外貨積立は、定期的に一定金額で外貨を買い付けし、積み立てていくタイプの外貨預金です。外貨預金は、円預金と比べて金利面で魅力があります。しかし為替動向によっては、不利益を被る可能性も否めません。為替動向が読みにくい昨今、買付のタイミングで迷うことがなく外貨で預金ができる外貨積立の魅力が高まっています。
本記事では、外貨積立の概要や仕組み、外貨積立の始め方などについて解説します。どの通貨を選べば良いかわからない方のために積立通貨の選び方についても説明しますので、ぜひ参考にしてください。
- 外貨積立の始め方がわかる
- 通貨選びのポイントがわかる
- 銀行選びのポイントがわかる
- 外貨積立のメリット・デメリットがわかる
為替手数料 (※外貨買付 (積立) 時) |
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大和ネクスト銀行は、外貨買付 (積立) 時の為替手数料0円で1,000円から積立ができます。
外貨積立について
外貨積立は、定期的に一定額の日本円を外貨に交換し、外貨で積み立てるタイプの外貨預金です。
外貨預金の基本
まずは、外貨預金の基本的な仕組みから理解していきましょう。外貨預金は、入金時に円を外貨に交換して預け、出金時に外貨を円に交換して円貨で受け取ります(預けた外貨はそのまま外貨で使える場合もあります)。この場合、入金時よりも出金時に円安であることが利益を出すための基本です。具体的な例で見てみましょう。
例えば、為替レートが1米ドル=150円のときに30万円分入金するとします。米ドルでの預入額は、次の計算式のとおり2,000米ドルです(※)。
・米ドルでの預金額:30万円÷150円=2,000米ドル
為替レートが1米ドル=160円と、預入時よりも円安になったとき、日本円に換算すると次の計算式のとおり32万円となります(※)。
・日本円での受取り額:2,000米ドル×160円=32万円
一方、為替レートが1米ドル=140円と、預入時よりも円高になったとき、日本円に換算すると次の計算式のとおり28万円です(※)。
・日本円での受取り額:2,000米ドル×140円=28万円
このように入金時よりも円安になればプラスになり、円高になれば元本割れするのが外貨預金の基本です。
外貨積立の基本的な仕組み
外貨積立は、積み立てタイプの外貨預金であり、為替動向によって損益が変わる仕組みは先に説明した外貨預金と変わりません。一般的な外貨預金との違いは、日本円ベースで毎月同額を入金(積み立て)していくことです。毎回の外貨での預入額は、積立時点の為替レートで計算されます。そのため円高時には外貨の預入額は多くなり、円安時には外貨の預入額は少なくなる傾向です。
しかし一定の金額で継続的に外貨を購入していくことで、平均取得単価を抑えられます。
外貨積立を始める背景と目的
2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策解除を決定したのを受けて、多くの銀行では預金金利を引き上げました。しかし多くの場合、普通預金金利は0.001%から0.02%へ、定期預金は預入期間によりますが1年物で0.002%から0.025%と定期預金でも金利がまだまだゼロに近い状況です。そのため近年では、円預金よりも高金利の外貨預金に注目が集まっています。
加えて前述したように外貨預金では、預入時よりも為替レートが円安に動けば利益を得られます(実際は為替手数料を考慮する必要があります)。2022年以降、為替相場は円安基調が続いているためか、「外貨預金で為替差益を得たい」と思う人が増加傾向です。とはいえ「行き過ぎた円安」ともいわれるほど円安基調が続き、政府が介入したとも見られる場面も何度か生じています。
このように為替相場が見通しにくくなっているタイミングでは、まとまった資金を外貨預金に預けるよりも為替相場を気にせず毎回少しずつ購入し続ける外貨積立のほうが安心でしょう。
なぜなら「ドルコスト平均法」といって、外貨のような価格変動商品は定期的に定額を購入することで、取得単価のばらつきを平準化し、平均取得単価を抑えることができるからです。この効果は、積立期間が長くなるほど、より大きくなります。
積立方法と戦略
ドルコスト平均法のメリットを理解するために、「定額積立」と「定量積立」の違いを知っておきましょう。
