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AIの進化、技術トレンドの目まぐるしい変化、そして情報の氾濫──選択肢が増えたはずのITエンジニア領域で、いま20-30代の多くが「何を選べばいいのか分からない」という壁にぶつかっている。年収や有名企業を基準に選んだ結果、かえって満たされないミスマッチを抱えるケースも少なくない。この「ITエンジニア人材特有の、キャリア選択の難しさ」に、転職支援の現場ではどう向き合っているのか。

「転職は目的ではなく、幸せなキャリアを実現するための手段」という考えのもと、年間3,000人以上のキャリア相談に向き合ってきた転職エージェントサービス「すべらないキャリアエージェント」。今回は、同サービスを運営するアクシス株式会社 代表取締役・末永雄大氏に、IT・テック領域の転職市場の変化と、“幸せから逆算する”というキャリア戦略について、お話を伺いました。

今回お話をお伺いした方
末永 雄大(すえなが ゆうた)氏
アクシス株式会社 代表取締役
新卒でリクルートエージェント(現リクルート)入社。数百を超える企業の中途採用を支援。2012年アクシス(株)設立、代表取締役兼転職エージェントとして年間数百人以上のキャリア相談に乗る。「働くすべての人を幸せにする」を掲げ、転職エージェント事業、キャリアコーチング事業、企業向け研修事業に加え、YouTubeや転職ノウハウメディアの運営など、キャリア・人材領域に留まらない事業を多角的に展開している。

YouTubeチャンネル「末永 雄大 / すべらない転職エージェント」の総再生回数は1,800万回以上。著書「成功する転職面接」「キャリアロジック」。

現在、iU 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授、一般社団法人日本人材紹介事業協会(人材協)事業組織委員、EO Tokyo Central(起業家・創業者の世界的ネットワーク)31期コンテンツ理事/起業家ペイフォワード担当としても活動中。

「転職は目的ではなく、幸せなキャリアを実現するための手段」──サービスの原点

――はじめに、すべらないキャリアエージェントがどんなサービスなのか、IT・エンジニア領域でどういった方の、どんな悩みに応えているのかを簡単にご紹介ください。

末永 雄大氏(以下、末永氏):すべらないキャリアエージェントは、主に20~30代のビジネスパーソンを対象に、IT・インターネット業界や人材・広告業界など無形商材系の求人に強みを持つ転職エージェントサービスです。「転職は目的ではなく、幸せなキャリアを実現するための手段」という考えのもと、本人の価値観・強み・市場価値から逆算した転職支援を提供しています。

特徴は自己分析を体系化するところまで踏み込んで伴走することです。転職エージェントの多くは成功報酬型のため、構造上どうしても「早く決めてもらう」ことに力点が置かれやすく、一人ひとりの自己分析にここまで時間をかける支援は多くありません。

私たちは、求職者に本当に向き合えるエージェントでありたいという思いから創業し、この工程にこそ価値があると考えています。そのため、一人あたり平均10時間以上をかけて自己分析に伴走し、面談やメッセージでのやりとりは累計3万字以上、原稿用紙にして約75枚分にのぼります。

こうした密度の高い関わりが、入社半年以内の退職率1.5%以下、2回以上のサポートで年収340万円アップ、年間相談申し込み3,000人以上、内定決定率30%以上(業界平均6%)といった実績につながっています。

「転職したい」より「何を選べばいいのか分からない」──いま、20-30代エンジニアに何が起きているか

――近年、IT・テック業界で働く20-30代の転職に対する向き合い方や相談内容は、以前と比べて変化していますか。現場で感じる「最近増えている悩み・傾向」を具体的に教えてください。

末永氏:ここ数年で最も大きく変わったのは、「転職したい」という相談よりも、「何を選べばいいのか分からない」という相談が圧倒的に増えたことです。

以前は「年収を上げたい」「もっと成長できる会社へ行きたい」と目的が明確な方が多かったのですが、今はAIの進化や技術トレンドの変化が非常に速く、「今の仕事を続けていて大丈夫なのか」「どの技術を学ぶべきなのか」「この会社に残るべきか転職すべきか」と、選択肢が増えたからこその迷いを抱えている方が増えています。

SNSでは「年収1,000万円」「外資」「ITコンサル」「AIエンジニア」といった情報が日々流れてきますが、それが自分にとって本当に幸せな選択なのかまでは分かりません。

その結果、他人の成功事例を追いかけてしまったり、「転職しないと取り残されるのではないか」という漠然とした不安から動こうとするケースも少なくありません。

だからこそ今は、「どこへ転職するか」よりも、「自分はどんな人生を送りたいのか」「どんな状態が幸せなのか」を先に整理することの重要性が、以前にも増して高まっていると感じています。

