政府からの「リスキリング支援1兆円投資」や「人的資本開示の義務化」の発表があり、企業というものの“人財”や“社員”への向き合い方が問われている。そんな中、“働くもの”に愛され、社員の力で成長し続ける企業に、その取り組みや今後の展望を伺った。

企業名アイキャッチ
(画像=株式会社ベネフィット・ワン)
白石 徳生(しらいし のりお)
株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長
1989年に拓殖大学政経学部を卒業後、株式会社パソナジャパンに入社
1996年パソナグループの社内ベンチャー第1号として株式会社ビジネス・コープ(現 株式会社ベネフィット・ワン)を設立、取締役に就任
2000年同社代表取締役社長に就任後、数々の事業を立ち上げ現在に至る
EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2018ジャパン「Exceptional Growth 部門」大賞を受賞
「サービスの流通創造」を経営ビジョンに、ユーザー課金型の定額制割引・予約サイト「ベネフィット・ステーション」を運営。
また、福利厚生・健康支援・教育研修を軸とした BPO サービスのワンストップソリューションを提供し、「ベネワン・プラットフォーム」を通じて企業のHRDX推進を支援している。

目次

  1. 人間性を重視する採用戦略と心理的負荷の管理
  2. 教育機会の創出と社員の給与を最大限にする施策
  3. 働き方改革とネオワーカー化の結果とは
  4. 若い世代へ伝える、AI時代を生き抜くための競争を楽しむ働き方
  5. ベネフィット・ワンからステークホルダーの皆様へメッセージ

人間性を重視する採用戦略と心理的負荷の管理

ベネフィット・ワンはこれまで人的資本にまつわる様々な取り組みを行ってきました。なぜなら、現在は人手不足の状況が続く中で、人材確保が経営上の重要な課題となっているからです。かつての日本では、企業における人材は比較的余裕があり、辞めてもすぐに供給されるという考えが一般的で、そこまで人材に対して課題感を持っていませんでした。一方、グローバルレベルでは以前から人材確保が重要視されており、企業は人への投資をおこなっていました。最近ではようやくこの風潮に日本企業の経営も追いついてきたと感じます。

このような背景のもとベネフィット・ワンでは、職場は人生の中で一定の時間を過ごす場所であることを意識し、過ごしやすい職場環境をつくることを大切にしています。例えば、フリーアドレス制度を導入したり、カフェコーナーや社員同士のコミュニケーションが取れる場所を設けるといったことを実践してきました。また、設備等の物理的な取り組みではなく、企業カルチャーという概念的な職場環境形成にも注力しています。具体的には、社員の人物像が企業カルチャーを形成する上で大切となってくるため、採用の段階でマッチする人材かどうかを見極めています。もちろん、その人の能力も重要ですが、それよりもまずは人間性に重きを置いているため、ベネフィット・ワンでは約60%の人材が能力よりもキャラクターや協調性を重視して採用されています。

また、会社の成長ステージによっては競争をあまり促しすぎず、スピードを求めすぎないようにしています。会社全体を経営していく中で、アクセルを踏むべきタイミングを見極めるために、DXを活用して就業時間の管理や社員の心理的負荷状況を把握することで、社員の疲弊を防ぐようにしています。社員が働きやすい環境を整え、心理的にも生産性が上がる取り組みを行うことがベネフィット・ワンにおける人的資本経営の考え方です。

教育機会の創出と社員の給与を最大限にする施策

社員への教育機会の創出に関しては苦労をしました。

実は、私はもともと社員への教育をそこまで重要視していませんでした。私自身は非常に恵まれた環境で、パソナの南部代表を始めとし、ソフトバンクの孫さんや楽天の三木谷さんなど優秀な経営者たちから直接学ぶことができていたため、社員が教育の機会がないということに気づかなかったのです。

しかし、一般の社員にはそういった機会がなかなかないため、彼らにも学ぶ機会を提供すべきだと考えるようになり、積極的に本を読むように勧めたり、自社のeラーニングサービス「BeneAcademy」を全社員に提供するなどしています。また自己啓発関連のものからスキルアップまで多岐に渡る内容の教育研修も取り入れています。

