特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

    株式会社アイキューブドシステムズ
(画像= 株式会社アイキューブドシステムズ)
佐々木 勉(ささき つとむ)―― 株式会社アイキューブドシステムズ 代表取締役執行役員社長 CEO
長崎県平戸市出身。高校卒業後、福岡市で新聞奨学生として働きながら専門学校で学ぶ。システムエンジニアとして5年間従事した後、2001年に独立して有限会社アイキューブドシステムズ(後の株式会社アイキューブドシステムズ)を設立。
株式会社アイキューブドシステムズ
2001年9月設立。業務システムの受託開発やSEO対策支援などの事業を経て、2007年以降、プロダクトカンパニーへの転換を図る。2010年に日本初のiOS向けMDMサービス(※1)として、「CLOMO MDM」をリリースし、業績を拡大。2020年7月に東証マザーズ(現:グロース市場)に上場。2022年には、子会社として株式会社アイキューブドベンチャーズを設立し、CVC投資を主軸とした投資事業を開始。
(※1)2010年11月18日時点での自社調査によります。

目次

  1. 創業から上場までの事業変遷
  2. エクイティを活用しようと思った背景や思い
  3. 今後の貴社における事業戦略や展望
  4. 今後の重点テーマ
  5. ZUUonlineのユーザーに一言 

創業から上場までの事業変遷

    株式会社アイキューブドシステムズ
(画像= 株式会社アイキューブドシステムズ)

ーー創業から上場までの事業変遷について教えてください。

株式会社アイキューブドシステムズ 代表取締役執行役員社長 CEO・佐々木 勉氏(以下、社名・氏名略): 創業は2001年で、現在はCLOMO MDMという自社製品を中心としたSaaS事業に注力しています。

私は専門学校を卒業後、福岡の地場企業で4年9ヶ月エンジニアとして勤めた後に起業しました。当初はインターネット技術を活用したウェブアプリケーション開発を行い、地場企業の販売管理や給与システムなどを手掛けていました。ある時、シリコンバレーでグーグルやスタートアップ企業へ訪問機会があり、そのときの影響を受けてソフトウェアプロダクト開発に方針転換しました。

2007年から3年間で10個ほどのソフトウェアサービスを開発し、2010年にCLOMO MDMという現在の主力製品の提供を開始しました。現在は5000社を超えるお客様に利用されています。

ーーMDM市場はこの10年間で急速に拡大していますが、御社にとって追い風となっていると感じていますか?

佐々木:そうですね。働き方や学び方が変化する中で、リモートワークやタブレットを活用した学校教育などが普及したことで、私たちのサービスが広がっています。

ーー御社のプロダクトの優位性について教えていただけますか?

佐々木:自社で運用からサポートまで行っている点です。 一般的なソフトウェアの提供モデルでは、OEM先がサポートや運用を行っています。しかし私たちは直接お客様とつながっていることを大事にしており、トラブルにもサポートできる体制を整えています。

また、一通り自社で管理することで、運用コストを調整したり、利益を出すための戦略を立てやすくなっています。経営的な側面も含めて、最適化しやすい形にできていると考えています。

エクイティを活用しようと思った背景や思い

ーーエクイティを活用しようと思った背景や思いは何でしょうか?

佐々木:資金調達をしてより良いプロダクトを作ることと、会社としての信頼性を示すためです。 プロダクトを開発し、提供したいと考えた際に、借入だけで賄うことが難しいと感じていました。また、お客様は企業の方々が多く、導入する際に開発したプロダクトを信頼してもらう必要があります。信頼性を示すためにも上場することを決めました。

ーー 投資戦略について、今後どのように拡大される予定ですか?

佐々木: 現在、株式会社アイキューブドベンチャーズという子会社を通じてCVCファンドを運用しており、これまで5社のスタートアップ企業に投資しています。次のステップとしては、単独LPではなく、他社と協力してファンドを運用していくことを考えています。また、事業の力になっていただける企業が見つかり次第、M&Aを行い、積極的に拡大していきたいと考えています。

今後の貴社における事業戦略や展望

    株式会社アイキューブドシステムズ
(画像= 株式会社アイキューブドシステムズ)

ーー今後の事業戦略や展望について教えてください。

佐々木:これまでは、弊社の主軸製品であるCLOMO MDMを提供することで、お客様に安心・安全にモバイルデバイスを管理・活用していただくことに力を入れてきました。一方で、情報システム部門の人材不足を課題として抱えている企業は多く、そのようなお客様に対して、モバイルデバイスのキッティングやMDMの運用を代行するなど、お客様の困っていることをお手伝いする、支援サービスも広げていこうと考えています。現在、5000社ほどの顧客基盤があり、新規顧客開拓も安定的に進んでいます。この顧客基盤に対して、ソフトウェア以外の部分でも利益最大化を図っていくことが短期的な目標です。

中期的には、売上50億円を達成することです。これを達成するためにお客様の困っていることを解決できる事業を成長させていきたいと考えています。

ーー事業を展開する上での課題はありますか?

佐々木:支援サービスを広げていく上での、体制の構築です。これまでは、一部の限定的なお客様に対してそのような支援を行うことはあったものの、多くのお客様にサービスとして提供してはいませんでした。 他のお客様からもニーズはあったのですが、軸となるソフトウェアの基盤がしっかりしていないと、このようなビジネスがスケールしにくいことが課題でした。現在は、CLOMO MDMというソフトウェアが大規模ユーザーに対しても安定的に運用できる基盤が確立され、弊社の人的リソースの増強も進んでおり、これまで限定的に行っていたことをサービスとして少しずつ提供できるようになり、支援サービスとしてラインナップを広げていくことができるようになっています。

今後の重点テーマ

ーー今後の重点テーマについてお聞かせいただけますか?

佐々木: クロスセル商材のラインナップを増やして、顧客企業1社あたりの利益を向上させていくことです。

これまで築いてきた顧客基盤の利益を最大化するために、様々なクロスセル商材のラインナップを増やしていきたいと考えています。

ーー クロスセルの単価を上げる方法について、どのように考えていますか?

佐々木: 私たちの製品ラインナップは、まだ拡大の余地が多く残されています。CLOMO MDMと組み合わせてさらに安全且つ効率的にモバイルデバイスを利用していただけるような、セキュリティやモバイルデバイスの活用ツールなど、お客様からニーズのあるオプションサービスを多岐に渡り提供していく方針です。パートナー企業と協力して製品ラインナップを充実させ、活用事例紹介などの啓蒙活動を通じてお客様からの認知を高めることで、クロスセル単価の向上、ひいては中期売上目標の達成が可能だと考えています。

ZUUonlineのユーザーに一言 

ーー ZUUonlineのユーザーに一言お願いします。

佐々木: 弊社では新しくブランドスローガンをリニューアルし、「挑戦を楽しもう。」というスローガンで中長期目標達成に向けて動いています。上場して3年が過ぎ、ここからは挑戦をしっかりと行っていく時期だと考えています。

顧客基盤をさらに広げていき、新しい事業も展開していく予定です。ぜひご期待いただければと思います。

氏名
佐々木 勉(ささき つとむ)
社名
株式会社アイキューブドシステムズ
役職
代表取締役執行役員社長 CEO