員にとって納得感があるような制度を作るために、約18ヶ月の時間をかけて作成しました。

私たちは、事務職、現場の職人、営業職、メンテナンスや管理部門など職種が多いことに加え、北海道から沖縄県まで拠点があり、なおかつ海外にも拠点があるため、スキルアップのためには小さな支店から本部まで幅広く経験する必要があります。また、転勤する社員も多く、これらの社員を、公平で納得感のある評価や待遇を決めることに大変苦労しましたが、なんとか形にすることができました。

株式会社オカムラ
(画像=日工株式会社_藤井 博)

Z世代と本音で繋がる1on1

上司と部下との本音ベースでのコミュニケーションを大事にしています。経営者として、新たな制度の設計を行って満足感に浸るのではなく、社員同士が本音をぶつけ合うような環境を提供できているかということに対し、継続的にフォローしていく必要があると考えています。特にZ世代と呼ばれている方々は、昔のように飲みに言って会話するようなコミュ二ケーションではなく、必要なことは会社で話しましょうというスタンスですので、私たちのような歴史が長く、古い文化が残っている企業では、社員同士の価値観のすり合わせも重要な点です。

また、上述の1on1の制度を実施したことで、私たち経営陣が考えていた以上に、若手社員が上長とのコミュニケーションを求めていたことがわかりました。実際、1on1の面談については、社員から好評の声をいただいています。自分のやりたいことや意思を伝えたり、困っていることの相談もしやすくなったとの声を頂いています。その一方で、一部では上司の面談の質に対して、改善を求める声もいただいているので、ここについては管理職のメンバーへの研修などを継続的に行うことで改善したいと考えています。

積極的な女性と外国人採用によって進むダイバーシティ強化への一歩

ダイバーシティ&インクルージョンについては今後取り組むべき項目として考えています。特に、女性や外国人の活躍のために、まずは、彼女らの採用を積極的に行っています。

業界の特性上、これまでは女性に内定を出しても、他社との検討の結果、断られてしまう事が多かったです。そこで、女性の方や海外の方に興味を持っていただき、働きたいと思っていただけるように、組織制度の改善や働く環境の整備をおこなっています。実際、2024年卒の内定者である21名のうち女性が4人、外国籍の人が3名と例年より割合が増加していることは良い傾向として捉えています。最終的には、男女比が半々になることを目指して、小さな努力を積み重ねていくつもりです。

熱意ある人が光る職場環境へ

私たちは、全社員に対して等しく報酬や待遇を与えるというよりは、やる気のある人に対してしっかりと投資したいと考えています。もちろん、機会やチャンスは、すべての人に公平に与える必要があると思いますが、その上で会社の持つリソースをどこに割くべきかという点については線引きが必要だと思っていますので、様々な取り組みを通して、やる気のある人が報われるような組織の土壌を育てていきます。

そのために、まずは社員の声を聞くことが重要です。現在は、スモールミーティングというかたちで、立候補していただいた社員の方々と私で90分程度の面談を行う会を2ヶ月に1回開催しています。そこで、社員から頂いた意見については、リクエストが10個あったら、その全てに対応することは現実的に難しいですが、10個の要望のうちの2、3個は実現したいと思っています。話を聞くだけではなく、有言実行の会社にしていきたいです。

こうした活動を通して、私自身が若い頃に苦労した経験や、そのとき感じていた難しさや熱意を思い起こす機会が増え、一歩ずつ相互理解が進んでいると感じています。コミュニケーションの機会は今後もさらに増やして、気持ちが通じ合う会社にしていきたいと考えているので、社員の皆からも本音の意見をぶつけていただけたら嬉しいです。

氏名
辻 勝(つじ まさる)
役職
代表取締役社長
氏名
藤井 博(ふじいひろし)
役職
取締役副社長

 

会社名
日工株式会社