全国のショッピングモールを中心に約350店舗を展開し、40社以上の保険会社から最適なプランを提案する国内最大級の保険ショップ「保険見直し本舗」。累計120万人超の家計に寄り添ってきました。

舵を取るのは、2023年に株式会社保険見直し本舗グループ 代表取締役社長 グループCEOに就任した臼井朋貴氏。メガバンクやネット銀行の最前線で「徹底した顧客主義」を貫いてきた氏は、「保険業界は数十年に一度と言われる激動の渦中にある」と強調します。

その変革の旗印として掲げるのが、業界のクリーンアップと、AIを駆使したデジタル戦略、そして血の通った対面コンサルティングの融合です。保険の枠を超えた「ライフサポートプラットフォーム」を構築し、人生100年時代を生きる人々の安心を支え抜く──。そんな臼井氏の覚悟と、業界の未来を塗り替える青写真を訊きました。

今回お話をお伺いした方
臼井 朋貴(うすい ともき)氏
株式会社保険見直し本舗グループ 代表取締役社長 グループCEO
1968年大阪府生まれ。1991年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。住信SBIネット銀行執行役員、auじぶん銀行代表取締役社長等を歴任し、金融DXと顧客目線のサービス構築を牽引。2023年保険見直し本舗グループ代表取締役社長就任。KKR傘下においてグループ5社のシナジー最大化と、人生100年時代を支えるプラットフォーム構築を推進する。好きな言葉は「迷ったら前に出る」。

「売り手都合」からの脱却!保険代理店業界の変革

――臼井社長が就任されてから約2年が経過しました。まずは現在の保険業界・代理店業界を取り巻く環境や課題をどのように捉えておりますか。

臼井朋貴氏(以下、臼井氏):保険業界は今、「地殻変動」の真っ只中にあります。特に、私たちが属する乗合代理店業界においては、これまでの制度や慣行の中に、時代の変化に伴って見直すべき課題が売り彫りになってきました。その核心にあるのが、「便宜供与」「出向者問題」、そして「比較推奨の形骸化」という三つの本質的な問題です。

本来、我々の役割は数ある保険会社の商品の中から、専門的な知見を持って、お客様のご意向に合致する選択肢を提案することにあります。しかし、自省の念をもってこれまでの業界全体の実態を振り返ると、"お客様本位の業務運営"が徹底されていたとは言い切れない側面もあったのではないかと感じています。

――そのような背景には、どのような構造的な難しさがあったとお考えでしょうか。

臼井氏:代理店と保険会社の協力関係のあり方には、常に「より良くしていくための課題」があると感じています。

例えば、お客様に複数の選択肢を提示する際、本来は「お客様のご意向」が唯一の基準であるべきです。しかし、組織としての運営や保険会社との連携が進む中で、意図せずとも特定の基準が優先されやすくなるような、仕組み上の難しさがありました。

「多くの選択肢から選べる」という私たちの強みを、いかに透明性を持って維持し、お客様に対してフラットな視点を保ち続けるか。

こうした「当たり前」とされる仕組みを一つひとつ丁寧に見つめ直し、今の時代にお客様が真に求めている「誠実な相談の場」を、改めて築き上げていくことが私たちの責任だと考えています。

――そこまで徹底して自律的な姿勢を追求されるのは、やはりお客様から寄せられる信頼の重さを感じていらっしゃるからでしょうか。

臼井氏:お客様は「自分に合った保険を選んでくれる」と信じて来店されるのに、説明の仕方や選択肢の提示が店側の事情に左右されることがあれば、それは決してお客様本位とは言えません。こうした「売り手都合」のビジネスモデルが限界を迎え、今改めて、より高い透明性と、本来あるべき「誠実さ」が厳格に問われているのだと認識しています。

臼井 朋貴社長

業界を健全に支える「共通基盤モデル」への挑戦

――2025年、貴グループの株主が世界的な投資ファンドであるKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)へと変わりました。この大きな変化を、今後の業界再編の中でどう位置づけていますか。

臼井氏:KKRの参画は、極めて大きな意味を持ちます。彼らはグローバルで最高峰のガバナンス基準を持つパートナーです。目指しているのは単なる規模の拡大ではなく、先にふれた「業界の歪み」を正し、健全な業界へと作り変えることにあります。

ただ、この健全化を徹底しようとすれば、現場には多大な負担がかかります。商談記録の厳格な管理やモニタリングなど、いわば「正しい運営のためのコスト」が跳ね上がるからです。全国に350店舗を持つ我々でさえ相応の覚悟が必要なこの重圧に、地域の中小代理店が独力で耐え続けるのは、現実的に見て極めて困難でしょう。

――現実的には、そうした体制を維持できない中小の代理店が淘汰される可能性がありますね。

臼井氏:はい。ルールを遵守したくても体制維持が経営を圧迫し、事業の継続が困難な状況に陥る代理店が出てくるかもしれません。しかし、地域で長く愛され、お客様と深い信頼を築いてきた代理店が消えてしまうのは社会的な損失です。

そこで、KKRというパートナーの存在が大きな意味を持ちます。彼らは世界的な投資ファンドであり、持続的な成長に向けた基盤づくりを共に進められる存在です。単なる買収を積み重ねるのではなく、そうした代理店を、私たちのグループに迎えて、成長をバックアップすることで価値を高めていくこともできます。

