アイユーコンサルティンググループ様_岩永氏画像
(画像:NET MONEY編集部)

中小企業の経営者にとって、会社の永続的な発展と、自身の引退後の物的・人的承継は常に頭を悩ませる課題です。特に相続税の増税や地価・株価の変動は、予期せぬ形で多額の納税義務を生み出し、事業継続を脅かすリスクとなります。

このような複雑な状況において、高度な専門手法を駆使して、クライアントの資産を守り、未来を設計するプロフェッショナル集団がいます。アイユーコンサルティンググループです。

同社は、創業以来、相続と事業承継案件を主軸に成長を続け、累計7,500件を超える支援実績を誇ります。提供するのは、税負担の軽減だけに留まらない、二次相続まで見据えた総合的なコンサルティングサービスです。

今回は、グループ代表の岩永悠氏に、その独自の経営哲学と、中小企業がこの不確実な時代を乗り切るための羅針盤となる戦略について伺いました。

今回お話をお伺いした方
岩永 悠(いわなが ゆう)氏

アイユーコンサルティンググループ代表
税理士法人アイユーコンサルティング 代表税理士
西南学院大学経済学部卒業。京都大学経営管理大学院 上級経営会計専門家(EMBA)プログラム修了。
2007年に中堅税理士法人に入社。26歳で税理士登録後、国内大手税理士法人の福岡事務所設立に参画。13年岩永悠税理士事務所として独立、15年法人化。19年よりグループ化に着手し、現在8法人1事務所体制でグループを運営している。
創業者としてグループ経営に携わる一方で、自身も組織再編を活用した高度な事業承継、相続対策を提案・実行。提案型コンサルタントとして大型案件を中心に実務を行いながら、セミナー活動や団体活動を中心に業界発展のために力を注いでいる。

アイユーコンサルティンググループ 紹介
2013年の創業以来、相続・事業承継案件に特化した税理士法人として、延べ7,500件以上の案件を誇る。近年は「日本のミライに豊かさを」をグループビジョンに、社外CFOサービスやベンチャー企業向けのインキュベート事業、資金調達・IPO支援、海外移住支援など事業の裾野を広げている。

税理士の道を志した真の理由

―― 岩永先生はなぜ士業という道に進まれたのでしょうか? その背景をお聞かせください。

岩永氏: 実は最初から税理士を目指していたわけではなく、元々「社長」になりたかったんです。社長になるための手段として、税理士資格を取得したというのが本音です。事業を営んだ経験がある父親に幼い頃から「社長になれ」と言われ続け、その言葉が自然と自分の中に根づき、「自分も社長になるものだ」と信じて疑わなかったんです。小学校の卒業文集にも「社長になる」と書いていました(笑)

大学時代、図書館で「独立しやすい職業」を調べていたときに、弁護士や会計士よりも“税理士が最も独立しやすい”と書かれていたんです。それをきっかけに、「この道で経営者を目指そう」と決めました。

“守る”だけでなく、戦略で“ミライ”を創る―相続・事業承継の新しいかたち

―― 岩永先生は相続・事業承継特化型の事務所として創業しています。なぜ、あえて複雑なこの分野での挑戦を決めたのでしょうか。

岩永氏:最初に務めた税理士事務所では、顧問業務を3年半ほど経験しましたが、ルーティン化しやすく、物足りなさがありました。一方、2社目の大手税理士法人で携わった「組織再編」を用いた事業承継は、クライアントにとっては数十年に一度の出来事であるため、案件が高度化しやすく、より高い専門性が求められます。僕自身も面白さを感じましたね。

ただし、事業承継は数十年に一度くらいの発生頻度であるため、それだけで事務所として経営していくのは難しい。そこで、顧問のように固定化された業務ではないけれど、定期的に案件が入ってくるであろう「相続」も軸にすることにしたんです。当時、相続税の増税も決定しており、組織再編と組み合わせれば高付加価値のサービスになると確信しました。

