特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

ペットゴー株式会社
(画像=ペットゴー株式会社)
黒澤 弘(くろさわ ひろし)――ペットゴー株式会社代表取締役
1971年06月 忠犬ハチ公の生まれ故郷である秋田県大館市に生まれる
1994年03月 中央大学経済学部 卒業
1994年04月 住友商事㈱入社
2000年04月 McKinsey&Company入社
2004年11月 ペットゴー㈱設立 代表取締役就任(現任)
2017年05月 ペットゴープロダクツ㈱代表取締役就任(現任)
ペットゴー株式会社
「ハッピーペットライフ・ハッピーワールド」のスローガンのもと、「ペットのQOL向上」をビジョンとし、「テクノロジーを駆使して犬猫の健康寿命を最大化」していくことをミッションとするペットヘルスケア企業。ペットヘルスケア×デジタルを事業ドメインとし、ペットヘルスケア通販サイト「ペットゴー(petgo.jp)」を運営。膨大な量の付加価値の高いペットデータを活用し、独自のペットヘルスケアD2Cブランド「ベッツワン(VETSOne)」 を展開しています。ペットゴーは、「ハッピーペットライフ・ハッピーワールド」を実現するため、動物福祉(Animal welfare)とESGを軸とした経営に注力し、SDGsもふまえ、企業の持続的成長を図るとともに、経営基盤の強化に継続的に取り組んでいます。

目次

  1. 創業から上場までの事業変遷、上場の目的
  2. ペット市場の概要やペットゴーのポジショニング
  3. 今後の事業戦略や展望
  4. ZUU onlineのユーザーに一言

創業から上場までの事業変遷、上場の目的

ペットゴー株式会社
(画像=ペットゴー株式会社)

――まずは、ペットゴーがどのような会社なのかについてご紹介ください。

ペットゴー株式会社代表取締役・黒澤 弘氏(以下、社名・氏名略)

当社はペット向けのサービスを提供する企業です。ペットの中でも主に市場の大部分を占めている犬と猫に特化しています。 「ハッピーペットライフ・ハッピーワールド~ペットライフを幸せに・世の中を幸せに」というスローガンを掲げ、ペットの平均寿命が約16年という非常に短い期間の中で飼い主さんとできるだけ長く幸せな時間を一緒に過ごせるように、テクノロジーを駆使したサービスで健康寿命そのものを最大化することを目指しています。 創業は19年前で、来年には20年目に突入します。現在、社員数は52名で、売上は100億円を超えてきています。事業内容としては、ペットのヘルスケアに焦点を当て、食事療法食や動物用薬品、サプリメント、デンタルケア商品などを取り扱っています。これらはペットの健康に貢献する商品で、大手メーカーの商品を取り扱うとともに、自社でも独自の製品を開発しています。また、私たちはシステム化を徹底しており、通販・Eコマースというビジネスモデルにおいて、仕入れからお客様の手元に届くまで、かなり長いサプライチェーンがありますが、そのプロセスをシステムでつなぎ、自動化の強化を進めています。また、販売経路についても、自社サイトだけでなく、楽天やAmazonなど11店舗まで拡大しています。そのオペレーションもシステムで自動化・効率化を図っているが故に、この人数でこの売上規模を実現できていると考えています。

―立ち上げるきっかけは何だったんですか?

黒澤:そもそも私の出身地が秋田県大館市という、ハチ公のふるさとで、家族が日雑の卸問屋を営んでいました。そこでは日用品からペットフードまで様々な商品を扱っており、人々の生活を支える事業を見ながら育ってきた背景があります。また、学生時代にはボランティア活動に積極的に取り組んでおり、社会に貢献することに強い思いを持っていました。その思いは変わらず、常に社会的に弱い立場の人々を支えたいと考えており、ペットもまた社会的に弱い立場であると感じていました。「社会的に必要と言われるペットであるが、社会的に弱い立場でもある。そんなペットを人生をかけて支えたい。」そう思ってこの会社を立ち上げました。

―そこからの変遷はいかがでしょうか。

黒澤:2004年に立ち上げた当社ですが、大きな転機が2008年に訪れます。それまでは一般的なペット用品などを販売していたのですが、2008年に動物病院を買収したことにより、動物用医薬品や食事療法食などを取り扱うようになりました。つまり、現在の原型であるペットヘルスケア進出のきっかけになったということです。そこからぐんぐんと成長を続け、2020年には独自ブランドを開発し、昨年にグロース市場に上場しました。

ペット市場の概要やペットゴーのポジショニング

――国内ペット市場とペットゴーのポジションをどのようにお考えでしょうか。

黒澤:はい、日本では犬猫の数が子供の数を上回るほどになっています。特に猫は最近のブームにより飼育数が増加しています。また、ペットの平均寿命も延びており、それに伴い疾患のリスクも高まっています。また、1世帯あたりのペット関連消費額も、特にペットフードやペット用品が主に伸びています。国内ペット関連市場規模は、2022年時点で1.7兆円程度まで継続的に拡大してきており、不況に強い市場として知られています。 この市場下において、現在私たちは、ペットフードや用品といった「モノ市場(約9000億円超)」、その中でも「ペットヘルスケア(約2300億円と推定)」というところにスポットをあて、サービス展開をしています。 「モノ市場」の約7割をペットフード市場が占め、ペットフードにはエコノミーからプレミアム、食事療法食まで様々なセグメントがあります。当社はインターネットを通じて、より付加価値の高いプレミアムや食事療法食などの高品質なプロダクトを提供しようと試みています。

――ペットゴーの強みと特徴について伺えますか?

