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鳥越 慎二(とりごえ しんじ)
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント代表取締役社長
東京大学経済学部経済学科卒業。ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院修了、MBA取得。ベイン・アンド・カンパニーを経て、1994年、アドバンテッジパートナーズのパートナーに就任。翌年、アドバンテッジインシュアランスサービス設立、同社代表取締役社長に就任。1999年、事業拡大に合わせ、グループ統括会社としてアドバンテッジリスクマネジメントを設立、現在に至る。
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
1995年、休職者の所得を補償するGLTDという保険の専業代理店として創業。2002年、日本で初めてストレスチェックを取り入れたEAPサービスの提供を開始し、周辺領域へと事業を拡大。現在は、メンタルヘルスやエンゲージメント、健康経営支援、保険販売、復職支援・両立支援など、幅広く事業を展開。今後は、「ウェルビーイング領域におけるNo.1プラットフォーマー」としてトップシェアを目指し、周辺領域への事業拡大を狙う。

起業の経緯について

-まずは鳥越さんのご経歴や、会社設立の経緯についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

私は小さい頃から会社を経営することに興味を持っており、自分で会社を興したいという想いから、大学では経済学部の経営学科を選びました。その後、コンサルティング会社に就職し、MBAを取得した後に再びコンサルティング業界に戻りその後起業という流れになります。

私の場合、特定のテーマが先にあったわけではなく、会社を経営することそのものが目標でした。そのため、会社設立の前にテーマを探すために数十のアイデアを出し、市場サイズや自分の強みがフィットするかを考慮しました。そんな中、1994年に日経の夕刊に掲載されていた、アメリカの企業向け保険「LTD(long term disability)」が日本で導入されたという記事を読み、このニーズが日本にもあるのではないかとビジネスチャンスを感じたため、ここから始めることにいたしました。

LTDとは、病気や怪我で働けなくなった人たちが収入を失うリスクを補償する保険で、働けない間ずっと一定割合の給与を保証します。アメリカではすでに一般的な制度で、多くの企業が導入しています。しかし、長期にわたる支払いが必要なため、どれだけのリスクがあるのかを把握するのは難しく、データがなければ始められない制度でした。その制度が日本にも導入されたことで、我々はその保険の代理店として事業を始めました。

-その後、どのようにして事業を拡大しましたか?

1999年の日本金融危機の時期に、日本の企業は企業内代理店という系列の代理店を持っていました。銀行も当然代理店を持っていまして、自分たちの行員や銀行だけでなく、取引先の契約も持っていました。

そこに目をつけ、代理店の顧客を買うことにしたのです。LTDを新規顧客開拓を行いながら売るのは難しかったので、代理店の顧客に対して重ね売りをする方が売りやすいと考えました。そのため、多くの企業の顧客を持っていた銀行の代理店を買収し事業を拡大させていきました。

-現在の主要事業でもあるメンタリティマネジメント事業はどのように生まれたのでしょうか?

銀行代理店の買収後も、私たちは単なる保険代理店ではなく、困った人を救えるようなサービスを提供したいという気持ちを持っていました。 そんな中、お客様から、働けない人の金銭補償だけでなく、働けなくなる前の予防も重要だという意見をいただくようになりました。というのも、長期に休む人の実に2/3が、メンタルヘルスの問題を抱えていたからです。

このような背景から、メンタルヘルスケアの領域に進出しました。それが私たちの第二段階のステップです。その時に初めて保険だけではなく、従業員のリスクマネジメントという領域に参入し、弊社の現在の社名もそのころに作ったという形になります。

事業の軌跡や展開について

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-その後、どのような展開がありましたか?

その後、2015年くらいにストレスチェックの義務化が始まりました。私たちはその前からストレスチェックと全く同じ仕組みを使いメンタルサービスを提供していました。チェック結果に基づいてソリューションを提供する、もしくはストレスの原因を調査し、組織を改善することも含まれていました。そのサービスを提供していたところに法律化となったので、弊社は一気に成長することができたのです。

次の展開は、エンゲージメント領域への進出でした。最初はリスクマネジメントが主な目的だったのですが、お客様にストレスチェックの結果を報告するうちに、ストレスが高い組織=悪い組織、ストレスが低い組織=良い組織という考え方に違和感を感じるようになっていきました。

