特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

ビートレンド株式会社
(画像=ビートレンド株式会社)
井上 英昭(いのうえ ひであき)――ビートレンド株式会社代表取締役社長
日本オラクル株式会社でデータベースソフトウエアや企業統合管理(ERP)パッケージソフトウェア、米国インターネット広告配信ソフトウエアの会社であるNet Gravity社でソフトウエアの販売業務に携わる。1999年携帯電話をインターネット接続して活用できる株式会社NTTドコモのiモードが国内に登場したことで、モバイルを活用した企業売上の向上、販促コストの削減、顧客満足度の向上等のBtoC企業向けソリューションの社会的な必要性と重要性を確信し、2000年にビートレンド・ドットコム株式会社(現 ビートレンド株式会社)を創業。
ビートレンド株式会社
消費者向けビジネス(B to c)を展開する企業等に対して、顧客管理ツールとして多様な情報送受信の手段及び情報分析手段を有するCRMソフトウエアプラットフォーム「betrend」を、SaaS型で継続的に提供するとともに顧客ニーズに合わせた周辺サービスを提供。2020年12月東京証券取引所マザーズ市場(現 東証グロース)へ上場。

目次

  1. これまでの事業変遷について
  2. 経営判断をする上で最も重視していること
  3. 思い描いている未来構想
  4. ZUU onlineユーザーへ⼀⾔

これまでの事業変遷について

ビートレンド株式会社
(画像=ビートレンド株式会社)

ーーこれまでの事業変遷について教えていただけますか?

ビートレンド株式会社 代表取締役社長・井上 英昭氏(以下、社名・氏名略):私の前職である日本オラクルでは、主にERPや会計統合パッケージ、生産管理やサプライチェーンなどのパッケージソフトの販売をしておりました。そのようなソフトを利用して企業は、物流のリードタイムを短縮したり、在庫を削減しておりましたが、私はコスト削減や人員削減などではなく、キャッシュフローの改善することはできないか、更にインターネットを使って売上をもっと伸ばすようなことができないかと思っていました。

ちょうどそのタイミングにドコモがiモードをリリースし、携帯電話がインターネットに接続できるようになりました。当時の私は、携帯電話がインターネットにつながることで、広告やショッピングなどの窓口になると考え、その周辺のビジネスを立ち上げたいと思いました。そこで、一度米国系のネット広告の会社に転職し、アメリカに赴きモバイル広告を提案しましたが、当時のアメリカでは携帯電話への広告にはあまり関心がなく、事業化には至りませんでした。そこで、自分でこのアイデアを活かしたビジネスを立ち上げることにしました。

最初に考えたのは、携帯電話向けのバナー広告でした。ベンチャーキャピタルから資金調達し、すぐにモバイル広告配信システムを作り、サービスをローンチしました。 立ち上げ当初は順調でしたが、すぐに電通さんとドコモさんが現D2Cグループという会社を作り、ドコモに広告を出す際はその会社が独占することになりました。それがきっかけで、auやJ-PHONEなども同様の動きを取り始め、当初の事業がとん挫してしまいました。

そこで、次に着手したのが、「メール配信」です。絵文字やデコメールなども対応し、携帯電話向けに100万件のメールを高速配信できるとして、これが当たり、創業から7年間は赤字が続きましたが、資金調達を繰り返し、8年目に黒字化しました。 月額1万円からのサービスで、価格競争力があり、取引企業数も2000社ほどまで拡大し、携帯向けメール配信では国内でナンバーワンにまでなりました。

更に事業領域を拡大し、メールだけでは実際に商品販売まで隔たりがありましたので、ウェブサイトやCMSを活用してモバイルサイトを簡単に作成できるようにし、ショッピングカートまで作成しました。これが受け入れられ、モバイルで完結する販売システムを構築し、シェアを獲得しました。

しかし、2012年頃からスマートフォンが急速に普及し、SNSやLINEなどのコミュニケーションツールが台頭しました。これに伴い、携帯電話自体の世界観が崩れ、事業再構築が求められました。そこでスマートフォンをプラットフォームとする、アプリ開発に取り組みました。

今日に至るまで、顧客管理には、ポイント管理やマイレージ、スタンプなどの機能が必要で、分析も含めてアプリをパッケージ化して提供し、多様なソリューションを展開しましております。

そして、創業から20年後の2020年に上場しました。一時、コロナの影響で取引先の1/3くらいを占めていた飲食業が直撃を受け影響があるかと思いましたが、顧客管理は飲食ビジネスにおいて一番重要であり、堅実に成長することができました。

経営判断をする上で最も重視していること

ーー何度もビジネス環境の変化に合わせた対応をされてきたかと思うのですが、意思決定の中で大事にしている点は何ですか?

井上:変わるものと変わらないものがあると思っています。顧客価値を創造するということ、またプラットフォームであり続けるということは今までずっと変わらないものとして重要視してきました。 一方で、現在のビジネス環境は激しく変化しており、ユーザーインターフェース部分は、放っておくと急激に変わってしまうので、半歩ぐらい先を見極めて、時代に遅れないように変化に対応して選択していくことが重要だと考えております。

思い描いている未来構想

ーー 今後の事業戦略についてはいかがでしょうか?

井上:先日、中期経営計画を発表させていただきました。コロナ禍で上場したものの、自己資本比率が9割と高く、投資家からは成長投資を求められている状況です。今後は、お客様の環境もコロナが終わり、我々もアクセルを踏む段階になったので、大きく投資&成長する予定です。

これまで連携している大手企業とのビジネスを更に拡大し、システムの性能も飛躍的に向上させる予定です。また、今までカスタマイズとして顧客に提供してきた機能を標準化し、ノーコードで開発できるようにしていくことも計画しています。

営業面においても新規顧客の獲得とカスタマーサポートの強化を行い、事業のボリュームを大きくしていくことを目指しています。成功事例も多く出てきており、それらをパッケージ化して発表していく予定です。

パートナーとの関係強化においても成功事例の活用が重要となってきます。例えば、東芝テックさんのような大手のパートナーとの成功事例がパートナー内で広まり、しっかりしたチャネルができると、更に紹介が増えてくると考えております。更に、ミッドレンジクラスに行くと、ますますパートナー先が増えます。レジベンダーだけでなく、予約や電子マネー、ショッピングカートなどの企業が関与してきます。彼らの事業の本丸部分は顧客データ・顧客管理のDXであり、我々の狙う市場に極めて近いところにあります。つまり、そのようなパートナーとの協業が極めて重要と考えております。

ZUU onlineユーザーへ⼀⾔

ーー最後に、弊社のメディアユーザーに一言いただけますか?

井上:我々の会社は、どんな企業にとっても最も重要な「顧客価値」を、ソフトウェアの力で増やしていくビジネスを行っています。当社がやっていること自体は、どんな時代になっても必ず必要なものです。今後も、安定的かつ高成長を目指していきますので、ビートレンドに注目していただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

氏名
井上 英昭(いのうえ ひであき)
社名
ビートレンド株式会社
役職
代表取締役社長