コロナ禍の影響により特典を使う機会が減少したなどの理由で、保有しているクレジットカードの見直しを考えている人もいるだろう。多種多様な特徴を持つクレジットカードの中から、自分にあったものを選ぶには、どのような基準で判断すればよいのだろうか。

ポイント交換案内サービス「ポイ探」の運営者で自身も100枚以上のクレジットカードを保有しているという菊地崇仁氏に、カード選びのポイントやおすすめのカードについて話を聞いた。

菊地さん
菊地 崇仁
ポイント交換案内サービス・ポイ探の開発に携わり、2011年3月代表取締役に就任。貯めているポイントは帰省利用等に使うためANAのマイルが中心。メインカードはANA VISAカード、サブカードとしてSoftBankカード、ビックカメラSuicaカード(Visa)、漢方スタイルクラブカードを利用中。利用している電子マネーはiD(ANA VISAカード)、nanaco、Suica、楽天Edy。著書に『新かんたんポイント&カード生活 (自由国民社)』、『得するポイント(カード)の貯め方・使い方 (日本監督協会)』。
Twitter: @takahitokikuchi
公式HP: 菊地崇仁オフィシャルホームページ

ポイントを貯める上で最も効果的な手段が、クレジットカード

―クレジットカードやポイントに関する情報発信を始められたきっかけを教えてください。

ポイントサイトが世の中に出てきた2006年頃に、「ポイ探」というサイトの運営をはじめました。ポイント交換のルートをオンラインで探せるようにしたら便利だろうと考えたことがきっかけで、「ポイント交換ルート案内検索」というコンテンツの掲載からスタートしたのです。

そして、ポイントを貯める上で最も効果的な手段が、クレジットカードだったためクレジットカードについても情報を発信するようになりました。野村総合研究所のレポートによると、ポイント・マイレージの年間発行額は2018年の時点で1兆円を超えており、その2/3がクレジットカード会社、家電量販店、携帯電話事業者によって発行されていると言われています。

ポイントに対して影響力の大きいクレジットカードに付いて、信憑性の高い発信を行うために、年間150万円程度の年会費を支払い、100枚以上クレジットカードを保有して、実際に使ってみるようにしています。

―最近は、ポイント還元率の低下や「改悪」という声をよく耳にするのですが、クレジットカード業界全体の潮流として、ポイント還元率は見直されつつあるのでしょうか。

確かにポイント還元率が1.5%を超えるカードが少なくなってきています。一時期は還元率を下げて、付帯特典を追加する傾向にありましたが、最近はポイントがまた注目されてきています。これはおそらく、新型コロナの影響によって、クレジットカードの付帯特典が使えなくなったことで、各カード会社が代わりのメリットを模索しているからだと考えられます。特典を使えない以上、他に魅力やメリットがないと解約されてしまうので、各カード会社は知恵を絞っているのではないでしょうか。

ポイント還元はユーザーにとっても分かりやすいですし、現状では、何らかの特典があったとしても利用できる人は少ないので、今後はポイントを重視する人が増えてくると思います。

―菊地さんが実際にメインで使っているカードを教えて下さい。

私はマイラーなので、基本的にはマイルが貯まるカード、具体的には「ANA VISAカード」などをよく使っていますね。今の時期はマイルの使い道がそれほどありませんが、有効期限は数年あります。「ANA VISAカード」であればVポイントの有効期限に加えて(ポイント有効期限は、ポイントの最終変動日(貯める、使う、交換する) から1年間自動延長)、マイル交換後の有効期限もあるので、いつか有効活用できればと思っています。

―クレジットカードを選ぶ際には、どのような点に注意すればよいでしょうか?

「ポイントが貯まりやすいカード」を選ぼうとする人が多いのですが、これは一番よくある勘違いで、「ポイントを有効活用できるカード」を選ぶことの方が、優先順位は高いです。ポイントを貯めても失効したら意味がないので、失効させずに多くのポイントを有効活用できるカードを選ぶことが重要なのです。

なので、以下の2つのステップを踏まえて、検討をすすめるのが良いのではないでしょうか?

・自分が使いやすいポイントを決める
・使いやすいポイントが、一番貯まるカードを探す

―ポイントが使いやすいカードとしては、どのようなものが挙げられますか。

Tポイント、Pontaポイント、楽天ポイント、dポイントの4大共通ポイントが使い勝手の良いポイントです。中でも、楽天ポイントが貯まる楽天カードがおすすめです。楽天カードの場合、年会費無料で、楽天市場で利用するとポイントが3倍になります。貯まったポイントの使い勝手もよいでしょう。また、リクルートカードも年会費無料でポイント還元率は1.2%。リクルートポイントをdポイントとPontaポイントの両方に交換できます。還元率が高く、ポイントの使い勝手がよいカードはこの2つですね。

他にも携帯キャリア系のカードが挙げられると思います。ポイントをあまり使わなくても、スマホ料金で消費することができるので、「自分の持っている携帯キャリアに関連するポイントが貯まるカード」を選ぶというのは選択肢の一つでしょう。

ただ、ポイントを貯める上では「100点満点」を取ろうとするのではなく、自分のできる範囲で楽しむくらいの感覚を持つことが大切だと思います。常にクレジットカードで支払う癖をつけ、さらにポイントを上乗せするために電子マネーや○○ペイなどを併用するかは、自分ができそうかで判断してください。

女性向け、ビジネスカード、ステータスカードのおすすめは?

