特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

ポーターズ株式会社
(画像=ポーターズ株式会社)
西森 康二(にしもり こうじ)
ポーターズ株式会社代表取締役社長
高知県出身、大学進学に伴い、上京。社会人はリクルートにて、スタートし、ガテン事業に従事。その後、複数社を経て、有料職業紹介業に従事後、当社を創業し、代表取締役に就任
ポーターズ株式会社
「ポーターズは世界の雇用インフラを進化させる」その想いを実現すべく、現在は人材紹介会社、人材派遣会社向けのクラウドサービス「PORTERS」を提供し、日本国内トップクラスのシェアを誇る。また、AIを活用したサービスも提供している。海外展開にも積極的で、シンガポール、ベトナム、タイ、バングラデシュにグループ会社を設立やM&Aでグループ化。2001年に創業し、2022年に東京証券取引所グロース市場に上場。

目次

  1. 創業から上場までの事業変遷
  2. 今後の事業戦略や展開
  3. 御社の描く未来像

創業から上場までの事業変遷

ポーターズ株式会社
(画像=ポーターズ株式会社)

ーー創業から上場までの事業変遷について教えていただけますか?

ポーターズ株式会社 西森 康二代表取締役社長(以後敬称略):
そもそもの着想として、金融リテラシーの差と同じくシステムにも大きなリテラシー格差がありました。特に法人がシステムを導入しようとする際、システム開発会社との間には大きなギャップがあり、法人側は顧客に提供する価値を拡大させるためにシステムを活用しようと考えますが、システム提供側は要件を満たせば役割を終えたと考える傾向がありました。我々が創業した当時は、納品されたシステムが顧客の要件を満たさず、データ量が増えて動かなくなるといった問題が多くありました。

そこで、インターネット上にソフトウェアを置き、企業が購入前に試用して確認できるビジネスモデルが必要だと考えました。また、企業にとって、システムは常に進化し続けるべきです。つまり、企業が成長するにつれ、システムも進化していく必要があります。従来のシステムは、一度納品されるとカスタマイズには高額な費用がかかっていましたが、我々が提供するソフトウェアが継続的に進化し、お客様が実現したいことを自由に連携できるオープンなアーキテクチャを提供することが重要だと考えました。

この考えに基づき、人材紹介ビジネス向けのソフトウェアを提供することからスタートしました。日本の法律が緩和され、新しいプレイヤーが増えるマーケットで、我々のソフトウェアサービスを提供することで、人材マッチング産業が進化し、企業の経済活動が促進されることを目指しました。

人材業界のあり方も大きく変わってきており、正社員採用が主だったものから、業務委託や海外業務委託を活用するマネジメントサービスが登場しています。さらに、企業の特定プロセスを支援するBPOサービスも出てきました。企業が人材を獲得する仕組みは多様化しており、私たちはその多様化を支援する情報システムを提供することで、日本だけでなく様々なマーケットでのつながりを多様化させていくことにチャレンジしています。

上場を通じて更に社会的な信用力を上げることで、マネジメントレベルを向上させることが、我々にとって必要なステップだと考えています。

今後の事業戦略や展開

ーー今後の事業戦略や展開についてお伺いしたいのですが、どのような方針をお持ちでしょうか?

西森:我々の目的は変わらず、人と企業のマッチングを通じて雇用を創出し、プロジェクトや人材派遣を支援することです。特にアジアに目を向けると、人口規模が千万人を超える大都市が多く、そこでは経済の変化に伴い多様な人材サービスのニーズが生まれます。我々はアジアの主要都市をターゲットに、それぞれのマーケットの雇用支援に貢献するサービスを提供することを考えています。例えば、日本で提供している人材紹介や人材派遣向けのクラウドサービスはアジアの市場でも大きく貢献できると考えています。また、バングラデシュなどのマーケットでは、仕事情報が少なく、求人に対して非常に多くの応募がある状況です。そういった場所で社会的な問題に取り組もうと考えています。

そこに我々が持っているアセットを活用することで資本的にもよりドライブをかけていけるのでは、と考えております。特に、雇用市場の問題点に対して解決策を提供し、積極的にチャレンジしていきます。

御社の描く未来像

ーー将来的なビジョンについても伺いたいのですが、3年、5年後の未来構想はどのようなものですか?

西森:私たちの未来構想においては、既存の人材派遣や業務委託などのビジネスモデルを超え、アジア市場をはじめとする世界の労働人口に対して、システムとインフラを提供し、各マーケットの活性化を図ることが一つの柱です。さらに、データベースを活用し、新たな雇用の課題や就職の課題を解決していくことも目指しています。

また、既に存在しているビジネスモデルをただ模倣するのではなく、まだ解決されていない課題にチャレンジしていこうと考えています。特に、HRテックと呼ばれる領域にて、データを活用して業務が自動的に進む状態を作ることができるようなサービスを提供することも重要な構想の一つです。それは人材のスカウトから派遣会社へのマッチングプロセス、請求プロセスなど、多岐にわたります。

我々は現在の規模をはるかに超えて拡大していくことを考えており、そのための重要なチャレンジに取り組んでいます。製品開発や市場ごとのローカライズ、資本投資など、幅広く対策を練っています。

ーー具体的なファイナンス戦略などはありますか?

西森:製品開発はもちろん、各マーケットにローカライズするための体制を築くことが重要です。自前での拠点設立やパートナーとの提携を通じて、資本投資を進めていくつもりです。また、雇用貢献に沿ったテーマで活動している企業とのM&Aにも積極的に取り組んでいく予定です。 また、製品・サービス投資も積極的に拡大していきたいと考えています。

ーー海外展開について、国によって市場環境が異なると思いますが、その国に応じたマーケティング戦略について、どのように考えておりますか?

西森:まず、我々が直接支援しているのは、各市場におけるプレイヤー、つまり、人材と企業を結びつける法人の方々です。たとえば日本では労働力の獲得が困難になっており、転職サイトや人材紹介が浸透しています。我々は、これらの企業が事業を成立させ、事業拡大をするためにシステム面からの支援を行っています。

我々のシステムは非常に柔軟性が高く、各事業モデルに応じて形を変え、顧客に最適化して提供できるようになっています。これが我々の強みであり、レコメンドシステムにおいて、顧客にとって最良のパターンを提供できるようになることが大切だと考えています。開発には確かに多大な投資が必要ですが、それに見合う価値はあると信じています。

ーーそれは非常に重要な点ですね。AIの活用についても触れられましたが、現在のレコメンドシステムはユーザーにとって最適なものではないという課題があります。この点について、どのような改善を図っているのでしょうか?

西森:はい、その点については、人材業界においては単純なレコメンドシステムではうまく機能しないと考えています。企業は特定の条件を満たす人材を求めていますが、人材側もまた、自分に挑戦の要素がなければ動かない傾向があります。

我々が独自に開発したAIシステムは、企業が求める条件と候補者の経歴、そしてその人が描くキャリアプランを照らし合わせて双方でジャッジを入れられるようなソリューションになってきています。

また、我々は人材紹介のプレイヤーである人材紹介会社一社一社に沿ったソリューションを提供しています。そうすることで、人材紹介会社が持つ人材情報とクライアントの求人情報において、会社に蓄積された、最も良いとされるマッチングのパターンから、求職者の方に紹介ができる。それが結果的に求職者の方にも喜んでいただける。そんな好循環な状態を構築していくことができる手応えを感じつつあります。

ーー素晴らしい取り組みですね。ありがとうございます。

氏名
西森 康二(にしもり こうじ)
会社名
ポーターズ株式会社
役職
代表取締役社長