FXでは取引できる通貨が10種類以上、業者によっては数十種類も用意されています。何が違うのかわからない、自分に合った通貨がわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、通貨を選ぶための基礎知識を整理し、取引スタイルに合った通貨を選べるよう解説していきます。
通貨を選ぶためのポイント
FXにおける最適な取引通貨は、取引スタイルによって異なります。ここでは、通貨を選ぶために必要なポイントを押さえていきましょう。
取引量に注目する
FXではさまざまな通貨を取引できますが、通貨によって取引量が大きく異なります。取引量が多い通貨はメジャー通貨と呼ばれ、米ドルやユーロ、円などが該当します。
中でも米ドルは、世界の商取引の基軸通貨であり、米ドルと組み合わせた通貨ペア(例:ユーロ/米ドル)はドルストレートと呼ばれます。これに対して米ドルが含まれない通貨ペア(例:ユーロ/円)はクロス通貨と呼ばれます。
一方で、取引量が少ない通貨はマイナー通貨と呼ばれ、トルコリラやメキシコペソなどが該当します。
基本的に取引量が多い通貨の方がコストが低く安定して取引ができ、マイナー通貨の方がリスクが高くなります。その理由についてさらに深掘りしていきましょう。
スプレッドが狭いほど取引コストが低い
FXでは買値は高く、売値は安く設定されており、その差額はスプレッドと呼ばれます。海外旅行をしたことがある方は、外貨両替の際に2つのレートが提示されているのを見たことがないでしょうか。あれと同じことです。FXでは基本的に売買手数料はかかりませんが、スプレッドが実質的な取引コストにあたるため、スプレッドは狭いほどコストを抑えることができます。
取引量が多いメジャー通貨のペアはこのスプレッドが狭く、反対にマイナー通貨だと広く設定される傾向にあります。短期取引で頻繁に売買を繰り返す場合は、特にスプレッドに注目する必要があり、メジャー通貨の方が有利です。
ボラティリティが大きいとリスクが高い
ボラティリティとは、価格の変動率のことを指します。一般的に、メジャー通貨ではボラティリティが低く、値動きが安定しています。反対に、マイナー通貨のボラティリティは高くなる傾向があり、急激な値動きが発生しやすくなります。
投資の世界において、リスクとは価格の振れ幅が大きいことを指します。すなわち、ボラティリティが高い=リスクが高い、ということです。ボラティリティが高いと、大きな損失となりやすいため注意が必要です。
ただし、ボラティリティは低ければいい、というものでもありません。為替の値動きを利用して利益を得るのがFXですから、値動きがないと利益が出せません。エントリーした方向に動いたけど値幅がなくて利益が出ない、という状況であれば、想定に対してボラティリティが低い可能性があります。その場合は、もう少しボラティリティが高い通貨の方が良いかもしれません。
通貨ペアにより値動きの癖がある
FXは通貨「ペア」の取引をしています。このため、ある通貨単体の特徴に加えて、通貨ペアとしての特徴があります。
最も取引量が多い米ドルですが、中でもユーロ/米ドルは最も取引量が多い通貨ペアです。そのため値動きが緩やか、トレンドが長く継続する、などの特徴があります。また、アジア時間では動きが緩やか、ロンドン市場が開く16時以降に活発になるといった、時間帯の特徴も見られます。
豪ドル/円はメジャー通貨同士の組み合わせですが、比較的ボラティリティが大きい通貨ペアです。一方、豪ドル/ニュージーランドドルは、非常に狭いレンジを形成しています。これは、オーストラリアとニュージーランドの関連性が高いことが理由です。
ある通貨の特徴に加えて通貨ペアの特徴を理解することで、より適した取引スタイルを選択しましょう。
スワップポイントが日々発生する
ここまでは取引量に関連するポイントをご紹介してきました。FXでは他にも注目するポイントがあります。それはスワップポイントです。
スワップポイントは「金利差調整分」とも呼ばれ、通貨間の金利差により発生します。基本的に金利の高い通貨を買って、金利の低い通貨を売るポジションを保有しているとプラスのスワップポイントが付与されます。反対のポジションではマイナスのスワップポイントとなり、その分支払うことになります。
売買時に発生するものではなく、ポジションを保有していればその日数分発生するものであることも押さえておきましょう。
ファンダメンタルズ的要素を考慮する
