株式会社エフピコ
(画像=株式会社エフピコ)
西村 公子(にしむら きみこ)
株式会社エフピコ 常務取締役 総務人事本部管掌 (兼)特例子会社・就労継続支援A型事業管掌 (兼)法務・コンプライアンス統括室管掌 (兼)サステナビリティ推進室管掌 2014年入社。
株式会社エフピコ
(画像=株式会社エフピコ)
株式会社エフピコ
1962年に広島県福山市で創業。食品売り場に並ぶ生鮮食料品や惣菜、弁当などに使われている食品トレー・容器のナンバーワンメーカーです。原料調達から生産、販売、物流、使用済み製品のリサイクルまでのバリューチェーンを形成し、豊かな食生活の創造と持続可能な社会構築のために役割を果たしています。2022年には初めての海外進出として、LSSPI社(マレーシア)に出資しました。また、障がいのある人材の雇用をはじめとした多様な人材の活躍を推進することを通じて新たな価値創造に挑戦し続けるグループでもあります。

目次

  1. ダイバーシティ経営に対する取り組み
  2. ダイバーシティ経営の取り組みで苦労した点と、乗り越えるための施策
  3. 取り組みを行う前後の変化や取り組み後の反響
  4. 従業員の価値(人的資本)向上に向けて取り組んでいることやこれから取り組もうと思っていること
  5. 理想とする組織像と従業員への期待について

ダイバーシティ経営に対する取り組み

2022年11月1日に、「エフピコグループの最大の資産は“人材”であり、人材の採用から教育、活用、そして退職に至るまで、一人ひとりが個性を発揮できる『人づくり』の仕組みの強化を通じて、やりがいと充実感ある職業人生の実現と組織の一層の活性化を推進し、企業グループ全体の価値向上の道を進む」というトップメッセージを明確にしました。 この人材育成方針の下、弊社では障がいのある人材をはじめ、女性、外国籍社員の採用、シニア層、LGBTQの方など多様な人材が活躍するダイバーシティ&インクルージョン経営を目指しています。

女性の活躍については、2023年9月には厚生労働省から、えるぼし認定の2段階目を受けることができました。また多文化共生の観点から外国籍社員の採用も増えており、シニア層に対しては、2021年4月に65歳までの選択式定年延長制度を導入し活躍の場を広げています。さらに、LGBTQの方に対しても、人権方針において性的指向や性自認による差別を禁止し、昨年は全社に対する研修も行いました。

特に、障がいのある人材の雇用については、1986年から積極的に取り組んできました。現在、民間企業の障害者法定雇用率は2.3%ですが、私たちのグループでは12.5%です。なぜ私たちがこれまで障がいのある人材の雇用に積極的に取り組んできたのかというと、基幹業務で障がいのある人材が不可欠な戦力となっているからです。例えば私たちが行うリサイクル事業では、ベルトコンベアで流れてくる使用済みの食品トレーを障がいのある人材が手選別で白、色柄もの、リサイクルに適さないものに分けています。機械による選別よりも障がいのある人材の手選別の方が、生産性が高いのです。また折箱という容器の組立製造においても障がいのある人材が丁寧に一生懸命に取り組んで高品質の製品を製造しています。 このように、障がいのある人材が行っている仕事は、グループの存続と発展に必要不可欠なのです。

弊社グループの障がい者雇用のコンセプトは、「経営として成り立つ障がい者雇用を行う」ことです。法定雇用率があるからではなく、企業の売上や利益にとって必要な存在として障がいのある人材をとらえ、一人ひとりが能力を十分発揮して企業の経営にプラスになるようになってもらうような雇用を進めています。

ダイバーシティ経営の取り組みで苦労した点と、乗り越えるための施策

一人ひとりの能力発揮を目指すダイバーシティについては、次のような取り組みを行ってきました。

1つ目は、女性の管理職比率の向上です。 17年ほど前には、女性管理職候補者に対する研修を実施し、一気に管理職クラスの人数を増やすという取り組みを行いました。一人や二人ではなく、多くの人が昇格し、責任を持って仕事を進めるようにしました。チャレンジングな施策でしたが、その結果今では、女性管理職比率は、製造業平均は4.9%であるのに対し、弊社では10%です。これはえるぼし認定を受けた際に評価された点でもあります。

2つ目は、男性の育児休暇義務化と小学3年生までの短時間勤務を可能にしたことです。 弊社グループでは、昨年連続5日間(暦日では1週間)の男性の育児休暇を義務化しました。工場、物流等の現場がある弊社グループにおいては、この制度の導入には非常に勇気が必要でした。現場の社員からは一人でも欠けると困るという声もあがりましたが、「コロナで1週間休んだと思えば同じ」と考え方を変え、1週間連続で休んでもらっています。もちろん、この1週間は給与も支払っています。義務化は1週間だけですが、もちろんその後の1ヶ月や2ヶ月などの長期の育児休業の取得へと発展していくことを期待しています。たとえ1週間だけであっても、子供が小さい時の素晴らしさや辛さ、大変さ、喜びを体験する良い機会にしていただきたいと思っています。

また、女性社員の育児休業後の復帰率はほぼ100%に近いのですが、復帰後、ワークライフバランスを保った働き方ができるようにすることが重要と考えています。このため、法定では3歳までの短時間勤務について、お子さんが小学校3年生になるまで可能にし、子供を持つ親が働きやすい環境を整えています。