――技術トレンドの移り変わりが速く、選択肢も情報も多いIT・エンジニア領域では、むしろキャリア選択に迷いやすいようにも見えます。「IT・エンジニア人材特有の、キャリア選択の難しさ」とは、具体的にどういうものだとお考えですか。

末永氏:まず、IT・エンジニア領域はキャリアの選択肢自体が非常に多いことが、難しさの一つです。事業会社SE、自社開発、SES、SIer、ITコンサルなど多様なキャリアパスがある中で、「自分にとって何がベストなのか」を見極めること自体が難しいのです。

さらに近年はAIエージェントの台頭により、「今の技術の延長線上でよいのか」「将来的に代替されるのではないか」という技術面での不安がつきまといます。上流工程やコンサルへのキャリアチェンジを検討する際も、「激務なのでは」「自分の実力で通用するのか」といったスキルギャップやマイナスイメージが先行し、一歩を踏み出しにくくなります。

変化が激しく、情報も溢れているからこそ、「何が正解かわからない」状態に陥りやすくなります。結果として、他人の成功事例や年収情報に引っ張られ、自分にとって本当に市場価値と幸福度が高まる選択を見失ってしまう方が多いと感じます。

年収も、有名企業も、「幸せ」を保証しない──「転職は目的ではなく、手段」の意味

――「年収が上がる会社へ」「有名なサービス・企業へ」といった選び方は、IT・エンジニア領域では特に起こりやすい一方、なぜ後悔につながりやすいのでしょうか。実際にそうした相談を受けることはありますか。

末永氏:年収や有名企業を基準にした転職は、ITエンジニア領域では特に起こりやすいと思います。技術力や経験が比較的市場価値として可視化されやすく、「この会社なら年収が上がる」「有名企業に入ればキャリアとして強く見える」という判断になりやすいからです。

ただ、年収や企業ブランドは、あくまで他者から見た評価軸で、本人の価値観や強み、やりがいと一致するとは限りません。

実際に、年収を上げる目的で大手コンサルティングファームや有名企業に転職したものの、業務上の担当領域が一部分だけで成長実感が持てない、求められる役割が自分に合わない、働き方の負荷が想像以上に大きい、といったギャップを感じる方もいます。

特にITエンジニアの場合、「技術を深めたい」のか、「事業に近い立場で価値を出したい」のか、「上流工程やマネジメントに進みたい」のかによって、選ぶべき環境は大きく変わります。そこを整理しないまま、年収やネームバリューだけで選ぶと、条件は良いのに満たされない、というミスマッチが起きやすいのです。

――御社は「転職は目的ではなく、手段」「年収はあくまで結果」と明言されています。なぜそう考えるに至ったのでしょうか。

末永氏:14年以上、数万人のキャリア相談に向き合ってきて強く感じるのは、転職そのものが人生を幸せにするわけではない、ということです。

実際に私たちは、高年収企業や誰もが知る有名企業に入社された方々から、「辞めたいんです」という相談を受けることも少なくありません。理由を伺うと、「やりがいを感じられない」「求められる役割が自分に合わない」「想像以上に働き方が厳しい」など、年収や企業ブランドだけでは解決できない悩みを抱えているケースが非常に多いのです。

一方で、自分の価値観や強みを理解した上で、自分に合った環境を選んだ方は、長く活躍し、その結果として市場価値や年収も後からついてくるケースが多くあります。年収は追いかけるものではなく、誰かに価値を提供し、その利益貢献の度合いが高まった結果としてついてくるものです。

だから私たちは、転職はあくまで「ありたい人生」を実現するための一つの手段だと考えています。

そのため、私たちは最初に「どんな会社へ行きたいですか」とは聞きません。

「子どもの頃から今までを振り返って、どんな時が一番嬉しかったですか」「逆に、どんな時が苦しかったですか」「何をしている時に没頭できますか」「どんな時に自分の強みを発揮できた感覚がありますか」といった対話から始めます。

その人にとっての幸せや強みが言語化されれば、転職するべきなのか、今の会社でも実現できるのかが自然と見えてきます。転職をゴールにするのではなく、その人の幸せな人生と、市場価値が高まるキャリアをゴールにする。その考え方が、私たちの転職支援の原点になっています。

――初回面談で「今は転職すべきでない」とお客様にお伝えすることもあるとうかがいました。求人を紹介したほうがビジネスとしては合理的なはずですが、なぜあえてそう伝えるのでしょうか。