スプレッドやスワップポイントなどは、FXで通貨を選ぶ際に比較する「スペック」のようなものです。これらに加えて、特に中長期的に保有する取引をしたい方にはファンダメンタルズ的要素も考慮することが望ましいです。
ファンダメンタルズとは、国の経済データや国そのものの状況など、その通貨の背景にあるさまざまな情報のことです。
たとえば、米ドル/円とトルコリラ/円のスワップポイントが同じ利率で付与されるとしたらどちらに投資するでしょうか。米ドルは先進国であり、世界の基軸通貨であるという実需もあります。これに対してトルコは内政が不安定であったり、高インフレになっていたりするといった背景があります。もしも同じ利率なら、一般的には米ドル/円が選ばれるのではないでしょうか。
スペックを比較するだけではなく、その背景にあるファンダメンタルズを考慮することで、中長期的な投資におけるリスクを下げることができるでしょう。
FX初心者は米ドル/円から始めてみよう
これからFXの取引を始めようと思っている方は、取引スタイルもまだわからず、いきなり通貨の比較をするのは難しいかもしれません。そのような方はまずは米ドル/円から始めることをおすすめします。
米ドル/円は世界でも2番目に取引量の多い通貨ペアです。そのためスプレッドも非常に小さく設定されており、値動きも安定しています。
また昨今のインフレに対応するため、米国の政策金利は高く設定されています。そのためメジャー通貨の中ではスワップポイントがトップクラスです。
日本と米国の通貨の組み合わせのため、ファンダメンタルズに関する情報も得やすいでしょう。
短期から長期まで、どのような取引スタイルであっても優れているため、まずは米ドル/円から始めてみてはいかがでしょうか。その中でFXの知識を身につけ、本記事で紹介したポイントを比較してより適した通貨を探すとよいでしょう。
取引スタイル別おすすめの通貨を紹介
通貨を選ぶポイントを押さえたところで、具体的に通貨を選んでいきましょう。取引スタイルごとに特に重視するポイントと、そこからおすすめできる通貨をご紹介します。スキャルピングにおすすめの通貨
スキャルピングは数秒や数分単位の短時間で売買を完了させる取引スタイルです。売買を繰り返し、小さな利益を積み重ねていくことになります。このスタイルで最も重視するのはスプレッドです。1回で獲得できる値幅は小さいため、スプレッドが広いとコストに負けてしまいます。通貨ペア、さらに業者選びまで、できるだけスプレッドが狭い環境を選ぶことをおすすめします。
また、通貨により活発に動きやすい時間帯があります。取引をする時間帯が決まっている場合は、それも考慮に入れて選ぶとよいでしょう。
通貨ペア | 米ドル/円 | ユーロ/円 | ユーロ/米ドル |
---|---|---|---|
スプレッド | 0.18銭 | 0.38銭 | 0.38pips |
米ドル/円は、取引量が1位の米ドルと3位の日本円の組み合わせです。日本のほとんどのFX業者では、最も狭いスプレッドの通貨ペアになっており、スキャルピングに最適な通貨ペアでしょう。
値動きが活発になりやすいと言われているのは、東京市場のオープン時間付近である8:30頃~10:00頃やニューヨーク市場のオープン時間付近である22:00頃~24:00頃です。
ユーロ/円は、取引量が2位のユーロと3位の日本円の組み合わせです。多くの業者で米ドル/円についで狭いスプレッドになっており、こちらもスキャルピングに検討したい通貨ペアです。
値動きが活発になりやすいと言われているのは、東京市場のオープン時間付近である8:30頃~10:00頃やロンドン市場のオープン時間付近である17:00頃~19:00頃です。
ユーロ/米ドルは、取引量が1位の米ドルと2位のユーロの組み合わせで、最大の取引量を誇る通貨ペアです。おおむねユーロ/円と同じくらいのスプレッドで提供されています。
値動きが活発になりやすいと言われているのは、ロンドン市場のオープン時間付近である17:00頃~19:00頃やニューヨーク市場のオープン時間付近である22:00頃~24:00頃です。日本円が絡まないためロンドン市場オープン以降の動きが活発になります。夕方以降の取引が多くなる方には特におすすめの通貨ペアです。
スキャルピングを始めたいFX初心者におすすめの口座は以下の3つです。
デイトレードにおすすめの通貨
