特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

株式会社長栄
(画像=株式会社長栄)
長田 修(おさだ おさむ)――株式会社長栄代表取締役
京都府立桂高等学校を卒業後、松下電器産業㈱に就職。その後は不動産会社勤務を経て1980年に京都市伏見区にて創業。当初は父の所有する賃貸物件の管理が目的であった。しかし当時はマンションの建築は増加しているものの不動産管理業界は未成熟であり、将来性がある事業だと確信したことから1988年に株式会社長栄を設立。不動産関連団体の役員を長年に渡って兼務しており、不動産管理業界の発展と地位向上に努めている。
株式会社長栄
京都府を中心に不動産管理事業と不動産賃貸事業を営み、2023年9月末時点で26,299戸(うち自社物件5,268戸)を管理する。賃貸マンション管理を本業としており、マンションオーナーの収益最大化に貢献すべく『入居者ファースト』をスローガンに高品質の入居者サービスを提供することで、入居率は約96%の高水準を維持している。近年は中部、関東などの新規エリアへ管理拠点を出店するほか、高利回りが期待できる物件を積極的に取得している。

目次

  1. 創業から現在に至るまでの事業変遷
  2. 上場に至った背景や思い
  3. 思い描く未来構想
  4. ファイナンスにおける課題や重点テーマ
  5. 読者へのメッセージ

創業から現在に至るまでの事業変遷

株式会社長栄
(画像=株式会社長栄)

―創業から現在に至るまでの事業変遷について教えていただけますでしょうか。

株式会社長栄 代表取締役・長田 修氏(以下、社名・氏名略): 私は高校卒業後、経営の勉強をしたいと思い、経営の神様と言われる松下幸之助氏が経営されていた松下電器(現:パナソニック社)に5年間と自ら期限を決めて入社しました。途中で体調を崩したため結果的に7年在籍し退職しました。その後、父が不動産を保有していたこともあり、勉強のためにも不動産会社に転職をしました。

その後は、30歳で独立すると決めていたため、父の所有するマンションを管理する会社を立ち上げ、マンション管理を行っていました。そのうちに建築会社の方から「他のマンションの管理もやってみないか」と声をかけていただいたことから事業が拡大していきました。そして、1988年に当社を設立しました。

物件管理の仕事を始めてからは、他の業者がやりたくないようなことを地道にやっていきました。そこで、諦めずに最後までやり切る姿勢を買われて、徐々に様々なお客様からもお声をいただくことが増え、管理物件も比例して増加していきました。その後は、自社物件についても増やし始め、現在では、ある程度安定した事業ポートフォリオを築けています。

上場に至った背景や思い

―激動の時代の中、貴社の上場に至るまでの背景や思いについて教えていただけますでしょうか。

長田: 上場によって地元京都の活性化に貢献したいと思ったからです。上場に至ったきっかけは、お付き合いのある金融機関から上場を目指すようリクエストされたことでした。その金融機関から、「上場することで地元京都の活性化に貢献できる」と言われて、私は上場を考え始めました。

その後、上場を目指すことを社員にも伝え、そこから4年かけてガバナンス体制の構築などの準備を進め、2021年12月に上場を果たしました。

思い描く未来構想

株式会社長栄
(画像=株式会社長栄)

ー長田代表が思い描かれている未来構想や事業戦略を教えていただけますでしょうか。

長田: 私は管理物件50,000戸を達成すべく、2つの戦略を軸に進めていこうと考えています。 1つ目は、私たちの管理センター「Bellevie」(ベルヴィ)を日本全国の15の大都市周辺に設置することです。現在は自社物件を含めた管理物件は26,000戸ほどですが、中長期的な目標としては、管理物件を50,000戸に増やすことを目指しています。

2つ目は、M&Aなどで事業を拡大していくことです。 物件は簡単には購入できず、貸出金利の上昇や自然災害、地震などのリスクも考慮しながら、徐々に増やしていく必要があります。現在、弊社には他の管理会社からM&Aの話が寄せられており、M&Aを進めていくと、1棟ずつ物件を買わずに、一気に事業を急拡大させることができると考えています。

ファイナンスにおける課題や重点テーマ

ー金融・経済市場において、貴社または代表ご自身のファイナンスにおける課題や重点テーマを教えていただけますでしょうか。

長田: 私たちのビジネスにとってファイナンス面で重要なことは、2つあります。 1つ目は、貸出金利の利率です。私たちの売上の約60%を占める賃料収入の源泉である自社物件は、その取得費用を全額借入でまかなっています。そのため貸出金利が上昇し利息が増加すると利益に大きく影響します。

2つ目は、金融機関の融資です。 実は、自社物件は物件の管理に比べて、利益率が非常に高いのです。 そのため、私たちは多くの物件を購入し、広く薄く展開する戦略を取っていますが、物件を購入するためには、多くの資金が必要です。現在は金融機関から順調に融資を受けることが出来ていますが、もし金融機関が融資を止めるようであれば、状況は変わっていきます。

読者へのメッセージ

ー最後に、ZUU onlineの読者に向けたメッセージをお願いいたします。

長田: 私たちは株主還元を重要視していきたいと考えています。現在の配当額は非常に低いですが、配当性向を維持しながら業績を向上させ、より高い配当を出して、株主の方々に還元していきたいと思います。

具体的な株価の上昇は予測できませんが、私たちがこれまで積極的に取り組んできたこと、これから取り組んでいくことが業績はもちろん企業価値にも繋がることで、株主の皆様が「長栄の株を持っていて良かった」と思っていただけるよう、今後もさらに努力していきたいと考えております。

氏名
長田 修
社名
株式会社長栄
役職
代表取締役