末永氏:私たちは転職エージェントですが、転職させることを目的にはしていません。

むしろ、本質的には転職支援会社ではなく、キャリア支援会社だと思っています。転職しないほうが幸せになれるのであれば、その選択をおすすめすることも私たちの役割です。

実際に面談をすると、「会社が嫌なのではなく、上司との関係性だけが問題だった」「異動や部署変更で解決できる」「今の会社でも挑戦できる環境がある」といったケースも少なくありません。その状態で無理に転職すると、問題の本質が変わらないまま会社だけを変えることになり、同じ悩みを繰り返しかねません。

短期的には求人を紹介したほうがビジネスにはなります。しかし、本人が数か月後に後悔するようなキャリア支援は、私たちが掲げる「働くすべての人を幸せにする」という理念とは矛盾します。

だからこそ、「今回は転職しない」という結論になることもありますし、数年後に改めて相談いただくこともあります。そうした長期的な信頼関係こそが、本当に価値のあるキャリア支援だと考えています。

BEINGがDOINGを決める──「やりたいこと」ではなく「ありたい姿」から考える

――御社では「ありたい姿(BEING)の言語化」を重視されています。「やりたいこと(DOING)」ではなく「ありたい姿(BEING)」から考えることが、なぜ幸せなキャリアにつながるのでしょうか。IT・エンジニア人材ならではの観点があれば、あわせて教えてください。

末永氏:私たちが「ありたい姿(BEING)」を重視する理由は、BEINGがDOINGを決めるからです。

「何をやりたいか」というDOINGは、環境や時代によって変わります。特にITエンジニア領域は、技術トレンドの変化が速く、AIの進化によって数年後の仕事すら予測しづらい時代です。今やりたい仕事だけを基準に意思決定しても、数年後には環境が大きく変わっている可能性があります。

一方で、「どんな状態で働いている時にやりがいを感じるのか」「どんな価値を誰に提供したいのか」というBEINGは、人生を通じて大きくは変わりにくいものです。

同じエンジニアでも、新しい技術を学び続けることに喜びを感じる人、技術で事業や顧客に価値を届けたい人、チームを率いて組織をつくりたい人と、幸せの形はまったく違います。

BEINGが明確になれば、自社開発が向いているのか、SIerなのか、ITコンサルなのか、マネジメントなのか、スペシャリストなのかといったDOINGの選択肢も自然と絞られていきます。

ただ、それ以上に大きいのは、入社後に迷いにくくなることです。転職はゴールではなく、入社してからが本当のスタートです。仕事では必ず壁にぶつかりますが、自分が大切にしたい価値観やありたい姿が明確になっている人は、「何のためにこの環境を選んだのか」という軸に立ち返ることができます。だからこそ、環境に適応しやすく、長く活躍しやすいのです。

「どんな仕事をするか」より「どんな人生を送りたいか」から逆算することが、納得感のある意思決定と、入社後の定着・活躍にもつながると考えています。

――「自分の友達にも勧められる求人しか扱わない」というポリシーがあるとうかがいました。これは具体的にどういう基準で、なぜそこまで徹底されているのでしょうか。

末永氏:これは、求人ではなくその人の人生に責任を持ちたいと考えているからです。もし親しい友人や家族から相談されたら、紹介手数料や求人の多さでは判断せず、本当に幸せに働けるか、入社後も活躍できるか、市場価値を高めていけるかという視点で考えるはずです。私たちは、お客様に対しても同じ基準で向き合っています。

そのため、求人票の年収や福利厚生だけを見て企業を紹介することはありません。実際にどのような仕事を任されるのか、どんな上司のもとで働くのか、成長機会や企業文化は合うのか、長期的に市場価値を高められる環境かまで確認した上で、ご紹介する企業を厳選しています。

お客様に合う求人がなければ、無理にご紹介することもしませんし、「今は転職しない方がいい」とお伝えすることもあります。

私たちのゴールは、転職を成立させることではなく、入社後に定着・活躍し、「あの時転職して良かった」と思っていただくことです。だからこそ「自分の友達にも自信を持って勧められるか」というシンプルな基準を、何より大切にしています。

退職率1.5%以下・年収340万円アップの背景──「人生そのものの棚卸し」から始まる伴走

――“幸せから逆算する”キャリア戦略とは、実際にはどのように一緒に考えていくものなのでしょうか。初回面談から内定後まで、どんな伴走をされるのか、流れのイメージを教えてください。

末永氏:一般的な転職支援では、初回面談で経歴やスキルの確認が中心ですが、私たちはそれだけでは不十分だと考えています。

まずその方の人生そのものを棚卸しし、過去の原体験を振り返りながら「やりがい」「強み」「苦痛」「弱み」を整理していきます。

幸せの形は人によって違います。一般的なわかりやすい幸せだけを追うと、「社格」「福利厚生」「年収の高さ」といった条件だけで選んでしまいがちですが、それ以上に「その人なりの幸せとは何か」を言語化することが出発点です。