デイトレードは数時間~1日で売買を完了させる取引スタイルです。このスタイルで重視するのはスプレッドと値動きの癖です。スキャルピングほど取引回数は多くないので、スプレッドが多少広くても大丈夫ですが、マイナー通貨はやはり不向きです。メジャー通貨の中で選ぶことをおすすめします。
また、突発的に影響を与えそうなファンダメンタルズ(雇用統計やCPIなど)を把握しやすい方が望ましいです。その突発的な動きを予想して取引したり、あるいはその日は取引を避けたりするなど、対応方法はさまざまですが、いずれにしても情報がすぐに手に入る方が良いでしょう。
通貨ペア | 米ドル/円 | ユーロ/円 | 豪ドル/円 |
---|---|---|---|
スプレッド | 0.2銭 | 0.4銭 | 0.6銭 |
値動きの特徴 | 緩やかな動き | 緩やかな動き | ボラティリティが高い |
米ドル/円はスプレッドが最も狭く、値動きも安定しており、コストもリスクも抑えられた通貨ペアです。米国と日本の通貨なので情報も容易に把握でき、取引しやすいでしょう。
ユーロ/円もスプレッドが狭く、値動きも安定しています。EUは複数国の集合体であるため、情報を手に入れるという点では少しハードルが高いかもしれません。
豪ドル/円はスプレッドが狭く、それでいてボラティリティが高いという特徴があります。急激に変動しやすいというリスクはありますが、言い換えれば一度の取引で大きな値幅を狙えるメリットでもあります。米ドル/円やユーロ/円のボラティリティでは物足りない方は、こちらを検討してみてはいかがでしょうか。
なお通貨の選び方ではありませんが、デイトレードの注意点として、ニューヨーククローズを、またぐポジションにはスワップポイントが発生します。ほとんどのFX業者ではプラスよりマイナスのスワップポイントを高く設定しているため、買いと売りの両方で取引を繰り返すとスワップポイントのトータルがマイナスとなる可能性が高くなります。少しでもコストを減らすため、スワップポイントのプラスとマイナスの差が小さい業者を選ぶことをおすすめします。
デイトレードを始めたいFX初心者におすすめの口座は以下の4つです。
スワップポイント投資におすすめの通貨
スワップポイント投資は、売買差益を狙った取引ではなく、付与されるスワップポイントを狙った取引のことを指します。時間軸に定義はありませんが、基本的には数週間から数ヵ月、数年という長期的なスパンで行う手法になります。
スワップポイントを狙う取引ですから、重視するのはもちろんスワップポイントの高さです。スワップポイントを比較する際に注意したいことは、公表されているスワップポイントは多くの場合、各通貨「1万通貨」に付与される値になっていることです。100円買ったら10円もらえるのと、1,000円買ったら50円もらえるのを比べると、前者の方がお得です。同じように、「いくらに対してそのスワップポイントがもらえるのか」を考えるようにしましょう。
また、ファンダメンタルズも重要になります。現在だけ高金利なのか、過去も安定して高金利だったのか、レートの下落が激しくないか、などを考慮し、長期的な投資先として妥当なのか検討する必要があります。
通貨ペア | メキシコペソ/円 | ハンガリーフォリント/円 |
---|---|---|
1万通貨の価格 | 7万7,360円 | 4,050円 |
スワップポイント | 24円 | 3円 |
スワップポイント年率 | 11.3% | 27% |
高金利通貨の代表的なものにはトルコリラ/円、メキシコペソ/円、南アフリカランド/円の3ペアがあります。中でもメキシコペソ/円はスワップポイントが安定して高く、レートの下落も激しくないため最もおすすめできる通貨ペアです。
トルコリラは金利自体は常に高く設定されているのですが、レートの下落が激しいという特徴があります。実質的なスワップポイントは減っていきますし、含み損も膨らんでいきます。高金利でありながら安定感がある、メキシコペソ/円の方が安心できる投資先でしょう。
ハンガリーフォリント/円は、2023年3月からみんなのFXとLIGHT FXで取り扱いが始まった新しい通貨ペアです。トルコリラ/円を上回るほどの高スワップポイント、それでいてメキシコペソ/円のようなレートの安定性と、現状ではスワップポイント投資に最も適している通貨ペアの1つだと言えるでしょう。
日本ではまだ登場して間もない通貨ペアのため、この高スワップポイントが続くのかどうかは未知数の部分があります。定期的に情報を得ながらポートフォリオに加えてみてはいかがでしょうか。