- 定額積立:毎回定額を積み立てる方法
- 定量積立:毎回一定量を積み立てる方法
外貨積立の場合、定額積立の「定額」は日本円での金額になり、「定量」は外貨での金額になります。以下の表で具体的な例で見てみましょう。定額では毎回1万円、定量では毎回100米ドルで積み立てるとすると米ドルでの預入額は以下のようになります。
【定額積立】 | 1ヵ月目 | 2ヵ月目 | 3ヵ月目 | 4ヵ月目 | 合計 | |
為替レート (1米ドルあたり) |
150円 | 145円 | 153円 | 160円 | ― | |
積立額 | 日本円 | 1万円 | 1万円 | 1万円 | 1万円 | 4万円 |
米ドル | 66.67米ドル | 68.97米ドル | 65.36米ドル | 62.50米ドル | 263.50米ドル |
【定量積立】 | 1ヵ月目 | 2ヵ月目 | 3ヵ月目 | 4ヵ月目 | 合計 | |
為替レート (1米ドルあたり) |
150円 | 145円 | 153円 | 160円 | ― | |
積立額 | 日本円 | 1万5,000円 | 1万4,500円 | 1万5,300円 | 1万6,000円 | 6万800円 |
米ドル | 100米ドル | 100米ドル | 100米ドル | 100米ドル | 400米ドル |
上記表の通り、ドルコスト平均法の効果によって、定量積立よりも定額積立の平均取得単価のほうが低くなっていることがわかります。 期間が短いため差は少しですが、期間が長くなるにつれてこの効果はより大きくなります。
銀行で取り扱っている外貨預金の外貨積立は、定額積立方式が採用されています。初めての外貨資産形成であれば平均取得単価を引き下げられ、為替変動リスクの低減につながる外貨預金の積み立て(定額積立)がリスクを抑える戦略といえるでしょう。
また、1つの通貨に集中させず、複数の通貨に分散して積み立てることもおすすめです。通貨を分散させることでリスク分散につながるため、資産形成するうえでメリットとなります。
初めての外貨積立 始め方
外貨積立に興味があっても「何から始めればいいのかわからない」という方もいるかもしれません。初めて外貨積立に挑戦する場合は、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
積立通貨の選び方
金融機関によって外貨積立ができる通貨の種類は異なりますが、外貨積立を始める際は積み立てる通貨を選ぶ必要があります。「どの通貨を選べばいいかわからない」という方は、次のような基準で選ぶこともおすすめです。
- 旅行や留学で使える
- 金利が良い
- 流通量が多い
海外旅行や留学、出張などで海外に行く機会がある場合は、現地で使える通貨を選ぶと旅行費用目的の貯金として役立ちます。お金を増やすことに重点を置きたい人は、金利の良さや円安を望める通貨を選ぶのも良いでしょう。ただし円と外貨を交換する際には、為替手数料が発生します。
為替手数料は、通貨や金融機関によっても異なり、一般的には米ドルのように流通量が多いほど低く、流通量の少ない通貨は高めな傾向です。流通量が多い通貨は、比較的為替が安定しているといわれているため、為替変動リスクを抑えたい場合には流通量に注目するのも良いでしょう。外貨積立で取り扱われることの多い主な通貨の特徴は、次のとおりです。
米ドル | 国際的な取引が米ドルをベースに行われているため、安定性や流動性が比較的優れている通貨。米ドル関連の情報収集もしやすく初心者でも始めやすい。 |
ユーロ | 世界三大通貨の一つ。2024年5月時点において、20ヵ国で法定通貨として利用されている。米ドルに次ぐ取引規模を誇り、比較的値動きも安定している。国により経済状況が異なり、判断が難しい面もある。 |
英ポンド | 国際的な取引や金融市場での取引で、極めて重要な役割を持つ通貨。米ドルやユーロに比べると為替レートの変動リスクがあるものの、主要国のなかでは、歴史的に金利が高い傾向がある。 |
豪ドル | 資源市場の動きと密接に関連。最大の輸出国である中国経済の影響を受けやすい。値幅が大きく変動のスピードが速いことも。 |
NZドル | ニュージーランドは農産物輸出国として有名。農産物価格の動きが為替価格に影響を及ぼす。オーストラリアや中国の動きにも注意が必要。 |