また、ベネフィット・ワンでは労働集約型の産業から脱却し、給与を最大限に引き上げるための取り組みを行っています。その手段として、テレビ局の仕組みを参考にしています。テレビ局では、正社員の比率が極端に低く、制作会社や地方局などに多くの人材が所属しています。これにより、給与水準が上がっているのです。

これに倣ってベネフィット・ワンでは、ネオワーカーという働き方を推奨しています。全体業務の約30%を占めるマネジメントや研究開発といった非定型業務は社員が行い、残りの約70%の定型業務は社員ではなく個人契約で行うことを目指しています。これにより、社員の給与を2倍、3倍に引き上げることを可能としています。

ただし、この取り組みは容易ではありません。業務の見える化やオンライン化、マニュアル化が進んでいない部署では、ネオワーカー化が難しい状況です。現在も挑戦を続けており、人手不足の中でも環境的に業務がやりやすくなっていると感じています。

働き方改革とネオワーカー化の結果とは

社員からは働きやすさが向上した点や、自分の時間を学びに使えるようになった点が、大変好評です。働きやすさの面に関して、特に女性にとっては、結婚や出産後に育休を取得しても、そのまま職場復帰がしやすいという声が寄せられています。ベネフィット・ワンでは、結婚後も退職せず、子どもを2人目、3人目と育てていくケースが多く見られます。

また、ネオワーカー化に関しての取り組みは、現在約10%から20%を個人契約に移管しているという進捗状況です。一部の業務については、愛媛県や新潟といった地方に移転しており、東京や大阪では定型業務が大幅に減少しています。地方では賃金水準が低く、東京の50%程度で運営を実現しています。 今後もさらにネオワーカー化を進めていきます。

若い世代へ伝える、AI時代を生き抜くための競争を楽しむ働き方

定型業務は、今後AIが徐々に代替していくことが予想されます。また、近年のテクノロジーの発展により、働かなくても生活できる状況が現実味を帯びてきています。例えば、米国では60年前、ほとんどの人が農業や工場で働いていましたが、トラクターやロボットの導入により、多くの人がサービス業にシフトしていった経緯があります。そのため今後は働くということの意味が変わっていくと考えています。働くことは生活のためでなく、自己実現や学びのためになるでしょう。それゆえ、若い世代は働くことの本質的な意味を見つめ直す必要があります。

私は若い社員に、今の価値観の中で競争を楽しむよう伝えています。私たちが生きる世代は、人間の生きる本質が変わろうとしている時代であり、その変化に対応することが求められています。そのため競争という部分においては、今後の世の中では意味が薄れるかもしれませんが、現在はまだその価値があるからこそ、今しか味わえない喜びや悲しみを経験してほしいと考えています。

会社における経営の手法やマネジメントに関しても様々なやり方がありますが、答えは一つではありません。流行りのマネジメント方法に固執せず、全社員が受け入れられる方法を大切にしています。これからも様々な話を聞き、最適な方法を模索していきたいと思っています。

ベネフィット・ワンからステークホルダーの皆様へメッセージ

ステークホルダーは一般的に株主や社員、お客様ですが、それだけではなく、時代に合わせた全ての人々を含めるべきだと考えています。その方々へ向けて申し上げると、現在の世の中は激動の変化を迎えていますが、色々な角度から明るく未来を創造していくことが大切だと考えています。イスラエルの紛争や貧富の差といった社会問題はたくさんありますが、みんながお互いの価値観を認め合い、テクノロジーの力を借りることで、貧富の差や戦争の原因である国土の紛争も解決されると信じています。

私は会社の経営者であり、会社単位や国単位で物事を考えがちですが、これからの時代はそういった枠を取り払っていくことが求められます。誰かを不幸にして誰かを幸せにする時代ではなく、一人一人が成果を出し、会社の事業を継続し、さらに発展していくことが必要だと考えているため、そのためにこれからも邁進していきます。引き続きベネフィット・ワンをよろしくお願いいたします。

氏名
白石 徳生(しらいし のりお)
会社名
株式会社ベネフィット・ワン
役職
代表取締役社長