―― よくある中小企業経営者の相談はどのようなものがあるでしょうか。

岩永氏:地方の中小企業だと、一族が所有する不動産会社(いわゆるプライベートカンパニー)を別に持つケースが多く見られます。例えば、事業会社の純資産が10億円、不動産会社の純資産が15億円、合わせて総純資産25億円という場合。ケースにもよりますが、相続税は数億~10億円近くなる可能性がありますが、納税資金がすぐに用意できず、資金繰りに苦しむケースが典型例です。

 

―― その課題に対し、御社はどのような解決策を提示されるのでしょうか。

岩永氏: 組織再編税制を活用することで、同一の者が保有継続する前提であれば、株式交換を無税で実行できます。たとえば、不動産会社をホールディングスカンパニーにし、事業会社をその傘下に入れることで、税務上の純資産評価額を大きく圧縮できます。先の例なら、総純資産25億円の場合でも、株式交換後の株式評価にすると半分以上下がるケースもあり、相続税を数億円単位で削減できる可能性もあります。

顧問税理士の先生からは「そんな方法があるのか」と驚かれますが、これは法律に則った正当な手法です。こうした案件は、相続や事業承継に精通した経験豊富なメンバーがチームで対応します。組織力をもって複雑な案件にも対応できる体制を整えていることから、他士業や金融機関、証券会社など、さまざまな提携先からのご紹介が増えている状況です。

―― 数多くの案件を受任できている理由は、どこにあるのでしょうか。

岩永氏: もちろん高い専門性や、組織としてスピーディかつ質の高いサービスを提供できていることが挙げられますが、そもそも、相続という領域自体の「案件数が増え続けている」という市場環境も関係していると思います。

相続税は地価や株価に大きく左右されますが、近年は地価の高騰や株価上昇により、これまで相続税とは無縁だった層にも課税されるケースが増えています。

相続税の課税ラインを超える人が全国的に増えているため、案件数は右肩上がり。現状、受注をお断りせざるを得ない状況で、人手さえいればもっと応えられる案件が存在するほどです。

 

アイユーコンサルティンググループ

画像:アイユーコンサルティンググループ

―― そうした高い専門性を維持しつつ、近年顧問や成長支援まで事業領域を広げていますが、その理由は?

岩永氏: 根底には「日本のミライに豊かさを」という弊社のグループビジョンがあります。ビジョン実現のためには、僕たち自身が成長し続け、税務を軸としつつも士業の枠にとらわれない多角的なサービスを提供する体制が必要だと考えているからです。

IPO支援については、創業地である福岡で上場監査に対応できる監査法人が極めて少なく、地元企業が上場する際に東京に移らざるを得ない状況が長年続いていました。そこで「未来プラス監査法人」を立ち上げ、九州からも上場企業が生まれる仕組みを整えたかったんです。

 

アイユーコンサルティンググループのグループ法人・事務所図

画像:アイユーコンサルティンググループのグループ法人・事務所図

―― 具体的にグループビジョンにはどのような思いが込められているのでしょうか?

岩永氏: 幸せの形は人それぞれですが、「豊かさ」には一定の客観性があります。そして、ガンジーやマザーテレサのような崇高な志を持っている方を除いて、基本的に自分自身が豊かでなければ、周囲を豊かにしたいという気持ちはなかなか芽生えないものです。

だからこそ、まずはメンバー一人ひとりが豊かになることが大切だと考えています。それぞれが豊かさを実感できていれば、自然と「お客様にも豊かになってほしい」という想いが芽生えてくると思うんです。そしてその願いを実現するために、それぞれがよりよいサービスを提供しようと努力し、行動する。そうした連鎖を広げていくことで、クライアントの皆さま、ひいては日本全体の豊かさにつながっていくものだとと信じています。

アイユーコンサルティンググループのグループ法人・事務所図

画像:アイユーコンサルティンググループ 理念

―― 地域課題の解決に取り組む一方で海外展開もされていますね。

岩永氏:我々が海外に挑むのは、単なる拠点拡大ではありません。日本の中小企業が海外で外貨を稼ぎ、その力を日本に還元する。そんな“持続可能な富の循環”をつくることが目的です。為替の影響を受けやすい日本経済において、海外資産の保有や多拠点化は大きなリスクヘッジになります。