スワップポイント投資を始めたいFX初心者におすすめの口座は以下の3つです。
積立投資におすすめの通貨
積立投資は、定期的に同じ商品を買い付ける長期投資手法です。投資信託のつみたてNISAはまさにこの手法です。一度に多額の投資資金を用意できなくても少額で始められる、時間的なリスク分散ができる、といったメリットがあります。
FXの積立投資で重視するのは、レンジ相場になっているか、あるいは高スワップポイントであるかの2点です。
積立投資は長期的に保有することになるため、スワップポイントがプラスであるポジションを持つことが基本になります。その上で、主に2つの戦略が考えられます。1つは、レンジ相場となっている通貨ペアで積立購入し、レンジの端に来たら売却することで差益を狙う戦略です。もう1つは、高いスワップポイント狙いで積立購入する戦略です。
通貨ペア | 米ドル/円 | メキシコペソ/円 |
---|---|---|
スワップポイント年率 | 5.3% | 11.3% |
トレンド | レンジ | 緩やかな下落トレンド |
米ドル/円は2000年以降100円から120円ほどでの推移が長く、下振れや上振れはありますがおおむねレンジ相場と言えるのではないでしょうか。また現在はスワップポイントも高くなっているため、積立期間ではスワップポイントの利益を得つつ、最終的には売買差益で大きく利益を得る、というような取引ができるかもしれません。
メキシコペソ/円は安定してスワップポイントが高いため、スワップポイントを狙った積立投資にはおすすめの通貨ペアです。大局的には下落トレンドだと思われるので、含み損になりやすいことはあらかじめ理解しておく必要があります。
積立投資を始めたいFX初心者におすすめの口座は以下の3つです。
自動売買におすすめの通貨
自動売買で重視するのは、レンジ相場になっていることと、そのレンジが狭いことやボラティリティが高いことです。
FXでの自動売買にはさまざまな種類がありますが、多くのシステムはリピート系自動売買に分類されます。ある価格で買ってある価格で売る、という注文を繰り返すことをリピート注文と呼びます。このリピート注文をレンジの中に複数仕掛けて、上下を繰り返す相場の細かな値動きから利益を得ようとするのがリピート系自動売買の基本的な考え方です。こうしたシステムにはレンジ相場の通貨ペアが向いていますが、中でもレンジが狭いと資金効率がよくなり、ボラティリティが高いと約定する回数が多くなるという特徴があります。
通貨ペア | 豪ドル/ニュージーランドドル | 豪ドル/円 |
---|---|---|
特徴 | 狭いレンジ相場 | ボラティリティが高い |
豪ドル/ニュージーランドドルは非常に狭いレンジを形成しています。オーストラリアとニュージーランドの結びつきが強く、金利政策も比較的似ていることからこのような相場が形成されています。このレンジを抜けたらどうするかというリスク管理は必要ですが、資金効率に優れた自動売買が行える利点があります。
豪ドル/円はメジャー通貨のクロス円の中でボラティリティが高い傾向にある通貨ペアです。価格が動けばそれだけ注文が約定するチャンスが多く、リピート系自動売買では長らく人気があります。クロス円で自動売買を始めてみたい方は検討してみてはいかがでしょうか
FAQ
稼ぎやすい通貨ペアは?
一概に稼ぎやすい通貨ペアはありません。取引スタイルに合った特徴の通貨ペアを選ぶことが重要になります。まだ取引スタイルもわからないという方は、コストが低く値動きも安定している米ドル/円から始めてみることをおすすめします。
トレンドが続く通貨ペアは?
取引量が多い通貨同士のペアはトレンドが長く続きやすい傾向にあります。一方、取引量が少なくなるとボラティリティが高くなり、トレンドの移り変わりが早くなる傾向があります。
トレンドの値幅(大きさ)という意味で言えば、ボラティリティが高い通貨ペアの方が大きい傾向があります。
値動きの激しい通貨ペアは?
取引量が少ない通貨ペアの方が激しい値動き(=ボラティリティが高い)になる傾向があります。マイナー通貨はもちろん、メジャー通貨の中でも米ドル/円と豪ドル/円を比べると豪ドル/円の方が値動きは激しい傾向があります。
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