特集『令和IPO企業トップに聞く~経済激変時代における「上場ストーリーと事業戦略」』では、令和以降に新規上場された経営者にインタビューを実施。 上場までの思いや今後の事業戦略、思い描いている未来構想について各社の取り組みを紹介する。今回は株式会社ジィ・シィ企画 矢ヶ部代表にお話を伺った。

企業名アイキャッチ
(画像=株式会社ジィ・シィ企画)
矢ヶ部 啓一(やかべ けいいち)
株式会社ジィ・シィ企画 代表取締役社長
佐賀県唐津市出身。セイコーグループのセイコーシステム株式会社(現セイコーソリューションズ株式会社)において上司であったジィ・シィ企画の創業者(現会長)金子哲司より誘いを受けて入社。2016年4月に代表取締役社長に就任。
2021年9月に東証マザーズ(現:グロース)に上場。
1995年9月にカード会社加盟店向けの決済パッケージシステムを開発販売する事業を目的に創業。
自社開発のキャッシュレス決済パッケージソフト「CARD CREW PLUS」を基盤に決済システムのワンストップサービス事業を展開。
長年キャッシュレスシステムに携わってきたノウハウを元にお客様のお困りごとに応えるソリューションをご提供しております。

創業から現在に至るまでの事業変遷

ーー創業から現在に至るまでの事業変遷について教えていただけますでしょうか。

株式会社ジィ・シィ企画 代表取締役社長・矢ヶ部 啓一氏(以下、社名・氏名略):

会長の金子が1995年にソフトウェアの開発会社として創業しました。金子会長と私は前職で上司と部下の関係にありました。創業当初より前職で経験したキャッシュレスシステムの需要が高く、私たちもキャッシュレス分野の知見が1番あったので、システムをパッケージにして販売していました。

しかし、キャッシュレスはセキュリティをはじめとして、非常にクリティカルな処理が多いので、お客様自身で運用するのが大変でした。そこで、2002年から私たちはお客様のニーズに応えられるように、クラウド型のサービスを提供することで、当社のストックの売上を伸ばしてきました。

そして、2016年4月に金子会長の体調があまり思わしくなかったこともあり、私が代表を引き継ぎました。私が代表を引き継いだ後、創業当初からあった「上場したい」という会長の強い思いとキャッシュレス分野を国策として国が進めるという追い風に乗って、2021年に上場しました。

事業内容、強み

ーー事業内容と強みについて教えてください。

矢ヶ部:キャッシュレス決済のシステムを開発し、カード会社加盟店へご提供しています。また、自社開発のキャッシュレス決済パッケージソフトを基盤に事業展開を行い、決済ASPサービスを展開しています。 自社開発製品があることにより自由度の高いカスタマイズが可能であることから、お客様のご要望に応じた対応を行ってきたことや、自社内で開発~運用までをワンストップで対応することにより蓄積されるノウハウを元にお客様のお困りごとにお応えすることでお客様との信頼関係を構築してきたことは当社の強みであると考えています。

上場に至った背景や思い

ーー次に、激動の時代の中で上場を果たした貴社の上場に至った背景や思いについて教えていただけますでしょうか。

矢ヶ部: 私たちは、事業拡大のために、お客様からの信用度を高めることと事業投資の資金を集めることを目的として上場しました。私たちがキャッシュレスに特化するようになってからメインのお客様は、ドラッグストア、コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどの量販店が多くなり、お客様から今まで以上に信用が求められるようになりました。 さらに、将来のことを考えるとキャッシュレスシステムというのは幅が広いので、製品やサービスへの事業投資が重要になってきます。

私たちは、上場を活用して、お客様からの信用を高め、事業投資に必要な資金を調達することで、さらなる事業の拡大を目指しています。

思い描く未来構想

ーー矢ヶ部代表が思い描かれている未来構想や事業戦略を教えていただけますでしょうか。

矢ヶ部: 私たちはこれから複数の戦略を軸に事業を展開していきます。 戦略の中からピックアップしてご説明します。

1つ目は、マーケットターゲットの拡大です。 私たちの今のメインターゲットは、中規模・大規模の企業ですが、これを小規模の個店にも広げていきたいと考えています。ただ、個店のマーケットはかなり成熟しているため、直接営業するのではなく、カード会社とアライアンスを組みながら入り込んでいきたいと考えています。

企業名アイキャッチ
(画像=株式会社ジィ・シィ企画)
企業名アイキャッチ
(画像=株式会社ジィ・シィ企画)

2つ目は、国際ブランド決済ネットワーク接続サービスの推進です。 現状、カード会社や決済事業者には国から手数料の引き下げやインターチェンジフィーの開示などの圧力がかかっており、収益確保が難しくなっています。さらに、日本の決済ネットワークはオリジナリティが高く、海外には日本とは別のVisaやMastercardのような国際ブランドのネットワークサービスがあります。そこで、私たちは国際ブランドのネットワークサービスを加盟店が直接使えるようにすることによって、カード会社や加盟店への収益性の向上につながると思っています。

3つ目は、マルチ決済端末のサブスク型販売です。 これまでは、キャッシュレスのシステムを利用するという側面に限定していましたが、今後は決済端末を必要とするお店にハードウェアを含むマルチ決済端末をサブスクリプション型で販売していきます。

企業名アイキャッチ
(画像=株式会社ジィ・シィ企画)

4つ目は、健康経営アプリ『NUCADOCO』を活用した健康経営サポートサービスの推進です。『NUCADOCO』は健康管理とアバターを組み合わせたスマートフォンアプリです。決済・キャッシュレス市場の競合が増えている中で、キャッシュレスだけに頼るのは厳しいと感じています。関係ない事業を立ち上げるのは大変ですが、会社の中で新しい発想を生み出すためにも、全く違うことにもチャレンジしていきたいと考えています。

企業名アイキャッチ
(画像=株式会社ジィ・シィ企画)

ファイナンスにおける課題や重点テーマ

ーー次に、金融・経済市場において、貴社または代表ご自身のファイナンスにおける課題や重点テーマを教えていただけますでしょうか。

矢ヶ部: 私たちは、スピーディーに成長していくために、他社とのアライアンスや資本提携を進めていきます。 私たちがメインの市場としているキャッシュレス市場というのは、今後成長が期待されているため、新規で今まで参入していなかった他分野の事業者の流入がかなり増えています。

私たちが単独でやっていくと成長に時間がかかってしまうので、他社に負けないためにも、成長スピードを上げる必要があると思っています。成長を加速させるために、私たちのことを十分に理解し、パフォーマンスが発揮できるような企業と手を組んで成長していきたいと思っています。

読者へのメッセージ

ーー最後に、ZUU onlineの読者に向けたメッセージをお願いいたします。

矢ヶ部: 私たちは、消費者の方やキャッシュレスの加盟店のみなさまが一層安心してご利用いただけるキャッシュレスの世界を目指していくので、みなさまにご支援いただければと思っています。

私たちの会社の成り立ちや役員の構成からすると、すごく優秀な人間が集まっているわけではないですが、全員がお客様のために一生懸命やるという非常に強い気持ちを持っています。

私たちは、お客様のために一生懸命やることで、何とか上場を果たすところまで頑張ってきた会社です。決してスマートな会社ではないかもしれませんが、応援してくださる株主様がいらっしゃいましたら、是非注目していただきたいと思っています。

氏名
矢ヶ部 啓一(やかべ けいいち)
会社名
株式会社ジィ・シィ企画
役職
代表取締役社長