黒澤:まず当社のポジショニングをご説明します。 当社は、オンラインでペットヘルスケア商品を中心に提供しています。従来のペットショップがリアルな店舗で一般的なペット用品やフードを扱うのに対し、当社は健康に特化した商品をインターネットを通じて販売しています。また、大手オンラインモールにも出店していますが、独自のユニークな商品を提供することで差別化を図っています。

次に強みとなるペットデータとDXプラットフォームについてご紹介します。 ペットデータについてですが、当社は創業期から膨大なペットデータ、例えばペットの種類、犬種や猫種、ライフステージ(年齢)、性別、疾患等のデータを蓄積してきています。これにより、お客様のペットに合わせた商品開発・提供を実現したり、また自社のマーケティングや分析などを有利に進めたりすることができます。 次にDXプラットフォームについてですが、私たちは自社の基幹システムであるDXプラットフォームを通じて、店舗運営から物流管理まですべてシステム化しています。 それが故に、冒頭の会社紹介でもお話いたしました、自動化・効率化を図り、収益性を向上させることができています。

続いて、当社の特徴についてですが、大きく3つの特徴があります。

ペットゴー株式会社
(画像=ペットゴー株式会社)

1つ目が「マルチコマース」です。自社でエンジニアを抱えていることから、複数のオンラインプラットフォームで店舗を展開しています。これにより、累計230万人を超えるユニークな顧客基盤を築き、多くのアワードも受賞しています。

ペットゴー株式会社
(画像=ペットゴー株式会社)

2つ目が「サブスクコマース」です。現在のところ大手の通販サイトにはペットヘルスケア商品の定期購入の機能がないか、あっても十分ではありません。当社の定期購入の機能は、現在は自社サイトでのみ取り扱っていますが、いつでもキャンセルやスキップができるのでお客様からも非常に多くの好評のお声をいただいています。

ペットゴー株式会社
(画像=ペットゴー株式会社)

3つ目が独自D2Cブランドの「VETSOne(ベッツワン)」です。日本のペットヘルスケア市場は特殊で、食事療法食をはじめ多くのペットヘルスケア商品の供給を、アメリカやヨーロッパからのナショナルブランド商品の輸入に依存しています。しかし、日本は地理的にアメリカやヨーロッパから遠く離れているため、海外メーカーに依存すると供給量が限られ、欠品のリスクを抱えていました。欠品が頻発し、サブスクリプションサービスにも影響を及ぼすこともありました。そこで、自社ブランドを立ち上げることにしたということです。開発においてもペットデータを活用し、徹底的に分析し、お客様のニーズに合わせた商品開発を行っています。

今後の事業戦略や展望

――今後のペットゴーの事業展望や戦略について、もう少し詳しく伺ってもよろしいでしょうか。

黒澤:日本人は真面目で、軽々しくペットを購入することは少なく、また、殺処分の数もかなり減少してきている傾向にあります。故に市場としては安定しているという特徴があります。しかし、原材料費や為替の影響でペットフードの価格が上昇していますし、私たちも19年間で初めて、ペットフードの価格が約30%も上がるという事態に直面しています。

そういう状況でもペットフードのブランドやランクを下げるわけにはいかないため、また、先程も提示いたしましたが、ペットへの消費額は増えているということから、高価な商品へのシフトが進んでおり、マーケットは今後も拡大していく方向にあると考えています。

――モノからサービスへ展開していくおつもりでしょうか。

黒澤:言い方が難しいですが、ペットフードもサブスクリプションサービスに組み込まれていたりと、そもそも商品とサービスの境界がなくなりつつあると思っています。私たちはペットフードの会社ではなく、テクノロジーの会社として、犬猫の日常生活を向上させる商品やサービスを提供し続ける企業として有り続けたいと考えていますし、研究と投資を現在も続けています。

――具体的な話ですが、顧客獲得コスト(CAC)戦略について教えていただけますか?

黒澤:確かに、広告や販促投資は積極的に行っています。特にサブスクコマースとD2Cブランドがうまく機能しています。サブスクコマースは、初回購入いただくためには広告宣伝費をかける必要がありますが、購入を継続していただくことでその後の広告宣伝費は不要になります。従って、サブスクリプションの比率を高めることによって、コスト効率を上げることが可能です。さらにナショナルブランドだけではなく、自社のD2Cブランド商品の構成比を高めることで、粗利率の向上も図っていこうと思っています。

――商品開発やデータ活用が重要になってくると思いますし、そのための開発費用や人材確保にもコストがかかります。AIやIoTを駆使したり、M&Aによって効率的な投資回収を行っていかれると思うのですが、このあたりのお考えを伺わせてください。

黒澤:これまでニッチな市場での活動が中心でしたが、今後はより広範な市場への挑戦が必要です。解約率を抑えつつ、どのようにビジネスを展開していくかが、現在最も注力・調整を要する点と認識しています。 当社は、ブランド開発に非常に多くの投資をしています。これは、製品の品質を確保するために不可欠だと考えているからです。しかし、製品開発コストは、当社と製造パートナーであるOEM工場とで分担していますので、そこまで過大なコスト負荷にはならないようなモデルで進めています。今後もこのブランド開発に、重点的に投資をしていきたいと考えています。

M&Aについては常に注目していますが、なかなか適切な企業様を見つけるのは難しいと考えています。今は、パートナーシップを探すところに注力しているところです。

ZUU onlineのユーザーに一言

――最後に読者に向けて一言お願いできますか?

黒澤:私達は、ペットのために、サービスを止めてはいけないし、潰れてはいけないという使命感で日々邁進しています。逆に目先の利益を追うと長くは続かないと思っています。 これから10年、20年後も引き続き堅調に大きくしていきたいと思っていますので、長い目で見守っていただきたいと考えています。 引き続き、よろしくお願いいたします。

氏名
黒澤 弘(くろさわ ひろし)
社名
ペットゴー株式会社
役職
代表取締役