大阪大学大学院医学研究科博士課程修了。睡眠と疲労医学研究の第一人者であり、これまで大阪市立大学疲労医学講座等の特任教授を歴任。2003年より産学官連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者に就任。2009年に、エコナビスタを設立し、医科学根拠に基づいた健康で快適な空間・環境を創造するホームシステムコントロールの開発に着手。2017年より現職。
目次
これまでの事業変遷について
弊社を設立した2009年の時点で私は大阪市立大学(現、大阪公立大学)で教授を務めており、疲労と睡眠の研究を行っていました。当時、自宅にホームコントロールシステムを導入するきっかけがあり、その際に疲労医学と快適性が実は表裏一体であることに気づきました。戦後、寿命が伸びている最大の理由は、環境が良くなり快適性が増したことです。そこで私は、住空間の快適性を高めるホームコントロールシステムの開発を目指し、起業しました。センサーを活用して生体情報を取得しアウトプットを行うことで、常に快適な状況を作ることを目指しました。また、私が得意とする、生体情報から疲労度を読み取り、それに合わせて空調や照明のコントロールを行うことも目指しました。
創業から5年ほど経った後に、認知症を患っていた私の父親が深夜に不慮の事故でなくなる不幸が起こり、結果的に母親が一人で過ごすことになったため、実家に見守りシステムを導入したいと考えました。しかし当時の見守りシステムは、「24時間トイレが利用されなかったらメールが届く」「ボタンを押したら連絡が届く」などといった、言わば助ける気のないシステムでしかありませんでした。それでは母親を救うことはできないと感じ、本当に意味のあるシステムを私自身で開発することを決心し、コストは二の次に、まずは開発に取り組みました。母親自身が手間をかけることなく、見守られていることを意識することもなく、自然に見守ることができるシステムがないかを徹底的に考えました。小さなオフィスで数人で検討することから始め、介護施設へ訪問し、何度も試していただき、議論を重ね、改良を繰り返しました。これが「ライフリズムナビ+Dr.」の原型となっています。
その後、会社は順調に成長しましたが、私自身は2017年に古くからの友人であった現社長の渡邉に経営を引き継いでいます。実は元々私は起業家気質で、どちらかというと経営者に向いていないことは自覚しておりました。その点、渡邉は人材のマネージメントや経営戦略構築において非常に卓越した能力を持っており、安心して経営を預けることができています。
上場を目指された経緯について
創業当初より、社員を鼓舞するために「上場を目指そう!」という夢を語りあい、事業を推進してきましたが、特に見守りシステムの事業を開始してからは、上場に対する思いが強くなりました。というのも、見守りシステムを通じて収集しているビッグデータは、10年20年といった長い期間データを収集することによってより精度が高まり、真に価値を発揮するものとなります。ですので、上場によって会社の信頼性を強固にし、永続的な経営をしていくことが不可欠だと考えていました。
過去にぶつかった壁とそれをどう乗り越えたのかについて
弊社の祖業であったホームコントロールシステムは照明器具やエアコンを動かすシステムで、言ってしまえば誤作動があったとしても命を失うことはありません。しかし、見守りシステムは10,000分の一の誤作動でも命に関わる可能性が全くないとは言い切れません。そのため、見守りシステムは開発段階から、24時間365日高い精度と信頼性が求められ、そのプレッシャーは非常に強かったです。しかし、常にお客様のご意見に耳を傾け、課題解決に貢献し続けることで、大きな社会課題を捉え、多くの企業様と提携することができました。またその課題解決を共に進めてくれる優秀な社員とも巡り合えました。それらが重なり、思っていた以上のスピードで技術を進歩させ、サービスを伸ばすことができました。
思い描いている未来構想や目指す世界観について
まず、「ライフリズムナビ+Dr.」に関しては、「介護施設での利用」から「在宅での利用」へと利用ケースを広げていくことが第一段階です。言語的な制約がないため、海外展開を見据えて取り組んで行きたいと考えています。さらに、見守りを超えた枠での活用も推進していきたいです。今後の大きなテーマとして、今持っているデータをどう活用していくかという点があります。見守りシステムを通じて24時間365日収集してきたデータから「どのような生活をすれば長生きできるか」逆に「逆にどのような生活を送っている人が危険か」などがわかる可能性もあると思います。これらの活用はこれからの社会に大きく貢献することにもなります。健康に関しては個人個人の情報が非常に大切で、例えば、その人の健康的で最も良いとされる睡眠時間というのは、その人の元気だった時の睡眠時間を見なければわかりません。人によっては最適な睡眠時間が6時間だったり、8時間だったりします。長期的にデータを蓄積することによって、初めて個々人にとっての最適なデータとして活用が可能になります。
次世代の経営者へメッセージ
私は普段、大学生に対してよく授業を行っているのですが、彼らに常に伝えていることは、世の中にある不安や不満というのは、人類が誕生して以来、常に人類が抱えてきたものだということです。どんなに文化や技術が発展しても、人は何かに不安や不満を抱えており、そこにビジネスチャンスがあります。私たちが行っているビジネスも、不安や不満の解消、不快感を快適なものに変えるといったことを目指しています。これは絶対に揺るがない人間の本能の部分なので、不安、不満、不快感を解消するビジネスを展開することが重要です。そうすることで、永久に存在し続けるビジネスを作り上げることができると思います。
ZUU onlineユーザーやその他の投資家へ一言
私たちのビジネスは今後の日本社会にとって大きく貢献することができると信じています。一人でも多くの方が安心して生活を送れるように、日々、研究開発を行ってまいります。株主の皆様には、私たちのサポーターとして、これからもご支援をお願いしたく思います。私たちの持っているデータを社会への貢献に繋げていきたいと思っています。引き続き応援をよろしくお願いします。
- 氏名
- 梶本 修身(かじもとおさみ)
- 会社名
- エコナビスタ株式会社
- 役職
- 取締役会長