―女性向け・女性におすすめのカードは何かありますか。

「女性向け・女性用」と謳われているカードもありますが、特典は保険に入れる程度でメリットが明確なものはそれほど多くない気がします。そのため、「女性だから『女性向けのカード』を…」というように考えないほうが良いのではないでしょうか。

例えば、働いている方であれば、「時短に繋がるカード」という切り口で「自分の時間を作りやすくなるコンシェルジュサービス付きのカード」というように、自分のニーズから探すことの方が重要だと思います。

―フリーランス・中小企業の経営者の方におすすめのビジネスカードには、どのようなものがありますか。

年会費無料でポイント還元率1.0%の「NTTファイナンスBizカード」は良いカードだと思います。年会費がかかるのは個人カードでもビジネスカードでも気になると思いますが、年会費無料で還元率が1.0%のNTTファイナンスBizカードは安心して入会できます。

ただ、個人事業主・SOHO・スタートアップの会社であれば、プラチナカードを使うという選択肢も良いと思います。仮に年会費が10万円だったとしても、経費にすればそれほど負担ではないでしょう。プラチナカードは、コンシェルジュサービスや海外の空港ラウンジの使用、接待時などに使える特典があるので、月額8000円程度で秘書を雇っているような感覚です。またプラチナカードであれば、従業員用の追加カードの年会費が無料のものも多いので、役員などに渡すことでモチベーション向上につなげることもできるでしょう。

法人になると限度額が高いカードの方が使い勝手がよいので、そうした視点からもプラチナカードがおすすめです。限度額が300~500万円といったカードもありますし、「ラグジュアリーカード」などは、デポジットしておけばデポジット内で高額決済もできます。税金を納める場合、広告費を支払う場合などにも利用できる点が魅力です。

―個人のステータスカードでおすすめはありますか。

先程お話したように、ステータスカードはコロナ禍で特典が使いにくくなっています。個人の場合は年会費を経費にすることはできないので、一度カードをしっかり使いこなせているか見直すことが大切です。ただ最近では、こうした状況に対応するためカード会社側も特典の内容を変え始めているので、事前にチェックしておいた方が良いでしょう。

例えば、スマホの画面割れなどを補償してくれる「スマホ補償」が付いているカードが増えてきています。具体的には、UCプラチナカードはスマホやタブレットなどの「通信端末修理費用保険」が付いています。

これまでプラチナカード以上はインビテーションが基本でしたが、最近では自分で申し込むことができるものも増えています。そのため仮に「今はそれほど特典を使わないから」という理由で、一度ダウングレードしたとしても再度アップデートはできると思います。

「三井住友カード(NL)」は若者におすすめ

ー最近、注目しているカードはありますか。

最近の流行として、ナンバーレスもしくはカード情報が裏面に記載されているカードがあります。これまでカード情報は表面の定位置である必要がありましたが、現在は、そうではありません。

ナンバーレスの場合、仮に落とした場合もインターネットなどで買い物をされるリスクが低くなるので、今後の主流になるのではないでしょうか。ただし、カード情報を確認する際に、SMS認証が必要になることがあるので、慣れるまでは手間に感じる方も多いでしょう。今のところ、セゾンカードと三井住友カードの2社しか発行してないですが、普及していけば主流になっていくと思います。

なかでも、三井住友カード(NL)は、対象コンビニ・飲食店のポイント還元率がスマホのタッチ決済を利用する事でポイント最大7%(※) 還元なので、若い世代におすすめです。

※スマホのVisaのタッチ決済・Mastercard®タッチ決済で支払うことが条件です。
※iD、カードの差し込み、磁気取引は対象外です。
※通常のポイントを含みます。
※商業施設内にある店舗などでは、一部ポイント付与の対象となりません。
※一定金額(原則1万円)を超えると、タッチ決済でなく、決済端末にカードを挿しお支払いただく場合がございます。その場合のお支払い分は、タッチ決済分のポイント還元の対象となりませんので、ご了承ください。上記、タッチ決済とならない金額の上限は、ご利用される店舗によって異なる場合がございます。
※ポイント還元率は利用金額に対する獲得ポイントを示したもので、ポイントの交換方法によっては、1ポイント1円相当にならない場合があります
※Google Pay™ で、Mastercard®タッチ決済はご利用いただけません。ポイント還元は受けられませんので、ご注意ください。

―その他におすすめのカードはありますか?

「ポイントは種類が多いし、複雑でよく分からない」という方は、キャッシュバック系のカードがおすすめです。P-oneカード<Standard>(JCB・Mastercard・Visa)やLikeme by saison card(Mastercard)であれば、自動的に1%オフになるので、何も考えずに1%お得になり、メリットは大きいと思います。

キャッシュバック系の中でも「大手が良い」という場合は、セゾンカードが発行している「Likeme by saison card」、三井住友カードが発行している「Booking.comカード」が有力な選択肢になるでしょう。「Booking.comカード」の場合、宿泊施設の10%オフなどを利用できるジーニアス特典などがあり、専用サイトを経由してBooking.comを利用すると6%還元になるメリットもあります。旅行好きでキャッシュバックカードが良い場合にはおすすめです。

ゴールドカードであれば、エポスゴールド・イオンゴールドなどがおすすめです。どちらも条件を達成すれば年会費が永年無料になります。エポスゴールドは、100万円の利用で1万のボーナスポイントがもらえるため、最大1.5%還元となるメリットがあります。また、イオンゴールドは100万円使うことでインビテーションを受けられるという、ハードルはありますがショッピング保険が充実しており、180日間の補償やスマホの画面割れも対象なところが良いと思いますね。