トルコリラ | 高金利通貨として知られるトルコリラは、金利収入の面で魅力的。国民の平均年齢が低く、潜在成長力は高水準。内政リスクや中東方面の動向に注意が必要。 |
南アフリカランド | 金利が高い。世界有数の資源国だが、鉱産資源価格の影響を受けやすい。政情不安や鉱業関連のストライキなどによる為替変動に注意が必要。 |
銀行の選び方
外貨積立をしたいと思う通貨が決まったあとは、申し込み準備をしましょう。まずは、銀行を選び口座開設を申し込みます。銀行を選ぶ際は、次のよう点をチェックすると良いでしょう。
- 自分が積み立てしたい通貨を取り扱っているか
- 為替手数料がどのぐらいかかるか
- 無理のない金額で積み立てできるか
【銀行】 | 大和ネクスト銀行 | 東京スター銀行 | GMOあおぞらネット銀行 | ソニー銀行 | 住信SBIネット銀行 | PayPay銀行 | auじぶん銀行 |
取扱通貨数 | 2 | 3 | 8 | 12 | 9 | 9 | 8 |
為替手数料(米ドルの場合) | 預入時:なし 払出時:最大50銭 |
預入時:なし 払出時:最大50銭 |
預入時:5銭 払出時:5銭 |
預入時:15銭 払出時:15銭 |
預入時:6銭 払出時:6銭 |
預入時:5銭 払出時:5銭 |
預入時:6銭 払出時:6銭 |
最低積立可能額 | 1,000円以上1,000円単位 | 1,000円以上1,000円単位 | 500円以上 1円単位 |
500円以上 1円単位 |
500円以上 1円単位 |
300円以上 1円単位 |
100円以上 100円単位 |
積立頻度 | 毎月 | 毎月 | 毎月・毎週・毎日 | 毎月・毎週・毎日 | 毎月・毎週・毎日 | 毎月・毎週・毎日 | 毎月・毎週・毎日 |
先に述べたように外貨積立は、預け入れと払い出しの際に為替手数料が発生します。1回あたりの積立額が少額でも、積み立てるたびに手数料が発生すると期待できる利息や為替差益が減少しますので預入時の為替手数料が低いことも銀行選びのポイントです。為替手数料は、金融機関や通貨によって異なるため、口座開設前に必ず確認しましょう。
必要な準備と手続き
金融機関を選んだあとは、口座開設をしましょう。多くの金融機関では「スマホのアプリ」「Webサイト」「店頭」などで口座開設手続きができます。ここでは、スマホのアプリで手続きする場合の流れを紹介します。
- アプリ画面で本人情報を入力、本人確認書類をアップロードする
- 口座開設完了案内が届く
- アプリからマイナンバーを登録する
- 取引可能
金融機関のなかには、アプリで手続きする場合、最短1日で手続きができる場合もあります。口座開設が完了し、手続きできるようになったあとは外貨積立を申し込み、積み立てする通貨や金額、積立方法などを設定しましょう。スムーズに手続きできるように以下のような必要書類を事前にそろえておくことも大切です。
【本人確認書類】(いずれか2点)
- 運転免許証
- 健康保険証
- 在留カード
- 特別永住者証明書
- 住民票の写し
【その他準備するもの】
- マイナンバー(金融機関によってはマイナンバーを安全に登録できるように専用のアプリを用意しているため、活用すると良いでしょう)
- 積立金の引き落としや引出金の受取りに使用する本人名義の口座番号 (大和ネクスト銀行に口座開設をする場合)
為替手数料 (※外貨買付 (積立) 時) |
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0円! |
大和ネクスト銀行は、外貨買付 (積立) 時の為替手数料0円で1,000円から積立ができます。
外貨積立のメリット
ここであらためて外貨積立のメリットを確認しておきましょう。
為替差益を期待できる
入金時よりも円安になれば為替差益を得られますが、将来的に為替がどう変動するかは予想するのが難しいものです。外貨積立は、定期的に定額を積み立てるため、円高・円安どちらの局面でもタイミングを気にせずに始められます。またドルコスト平均法によって平均取得単価が抑えられることで、為替変動リスクが軽減し、為替差益を得やすくなります。
金利の恩恵を享受できる
