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(画像=日置電機株式会社)
久保田 訓久(くぼた くにひさ)
日置電機株式会社取締役常務執行役員最高技術責任者(CTO)兼最高情報責任者(CIO)サステナビリティ推進担当
1990年日置電機入社。電力計等の開発、設計を担当。執行役員イノベーションセンター長兼技術1部長等を経て2018年2月に取締役に就任し、 2022年1月から現職。現在、同社グループの製品開発の牽引と、DX、サステナビリティの推進を担当。
日置電機株式会社
1935年に創業。現在、自動車をはじめ、電子部品、環境・新エネルギー、インフラなど、様々な分野に向けて電気計測ソリューションを提供している。産業のマザーツールと呼ばれる電気計測器は、研究開発、生産ライン、保守サービスなど、あらゆる場面で必要不可欠。電気計測ひとすじ88年の歴史で培った確かな技術と独自のイノベーションにより、お客様の安全で有効なエネルギー活用を促進し、社会の安心と発展に貢献している。

ESGにおけるこれまでの取り組み

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(画像=日置電機株式会社)

私たちの取り組みは、純粋に地域や社会に貢献するという視点から始まりました。弊社は長野県坂城町から現在の上田市に本社工場を移転する2年前の1988年に、「工場建設に伴って失われた自然を復元させ、工場公園にしよう」と、全社員で約60,000本の苗木を植え、森をつくりました。

この活動は継続して行われ、今では航空写真からも確認できるほどの豊かな緑になっています。また、地域のリトルリーグ運営の支援にも力を入れており、この活動は子どもたちの健全育成にもつながっています。

更に地域への貢献とは別に、我々は環境問題に対する取り組みも進めてきました。例えば昨年からは、自動運転EVバスの実証実験の取り組みを始めました。この取り組みでは、上田市や長野県警察、地域のバス会社のご協力を得て、8月から9月にかけ公道で実際にバスを走らせました。

自動運転EVバスの実証実験の目的は、社員や地域のコミュニティの方々に、次世代モビリティに直接触れる機会を作りたいと考えたことにあります。我々が目指すのは、人口減少や高齢化が進む地域で、交通をどのように維持管理していくのかという問題に対して、現時点での一つの可能性を示すことです。

ESGの取り組みや事業の強み、実績

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(画像=日置電機株式会社)

私たちのESGの取り組みは三つの主要な柱から成り立っています。それらは地域への貢献、環境への配慮、そして社員の採用や管理という視点です。これらが私たちの取り組みの核心となり、弊社の強みとしても挙げることができます。

地域への貢献という視点では、私たちの取り組みは「人間性の尊重」と「社会への貢献」の二つの理念に起源を持ちます。この「HIOKIの理念」の策定から今日に至るまで、弊社は地域に対する貢献を行い続けてきました。

具体的には、約30年前の上田市への移転を始めとして、豊かな森を作るための植樹活動を行い、地域の子どもたちがスポーツを楽しむことを奨励するなど、幅広い活動を行っています。これらの活動は、私たちの存在が地域の経済や生活に深く根差していることを示しています。

一方、環境への配慮という視点では、私たちは新たな技術やシステムの導入を通じて、地球環境への負荷を軽減する努力を行ってきました。昨年から取り組んできた自動運転EVバスの実証実験は、持続可能な未来の交通システムを地域社会に提示する試みであり、地球環境への配慮と地域への貢献が一体となった取り組みです。

また、私たちの敷地内に設置したソーラーパネルは、再生可能エネルギーを積極的に活用する私たちの姿勢を示すものであり、全ての社用車を電気自動車に切り替えていくという取り組みも、環境への配慮と持続可能性への取り組みを具現化したものです。

私たちの取り組みはまた、社員一人ひとりが主体的に行動することを促す形で行われています。社内の全てのメンバーが、自分たちの力で新たな価値を生み出そうとするエネルギーが、私たちの事業の成長を支えてきたと言っても過言ではありません。

ESGの取り組みでこれから目指すところ

我々のESGの取り組みの進行は、より広範な視野での継続的な努力を必要とします。私たちの大目標はカーボンニュートラルの実現であり、そのためには様々な段階的な目標を設定し、それぞれの段階で必要な活動を行っていく必要があります。そのため私たちは現状に満足せず、次の段階に向けた取り組みを常に考えています。

私たちは現状では、社用車のカーボンニュートラル化や、提携しているガス会社さんからのカーボンフリーのガスの供給といった具体的な取り組みを通じて、カーボンニュートラル化に向けた一歩を踏み出しています。しかし、それだけでは十分ではありません。カーボンニュートラルの達成には、私たち自身の活動だけでなく、地域社会や社会全体の変化も必要です。

そのため、私たちは地域や社会と連携してさらに大きな取り組みを行っていくことを目指しています。具体的には、GHGプロトコルにおけるさらなるスコープでの取り組み、すなわちScope3へと視野を広げていくことを計画しています。

このScope3とは、私たちの事業活動だけでなく、私たちの製品やサービスが広範な社会で利用される過程における環境影響を考える視点を指します。これは私たちだけでなく、私たちの製品やサービスを使用する全ての人々が、環境配慮の視点を持つことを促す取り組みでもあります。

私たちはScope3の達成に向けて、現在の地域や社員との連携を更に深め、さらに多くの人々が私たちの取り組みに共感し、参加することを目指しています。私たちは、環境に配慮した持続可能な社会の実現は、一人ひとりの意識や行動が変わることから始まると考えており、その実現に向けた取り組みを今後も続けていきます。

今後の上場企業の意義や投資家ユーザーへのメッセージ

弊社は、電気計測事業を主に行っており、エネルギーを測定するための製品に特に力を入れています。また、リチウムイオンバッテリーの安全検査を行う計測器に関しても我々の商品が大きなシェアを占めています。

弊社の目指す方向性を理解し、それに共感していただける投資家やユーザーの皆様に、これからも弊社の商品やサービスをご支援いただくと同時に、ご利用いただきたく思います。我々は、地域に対する貢献と環境に対する配慮を大切にしながら、今後の研究と開発に投資を続けてまいります。これからも日置電機の取り組みにご期待いただければ幸いです。

(執筆・構成=川村 真史)