これまでの事業変遷について
冨田:初めに、設立から現在までの事業のターニングポイントについて教えてください。
サンバイオ株式会社 代表取締役社長・森敬太氏(以下、社名・氏名略):当社は脳の再生医療製品の開発と事業化に取り組んでいます。大人の脳の再生はこれまで百年来不可能と言われてきましたが、当社はこの不可能を可能に変えるチャレンジを続けてきました。その中でも、大きなターニングポイントは2つありました。
1つ目はリーマンショックの時期の出来事です。当時アメリカ当局のFDA(アメリカ食品医薬品局)に臨床試験を開始するための申請を提出したのですが、これが却下され活動がストップしてしまうという出来事がありました。さらに、同時期にリーマンショックが起こったことであらゆるベンチャー投資が止まり、資金面でも困難に直面をしました。
2つ目は2019年の「サンバイオショック」です。試験の失敗などで株価が5分の1になるという出来事がありました。この2つ以外にも何度もピンチはありましたが、その都度、新しい資金の提供先や新しい治験の方法を模索することでなんとか前進を続けてきました。
経営判断をする上で最も重視していること
冨田:そのようなご経験を重ねられた中で、大事にされてきた経営判断の基準について教えてください。
森:「どうすれば困っている患者さんに対して新薬を早く届けることができるか」を常に大切にしています。これを大切にするために、柔軟性を持って経営に取り組むことを心がけてきました。例えば、当社はアメリカで創業し事業を展開してきましたが、15年ほど前の日本の法改正によって、日本が再生医療で一番の先進国になるという出来事がありました。想定外の出来事でしたが、患者さんに薬を届けることを第一に考え当社は戦略を大きく転換し、日本を中心にグローバル展開するという意思決定をしました。このように、臨機応変に状況に対応しつつも「どうすれば患者さんに早く薬を届けられるか」にこだわって経営判断をしています。
冨田:新しい分野であるからこそ、国の法規制が変わる中で柔軟に対応し続けることが必要なんですね。
森:法規制の与える影響が大きなビジネスですし、バイオベンチャーは常にグローバルで競争することが求められる世界ですので、国ごとの方針は常に注視しています。日本でも、法規制の変更によってバイオベンチャーにとって非常に良い環境が整いつつあります。当社も脳再生の分野では、アメリカや中国、ヨーロッパのバイオベンチャーよりも先行することができています。
自社が今後関連していくテーマ
冨田:ここまで過去の話を伺ってきましたが、今後の御社のテーマについても教えてください。
森:先ほどからお伝えしてきたように、当社のテーマは一貫して「脳の再生の実現」に尽きます。20年以上経営してきて、ようやく当社が開発した新薬の最初の承認が見えてきました。まずは、日本での承認を目指しており、承認されると世界中の患者さんにとって初めての脳の再生の新薬が誕生することになります。これは世界的に見ても画期的なイベントになりますので、これを足掛かりにグローバルにも展開し、脳の再生で患者さんの助けになりたいと考えています。
思い描いている未来構想について
冨田:社長の描いている御社の未来構想についても教えてください。
森:「新しいカテゴリーを作る」ということへの挑戦を続けていきたいです。これは当社を設立するときに会長と私が掲げた目標でもあります。そのためにも、まずは「脳の再生」という新しいカテゴリーをしっかりと作り、その後も再生医療の開発や事業化で培ったノウハウを生かして新しいカテゴリーへのチャレンジを続けていきたいです。
また、マクロ的には「健康寿命を伸ばす」ことへも貢献していきたいと考えています。近年、製薬メーカーさんの努力もあって癌は治る病気になってきましたが、脳の病気はまだまだ手つかずな状況です。当社の技術を生かして、外傷性脳損傷や脳梗塞の解決に貢献していきたいと考えています。
ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言
冨田: 最後に、ZUU onlineの読者や投資家の方たちに一言メッセージをお願いします。
森: 多くの株主の皆様に支えられて当社のビジネスが継続できていますので、株主の皆様には改めて感謝を申し上げます。当社を20年以上経営してきて、ようやく最初の新薬の発表まであと少しのところに来ることができました。今後も再生医療の世界に貢献し、新薬をどんどん普及させていきたいと思っていますので、引き続き応援のほどよろしくお願いします。
- 氏名
- 森敬太(もり けいた)
- 社名
- サンバイオ株式会社
- 役職
- 代表取締役