3つ目は評価制度の改正です。 長期間にわたるキャリアについてその自律的な形成を促進するために、評価システムは抜本的に見直しました。外部の知見も活用し一から制度を見直し、1年以上の時間をかけて仕上げました。 新しい評価システムでは、成果貢献評価と役割発揮評価の二つに分け、半期ごとに成果貢献を評価するとともに、1年に1回、資格ごとのポジションで求められる役割発揮を評価します。その際に重要なのは、目標設定の時から上司と部下とのコミュニケーションを行い、評価も話し合いながら行うという、コミュニケーションを重視したことです。 目標設定の段階から自分はどうなりたいかという部分を上司と話し合って目標を決め、目標通りに達成できたかどうかを評価します。目標を上回った成果を上げた場合は、さらに上位の評価を行います。このような制度を通して、一人ひとりの自律的なキャリア形成を後押しできるようにしています。

取り組みを行う前後の変化や取り組み後の反響

えるぼし認定をはじめ外部の認定を頂くことについては、認定を頂くことも重要ではありますが、より重要なのは認定取得に向けたプロセスだと考えています。外部の認定を目指すことにより、どのような取り組みが求められているかが定量的な指標で示され、企業として改善すべき点が見えてきます。出てきた課題をコツコツと改善していくことで、次の新しい目標が見え、そこに向かって前進していくことで、より働きやすい環境に近付くというサイクルが重要です。えるぼし認定では、次の段階である3段階目、さらにプラチナランクの取得を目指したいですね。 女性活躍について私たちの目下の課題は、総合職における女性比率や平均勤続年数の長さです。総合職の女性の採用を増やし、離職を防ぐことが必要と考え、取組を進めていきます。

また、評価制度の改革については、従来は自分がどのような評価を受けているかすら分からない職場もあったと聞いていますが、コミュニケーションを重視することで、自分が良い評価を得るためにどのような行動が求められるかが明確になり、それに対しどのように取り組むかを考えるようになってきています。上司も部下の想いをしっかりと受け止めてほしいですね。運用を始めてからも改善点は常に出てきます。例えば上司が部下の自律的なキャリアを支援できるような研修が必要なのではないか、などです。制度が導入されてから3年目になりますが、まだ発展途上であると捉えています。

従業員の価値(人的資本)向上に向けて取り組んでいることやこれから取り組もうと思っていること

私たちが特に力を入れていることは健康経営です。弊社は2022年と2023年の2年連続で大規模法人部門の優良法人に選ばれましたが、夢はもっと大きく、グループ全体でホワイト500に選出されることを目指しています。

ただ、これは容易なことではありませんので、日々さまざまな仕掛けを作っています。 例えば東海道五十三次ウォークラリーは、今年2回開催して好評でした。第1回目は5月の1ヶ月間、第2回目は10~11月の2ヶ月間、グループ会社対抗で日本橋から京都三条までを平均歩数で競うというイベントです。参加者はお互いの頑張りを感じることができ、コミュニケーションも活発化し、一体感が生まれました。

他にも健康に関するセミナーや体力測定など、従業員の健康を向上させる取り組みを行っています。社員がより健康になり、やりがいをもって仕事に取り組んでいける企業を目指しています。

また、ハラスメントに関しては、甘く見てはいけない問題だと認識し、全社員に対してハラスメント防止研修を実施しています。管理職と非管理職それぞれに対応した研修を行い、ハラスメントは絶対に許されないということを徹底しています。

社員が心身ともに健康で、元気に働き続けられる会社を目指し、具体的な取り組みを少しずつ実行しています。

理想とする組織像と従業員への期待について

組織において大切なことは、風土を作っていくことだと考えています。 具体的には、「人の本質は皆同じである」ということを理解し、多様な人を受け入れられるような組織風土を作りたいと考えています。 ダイバーシティは多様性を意味しますが、それだけでは不十分で、インクルージョンが必要です。多様性を認めつつ、相手を尊重し、皆で緩やかに大きな目標に向かって進むことが大切です。その目標に向かって進む際、障がいの有無やLGBTQ、性別、国籍、年齢などの違いはあまり関係ないのです。

また、障がいのある人材と働くことによるメリットや大変だった点についてよく聞かれますが、人間同士の関係をメリットやデメリットという観点でとらえるのは不適切だと私は考えています。現場で働いている人に聞いてみるとわかるかと思いますが、障がいのある人材と一緒に働いてみると、障がいのある人材は障がいのない人材と比べて特別な存在ではありません。障がいの有無に関係なくグループにとって必要な仕事をしている、価値ある存在であると認識することで、相互にリスペクトする関係になります。 これは人間としての本質は皆同じだということを裏付けていると思います。

一人ひとりが違う存在なのです。その違いは違いとして受け入れ、全ての人に対してリスペクトしあう職場を作っていきたいと考えています。

氏名
西村 公子(にしむら きみこ)
会社名
株式会社エフピコ
役職
常務取締役 総務人事本部管掌
(兼)特例子会社・就労継続支援A型事業管掌
(兼)法務・コンプライアンス統括室管掌
(兼)サステナビリティ推進室管掌