どういうことかと言うと、ストレス度の高い組織ではあるが、実は花形部門でエンゲージメントも高いということが多いのです。逆にストレスが低い部門は、暇な時間が多くストレスがかからない代わりにエンゲージメントが低いということがあります。そこで、我々はストレスを測るだけではなく、よりポジティブに、やる気を持って仕事ができる環境を作ること、いわゆるエンゲージメントが重要だと考えるようになりました。

つまり、安心して働ける環境だけでなく、活力ある個人と組織を作るというプラスサイドも追求するようになったのです。 さらにその後、健康経営という概念が登場しました。従業員の健康が企業の価値向上に重要であるという認識に基づき、経営問題として取り組むべきだという提案が経済産業省から出されました。

それを受けて、我々は心の健康増進に加え、身体の健康増進にも取り組むことにしまして、総合的な健康経営支援を行うようになりました。皆様ご存じの通り、心と体の健康は相互に影響を及ぼし合いますし、体の健康は生活習慣を変えることで予防することが可能です。

うつの予防に最も効果的な治療方法は、ストレスを感じやすい人の行動や考え方を変えることです。この手法は認知行動療法と呼ばれていますが、当社はこれを生活習慣の改善にも応用しています。健康にとって良い行動ができない理由を振り返り、行動変容を起こして定着させるのです。このような心理学のスキルより、我々は心と体の両方に対する予防を提供することができるようになりました。

また、この時期にウェルビーイングという概念が流行りました。ウェルビーイングとは、心も体も社会的にも満ち足りた状態であり、単に問題がない状態、リスクサイドをカバーしているだけでなく、より良い状態を追求することを表しますので、アドバンテッジリスクマネジメントが行ってきたことがまさにウェルビーイングの核心を押さえていると感じ、この言葉をキーワードにしました。

振り返りますと、我々のビジネスは、顧客企業やその従業員のウェルビーイングの状態を評価し、問題を解決するためのソリューションを提供するなど、お客様のニーズにどこかしら当てはまる形になってきました。そして3年前、この全体を結びつける仕組みとして、ウェルビーイングDXプラットフォームを作りました。

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-DXプラットフォームとは、具体的にはどのようなものでしょうか。

DXプラットフォームは、心や体の状態、健康診断の結果、ハラスメント、エンゲージメントなど、ウェルビーイングに関連する全てのデータを一箇所に集め、分析するものです。これにより、問題がどこにあるかを確認し、ソリューションを適用した後はPDCAサイクルを回していきます。これまでに行ってきたストレスチェックやエンゲージメントサービス、パルス調査、健康診断などは、ウェルビーイングのデータ収集の一部として位置づけています。

-それらのデータを結びつけ、全体を見ることができるわけですね。

はい。一方でソリューションには、カウンセリング、保険、管理者の教育、個人のプログラムなどがあります。DXプラットフォームによって当社のサービスが一つにつながり、ようやくこの2,3年で、お客様の困り事を解決していく会社から、ウェルビーイングを実現するための課題解決・良い状態へ高めるためのサポートを一気通貫で提供できるビジネスモデルになったと思います。従業員が幸せになり、それによって会社の生産性が上がり、人材も定着する。これが我々の目指すところになります。

アドバンテッジリスクマネジメント社の強みとは

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-次に、御社の事業の強みや具体的な事例について教えていただけますか?

弊社の一番の強みは、従業員のウェルビーイングを全方位から支援できることです。心と体の健康、社会的な課題といった幅広い範囲をカバーし、情報収集から分析、解決策の提供まで一貫して行います。

実は、弊社の競合は、ストレスチェック、エンゲージメントサーベイ、研修、産業医・保健師紹介など、それぞれ部分的にバッティングしている企業が多く、全体的な解決策を提供できる会社はなかなかいらっしゃらないのが現状です。お客様が求めているのは、部分的なサービスではなく、全体的なソリューションです。弊社は全方位のサービスを提供し、お客様の困りごとを解決します。

-その全方位のサービスについて、具体的な事例を教えていただけますか?

弊社は数多くのサービスを提供していますが、例えば、ストレスチェックが義務化される前から、それに基づいたメンタルヘルスケアを提供していました。また、リワークという、メンタルの問題を抱える人が復職するためのオンラインプログラムも開発しました。

これらは、誰もが問題だと認識していながら、解決策がなかったところを見つけて生み出したものです。このように、弊社の強みは新しいものを生み出すこと、そしてそれをサービス化することであり、ミッションとしても掲げております。

地域での取り組み

-次に御社の地域での取り組みについて教えていただけますか?