一般的に外貨積立は、外貨普通預金の金利が適用されます。外貨普通預金の金利は、外貨定期預金金利よりは低いものの円定期預金と比べると高い場合が多いです。ただし通貨によって適用金利は異なります。例えば大和ネクスト銀行の外貨普通預金の金利は、米ドルの場合で0.5%(税引前)です。円預金の定期預金金利が0.025%だとすると20倍となり、高金利の恩恵を享受できるメリットがあります。
コツコツためた外貨普通預金がある程度まとまったら、定期預金にすることでさらに高い金利を受け取ることもできます。
自動積立で利便性が高い
預け入れを忘れたり、途中で休止したりするとドルコスト平均法の効果を充分得られなくなります。外貨積立は、自動的に定額積立されるため、ドルコスト平均法の活用に便利です。
外貨積立のデメリット
外貨積立には、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあります。
為替リスクがある
ドルコスト平均法によって平均取得単価を抑えることはできますが、為替リスクが全くなくなるわけではありません。特に急激な為替基調の転換により円高が進むような局面では、為替差損を被る可能性もあります。
流動性リスクがある
外国為替市場で外国為替取引が行われない場合など、通貨の種類によっては預け入れや払い戻しができなくなる可能性があります。このような流動性リスクを避けるためにも通貨分散や他の方法による資産形成もしておきましょう。
信用リスクがある
外貨積立(外貨預金)は「預金保険制度」の対象外となります。預金保険制度とは、金融機関が破たんした場合でも元本1,000万円(上限)と破たん日までの利息等が保護される制度です。しかし外貨積立の口座内の資金は、保護されません。そのため外貨積立をする場合は、金融機関の健全性などをしっかりとチェックしておくことが大切です。
為替スプレッドが発生する
金融機関や取引通貨などによって異なりますが、基本的に外貨積立では日本円を外貨へ交換するとき(預入時)と外貨を日本円へ交換するとき(引出時)のそれぞれに為替手数料が発生します。できるだけ為替手数料の低い金融機関や通貨を選ぶのがおすすめです。
外貨積立で為替変動リスクを軽減
外貨積立は、定期的に一定額の日本円を外貨に交換し外貨で積み立てるタイプの外貨預金です。原則預入時よりも円安になった時点で払い出すと為替差益が得られます。また、円預金よりも金利が高い通貨が多く、より多くの利息収入を期待できるメリットもあります。
しかし政府の為替介入や不安定な世界情勢など、為替が不安定になる可能性はゼロではありません。外貨積立は、円安・円高のどちらの局面でも気にしないで始められるため、一括で資金を預ける外貨預金に比べて初心者でも取り組みやすいでしょう。ドルコスト平均法によって為替変動リスクを軽減することもできます。
外貨積立に関するよくある質問(FAQ)
ここからは、外貨積立に関するよくある質問へ回答していきます。
- 円高局面になることを考えると、外貨預金は不利ではないですか?
- 将来的な為替動向は誰にもわかりません。円高局面が続けば円ベースでの資産価値は減りますが、積み立てできる外貨の額は多くなります。口座内の外貨残高を増やしていきながら円安に転換するのを待つのもいいでしょう。
- 外貨積立は為替変動リスクがあって心配ですが大丈夫ですか?
- 通貨によって為替変動リスクは異なります。外貨というと米ドルをイメージする人も多いかもしれません。しかし多くの金融機関では、複数の通貨を取り扱っています。米ドルのみでなく、豪ドルやユーロなど、いくつかの通貨へ分散して積み立てするとリスクヘッジとして有効です。
- 外貨積立はどのように選べば良いですか?
- まずは、積み立てしたい通貨を選びましょう。初めての場合は、為替の動きがわかりやすい米ドルや豪ドル、ユーロなどから始めるのがおすすめです。また旅行などで自分が使う通貨を選ぶことも選択肢の一つといえます。円を外貨へ交換するときや外貨を円へ戻すときにかかる為替手数料も忘れずチェックしましょう。
為替スプレッドは、通貨や金融機関によって大きく異なります。なお外貨積立(外貨預金)は、預金保険制度で保護されていないため、ペイオフの対象外です。そのため積み立てをしている金融機関が破たんした場合、それまでの積立資産は保証されません。万が一のことも考慮すると、金融機関の健全性を充分に確認して選ぶことも大切です。