もちろんこの事業の根底にも、グループビジョンである「日本のミライに豊かさを」があります。国内にとどまらず、海外で培った経験やネットワークを日本社会に還元することで、

次の世代により豊かなミライをつないでいく。

その一端を担うのが、この海外事業だと考えています。

 

アイユーコンサルティンググループ

画像:アイユーコンサルティンググループ

そんな想いから2025年7月に本格始動したのが「海外移住コンシェルジュサービス」です。

かつての海外移住は、資産保全やセカンドライフを目的とするケースが中心でしたが、グローバル化に伴い、お子様の教育移住や国境を超えた最適な住まいを求めるニーズは年々高まっています。得意とする相続・事業承継支援はもちろん、お客様のニーズや価値観に合わせた最適な国の選定から、海外教育や居住、資産運用まで、ワンストップでサポートできる点が特徴です。

現在は海外移住コンシェルジュ室長のメンバーと共に、現地法人を立ち上げたマレーシアをはじめ、東南アジア各国を中心に現地の教育・不動産・ビザの情報ネットワークを築いているところです。現地視察を重ね、リアルな情報と体験をもとに、お客様一人ひとりに最適な提案を行っています。

業界の壁を打ち破る「組織力」と「人材戦略」

―― 会計業界では事務所規模の「二極化」が進んでいるとのことですが、その背景には何があるのでしょうか。

岩永氏:今、税理士の数は増えている一方で、顧客となる企業数は減少しています。

つまり、市場全体では「プレイヤー(税理士)は増えているのに、顧客(企業)は減っている」という逆転現象が起きているんです。

さらに、税制改正や地価等の上昇を背景に、相続など一部の分野では業務量が急増しています。

  • 顧客構造の変化(企業減少)
  • 競争環境の変化(税理士増加)
  • 業務の高度化・複雑化(特定分野の急増)

が同時に進んでおり、業界全体が大きな転換期を迎えています。こうした中で、個人事務所のままでは、増え続ける専門案件に高品質で対応し続けるのは難しくなっています。

その結果、「小規模のまま対応分野を絞って堅実に続ける」か、「他事務所との経営統合や組織化でスケールを取る」かという2つの道に分かれつつあります。

後者では、採用や育成を強化し、専門チームで幅広いニーズに応える体制を整える動きが加速しています。 こうして対応力や業務領域の差が広がり、いま業界では“二極化”がより鮮明になっているのです。僕たちもその変化を見据え、組織の総合力で価値を発揮する体制づくりを進めています。

―― 組織を拡大するうえで、人材戦略はどのように位置づけていますか。

岩永氏:アイユーコンサルティンググループでは、「組織力」を築くことを最重要テーマとしてきました。その中心にあるのが、採用力と社内教育制度の強化です。相続市場は年々拡大しているものの、専門人材は圧倒的に不足しています。人口減少や働き手不足も重なり、優秀な人材の確保はこれまで以上に難しくなっています。

そうした状況もあり、今年から新卒採用を開始し、未経験のメンバーを基礎から育てる仕組みづくりに力を入れています。「相続や事業承継は高度でハードルが高い」というイメージを持たれがちですが、体系的な育成プロセスをしっかりと組織として整えることで、段階的に専門家へ成長できると考えています。

アイユーコンサルティンググループ(事業計画発表会での集合写真)

画像引用:アイユーコンサルティンググループ(事業計画発表会での集合写真)

非同族承継で目指す「永続企業」への転換と業界再編の未来

―― 今後の展開と、目指す未来についてお聞かせください。

岩永氏: 僕はアイユーコンサルティンググループを、創業者である自分の存在に依存しない「永続的に成長が出来る組織」にしたいと強く考えています。創業者として熱量を持って組織を牽引することはできますが、その熱量を30年、40年と維持し続けるのは現実的ではありません。