当社は全国展開しており、特に地域を絞っているわけではありません。ただ、当社のお客様に大企業が多いので、本社が大都市に集中してしまっているのは事実です。そのため、今後は中堅・中小企業のウェルビーイング問題にも取り組んでいきたいと考えています。

具体的には、五年ほど前からミドルマーケット事業部を設立し、特に500名以下の企業に対しても当社のサービスを提供する方針を立てています。

我々の目標は、大都市に住む大企業の従業員だけでなく、日本のビジネス全体のウェルビーイングなので、中堅、中小、地方都市の企業も含めて、全ての企業が利用できるようになることを今後は目指しています。

過去にぶつかった壁や乗り越えたブレイクスルーとは

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-これまでに直面した困難や、それをどう乗り越えたのかも教えていただけますか?

もちろん、困難は数多くありました。特に、会社を設立してから黒字化するまでの期間は大変でした。創業事業のLTD制度は非常に良い制度ではありますが、会社が資金を出さないと普及しない制度なので、最初は苦労しました。

人事担当者の個人的な賛同を得ても、「会社が出資するほどの話ではない」という判断をされてしまい、なかなか収益につながらないという状況が続いたのです。そこで、従業員のことを真剣に考えているのは誰だろうと考えて、労働組合に目を向けました。労働組合には闘争資金というものがあり、私がお声がけした労働組合ではそのお金がかなり余っていました。労働組合と企業側の関係も昔と違って敵対的ではなかったので、そこから商品を売り始めることができました。

また、保険だけでは急速に成長できない時期もありました。そこで、保険以外のところで強みを持とうとメンタルヘルスケアに進出しました。保険という金銭面の保証だけではなく、予防やお金以外の困ったことを支援することが求められていると考えビジネスを広げたことが、一つのブレイクスルーであったと思います。

アドバンテッジリスクマネジメント社が思い描く未来構想や想いとは

-思い描いている未来構想や目指す世界観について教えてください。

私たちは、日本の労働者全体を対象に、国内最大のウェルビーイング総合会社としての地位を確立したいと考えています。これまでは、企業向けにデータを収集し、健康経営やウェルビーイング経営の支援を行い、企業価値の向上を提案してきましたが、今後はBtoBtoE、つまり個々の従業員に向けたサービスも提供していきたいです。

例えば、健康について考えている人が、いきなり福利厚生サービスのメニューを思い出して利用することは少ないです。人は問題意識を持った瞬間に最も購買意欲が高まるので、その瞬間に情報を提供しないと意味がありません。

その点、弊社は各サービスを「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」と連携しているので、その従業員画面を通じて、ストレスチェックの結果に課題を感じた人にはマインドフルネスを、健康診断の結果が悪かった人にはフィットネスサービスを、育児や介護中の方にはそのサポートになるようなサービスを、といった提案ができると考えています。

私たちが目指しているのは、心と体の健康、育児や介護などの社会的課題の解決、そしてより良い状態、仕事や職場に対してエンゲージメントの高い状態を実現することです。そのために、できるだけ多くの従業員のためのプラットフォームを作りたいと考えています。

新世代の経営者たちへアドバイス

-最後となりますが新世代の経営者たちへのアドバイスをお願いします。

新しいビジネスを始める人たちの中にはメンタルを病んでしまう人も少なくないと思います。「自分でどうにもならないこと」「できないこと」に悩むのではなく、できることを考え、行動するべきです。心が弱いと感じるなら、ぜひカウンセリングを受けてみてください。自分の考え方や行動が、やる気やストレス、主観的な幸福度に大きな影響を与えていると理解することが大切です。これはビジネスを始める人だけでなく、全ての人にとって重要なことです。特に、ビジネスを始める人たちは、ここが弱いと成功することは難しいでしょう。

ビジネスを始めれば、毎日様々な問題が起きます。それをどう乗り越えるか、メンタル面が大切だと感じます。勉強やカウンセリングを正しく受け、心身の健康を維持し続けることが成功の近道になると思います。

-今までにない非常に貴重なメッセージでした。鳥越さん、今日はインタビューの機会をいただきまして、ありがとうございました。

ありがとうございました。