幸せとは未来に対する妄想ではなく、すでに経験してきた出来事の中に手がかりがあります。どんな場面が嬉しかったのか、苦しかったのか、強みを発揮できたのか。そこを丁寧に言語化していきます。

その上で、本人の強み・価値観と、企業が求める人物像をすり合わせ、候補企業を選定します。選考中も面接のフィードバックや企業理解のすり合わせを都度行い、内定後も条件面だけでなく「本当に納得して働けるか」「その環境で市場価値を高められるか」を最終確認します。そして入社後も定期的にフォローし、定着・活躍まで支援します。

――結果として、退職率1.5%以下・複数回サポートで年収340万円アップといった実績につながっているとうかがいました。こうした数字は、どんな関わり方の積み重ねから生まれていると思われますか。

末永氏:内定をゴールにせず、入社後の定着と活躍にこだわった支援をしていることが背景にあります。

退職率の低さは、表面的な条件マッチングではなく、その人の価値観・強み・志向性と、実際の職場環境が合っているかまで深く見ているからだと思います。例えば、安定した環境でじっくり専門性を高めたい人もいれば、変化の激しい環境で裁量を持って挑戦したい人もいます。良し悪しではなく、その人が力を発揮しやすい環境を見極めることが重要です。

また年収アップについても、単に年収の高い会社を紹介しているわけではありません。その方の強みを特定し、その強みが正しく評価される環境を選択することで、結果として年収が上がっています。

年収は、その人が提供できる価値や利益貢献が高まった結果としてついてくるものだからこそ、求人票の条件だけで判断するのではなく、選考や企業研究を通じて、本人の強みと企業の採用ニーズを丁寧にすり合わせています。その積み重ねが、退職率1.5%以下や、複数回サポートで年収340万円アップといった結果につながっているのだと考えています。

「他人の正解は、自分の正解ではない」──自分なりの軸でまっすぐに生きられる社会をつくる

――アクシスは「誰もが自分なりの軸でまっすぐに生きられる社会にする」というビジョンを掲げています。ITエンジニア領域の転職支援という事業は、このビジョンとどのようにつながっているのでしょうか。

末永氏:私たちが目指すのは、社名の由来でもある「誰もが自分なりの軸でまっすぐに生きられる社会にする」ことです。この「自分なりの軸」というのは、世の中で評価される軸ではなく、自分自身が大切にしたい価値観やありたい姿のことです。

今はSNSを通じて、年収や企業ブランド、肩書きなど他人の成功が簡単に見える時代です。その結果、「本当は何を大切にしたいのか」ではなく「周りからどう見られるか」という他人の軸でキャリアを選んでしまう人が増えているように感じます。

特にITエンジニア領域は、技術革新が速く、選択肢も非常に多い市場です。だからこそ、「AIが伸びているから」「有名企業だから」「年収が高いから」という理由だけで意思決定してしまうと、入社後に「こんなはずではなかった」と後悔するリスクも高くなります。

だから私たちは、転職先を提案する前に、その人自身の軸を一緒に言語化することを大切にしています。軸が明確になれば、転職することも、今の会社に残ることも、自分自身で納得して選択できるようになります。

一人ひとりが他人の物差しではなく、自分の軸で意思決定し、自分らしく働き続けられる人が増えていく。その積み重ねが、「誰もが自分なりの軸でまっすぐに生きられる社会」の実現につながると信じています。そのための手段として、私たちは「日本一、働くすべての人を幸せにするワークテックカンパニーになる」というゴールを掲げています。

――最後に、いまキャリアや転職に迷っているIT・エンジニア領域の20-30代の方に向けて、伝えたいことがあればメッセージをお願いします。

末永氏:ITエンジニアという仕事は、変化のスピードが非常に速い世界です。AIの進化や新しい技術を見ていると、「今のままでいいのだろうか」「早く転職しなければ」と焦りを感じる方も少なくないと思います。

ただ、周りと比較して焦って決断する必要はありません。他人の正解は、自分の正解ではないからです。

大切なのは、「どこへ転職するか」よりも、「自分はどんな人生を送りたいのか」「どんな時に仕事が楽しいと感じるのか」「どんな強みで誰に価値を届けたいのか」を理解することです。

その軸があれば、転職するという選択も、今の会社で挑戦を続けるという選択も、自信を持って決められるようになります。そして、環境が変わった後も迷いにくくなり、自分らしく活躍し続けることができます。

キャリアの正解は、人によって違います。だからこそ、他人の成功を追いかけるのではなく、自分にとっての幸せと、市場価値が高まる道を基準にキャリアを考えてみてください。私たちは、その答えを一緒に見つける伴走者でありたいと思っています。