だからこそ、あと10年ほどで第一線から一歩引き、次の世代にしっかりとバトンを渡せる状態を構築したい。そのために今、組織の根幹となる“永続の土台”を整備している最中です。

―― 永続企業を目指すうえで、最も重視しているポイントはどこにあるのでしょうか。

岩永氏: 具体的には、採用・教育・営業という3つの仕組みを、僕ではなく組織として自走できるレベルまで高めることを目指しています。採用では若手が専門家として成長できる育成ラインを確立し、教育では体系的なプロセスで知識と経験を積み上げられる環境をつくっています。営業面では、紹介ネットワークを軸にしながらも、新規チャネルの開拓も積極的に行いながら、どんな環境変化でも価値提供を続けられる体制づくりを進めています。

何より後継者に関しては、「非同族承継」を前提にしています。子どもに継がせるつもりはない、と公言もしています。次の時代を担うのは、血縁ではなく、専門性とマネジメント力を備えた優秀な人材であるべきだと考えています。事務所の規模が大きくなり、社会的責任も増している今こそ、誰が継いでも持続できる組織基盤が必要ですから。

今後10年で起きる「世代交代」と業界勢力図

―― 業界全体の動きとして、今後どのような変化が訪れると見ていますか。

岩永氏: 税理士業界は、まもなく大きな転換期を迎えると感じています。

現在、大手税理士法人の代表者の多くは60~70代で、今後10年ほどの間に世代交代が一気に進む見込みです。

業界誌が公表した全国の事務所規模ランキングで、アイユーコンサルティンググループは現在61位に位置していますが、上位に名を連ねる事務所の代表の多くは私より一回り以上上の世代です。僕のような40代前半の世代が、この規模の組織を率いているのはまだ少数派。

だからこそ、これからの10年は若い世代が次々と台頭し、業界全体の勢力図が大きく塗り替わっていくタイミングになると見ています。

その波に飲まれるのではなく、むしろ変化を追い風にできるポジションでいたい。士業の世界は株式会社のように資本で競う業界ではありません。だからこそ、「若さ」と「変化への適応力」は何よりも大きな武器になります。専門性と組織力の両方を兼ね備えた事務所だけが、次の時代の主軸になれると確信しています。

―― 最後、先行きに不安を抱える経営者の方々へ、メッセージをお願いします。

岩永氏: 経営者である以上、「トライ&エラー」は避けて通れません。あれこれ考えすぎて動けなくなるくらいなら、まず一歩踏み出すべきです。100のリスクを想像しても、そのうち10の事象が起きるかどうかも分からない。行動して初めて見える景色があります。

重要なのは、「なぜそれをやるのか」という目的を明確にし、逆算で行動すること。闇雲ではなく、思考と実行を往復させながら前に進む。その積み重ねが結果として大きな成果につながります。深く考え込みすぎず、しかし思考を止めず、まず動く。そうすることで、必ずどこかに活路は見えてきます。

―― 組織としての永続性まで見据えて体制づくりを進める姿勢からは、税理士業の枠にとどまらない「次の時代をつくるプロフェッショナル集団」としての覚悟が伝わってきました。

10年後、大きな転換期を迎える士業業界において、どのような存在へと進化していくのか期待が高まります。

今回お話を伺った企業
総称:アイユーコンサルティンググループ
  • 所在地(東京事務所):東京都豊島区南池袋2-28-14 大和証券池袋ビル3F
  • 連絡先:03-3982-7520
  • 公式サイト:https://bs.taxlawyer328.jp/
この記事のインタビュアー
竹澤 佳
著者NET MONEY編集部 編集長
詳細はこちら 立教大学大学院修了。流通業界専門の出版社で編集長を務めた後、IT企業のメディア部門に転職。現在は金融ジャンルに特化し、クレジットカード・カードローン・証券などの取材、編集執筆に従事。与信審査や金融商品比較など専門性の高いテーマを多数手がける。自身でも5枚のクレジットカードを使い分け、暗号資産・株式投資・外貨投資で資産運用中。

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