独力では維持が難しい「堅牢なガバナンス」や「最新のITシステム」を、私たちのプラットフォームを通じて共有し、バックアップする。現地の経営者の意向や独立性を尊重しながら、共通の基準のもとで安定的に事業を継続していくロールアップ型のアプローチです。

これはお客様がどの店舗を訪れても「公正な比較推奨」を受けられる世界を創るための変革ともいえます。健全な形で規模を拡大し、古い慣習を打破していく。そうした取り組みを積み重ねることで、将来的には"リーディングカンパニー"としての役割を担える存在へと成長していきたいと考えています。

リアル店舗(ショップ)は全国に約350店舗展開中

目指すは「お金にまつわるコンビニ」というライフサポートプラットフォーム

――新ビジョンとして「ライフサポートプラットフォーマー」を掲げておられます。保険という一点に留まらない、その多角的なビジョンの本質はどこにあるのでしょうか。

臼井氏:そもそも、お客様の人生を「保険」という断片だけで捉えること自体、提供者側の都合に偏っていたのではないかと感じています。生活の現場には、住宅ローン、教育資金、介護、相続、そして健康維持といった課題が複雑に絡み合い、すべて地続きに存在しているからです。しかし従来の保険代理店は、あくまで保険という「点」でしかお客様と接してきませんでした。私は、このあり方を根本から変えていきたい。

目指しているのは、いわば「お金にまつわるコンビニ」です。かつて商店街の各専門店に散らばっていた買い物がコンビニ一つに集約され、生活が一変したように、保険ショップも「保険の用がある時だけ行く場所」から、困りごとがあればポッと立ち寄れる「地域の生活インフラ」へと進化すべきだと考えています。

――「人生100年を安心して幸せに暮らしていけるためのサービスを提供する」というミッションにも通じますね。

臼井氏:はい。お客様の「人生100年」を真に支えるためには、足りないピースを埋める必要があります。すでに事業として展開している住宅ローンや介護相談に加え、今後は遺言・相続、不動産活用、さらには「未病」段階でのヘルスケア領域にも踏み込んでいきます。

また、新NISAを背景に関心が高まっている「資産形成」も欠かせない要素です。「何から始めればいいか分からない」という不安に対し、対面ならではの安心感を持ってワンストップで応えられる体制を整えていきます。

一足飛びにはいきませんが、お金に関する専門サービスを一つの窓口に集約し、ライフステージに合わせた最適な提案を差し上げる。気づけば生活のあらゆる困りごとを解決してくれるパートナーになっている。それが、私たちが具現化しようとしている「ライフサポートプラットフォーマー」の全容です。

銀行時代の大失敗が教えてくれた「顧客目線」の重要性

――臼井社長は常に「顧客目線」を経営の最優先事項に据えておられます。その考え方の原点はどこにあるのでしょうか。

臼井氏:私のキャリアの原点は都市銀行にありますが、そこで経験した「組織の論理」と「お客様のニーズ」の乖離(かいり)が、今の私の土台になっています。当時はどうしても、お客様に何を提供するかよりも、組織として「いかに効率的に収益を上げるか」という事業者側の視点が先行しがちな環境でした。

象徴的だったのは、インターネットの黎明期に携わった金融/ECポータルサイトの構築プロジェクトです。巨額の予算が投じられましたが、その設計思想は利用者の実態から離れたものでした。例えば「情報の閲覧自体を有料化する」といった、当時のマーケット感覚では受け入れがたい論理が、組織内では大真面目に議論されていたのです。お客様にとっての利便性よりも自社の収益モデルを優先してしまった結果、そのサービスが市場から支持を得ることはできませんでした。

――その経験は、臼井社長にどのような教訓を残しましたか。

臼井氏:多くの時間と資金を費やしながらも、顧客のニーズを置き去りにしたビジネスがいかに脆(もろ)いものであるか。あの時に感じた強い危機感は、私の経営者としての骨格となりました。

その後、別の金融機関の立ち上げに参画した際、私はこの教訓を徹底的に活かしました。「お客様はどの瞬間に不安を感じるのか」「真に求めている利便性は何か」を問い続け、改善を繰り返した結果、多くのお客様に支持されるサービスへと成長させることができました。こうした「失敗」と「成功」の両面を経験したことが、「主語は常にお客様である」という私の哲学の裏付けとなっています。

――その哲学を、現在の保険見直し本舗グループの組織運営にどう浸透させていますか。

臼井氏:まず私自身が現場に対して、「『売る』という言葉を使うのはやめよう」と繰り返し伝えています。私たちの存在意義は保険を販売することではなく、お客様が人生を安心して歩めるための「サービス」を提供することにあります。保険はそのためのツールに過ぎないということを、徹底して意識させています。

目の前の手数料を稼ぐために「売る」ことに執着すると、お客様の信頼を失うだけでなく、無理な提案を強いられる現場のスタッフもプロとしての誇りを失い、疲弊してしまいます。自分の仕事に誇りを持てなければ、良いサービスは提供できません。逆に、お客様に真に満足していただくことが、「自分は誰かの役に立っている」という実感を生み、結果として社員自身の働きがいにつながるのです。

私は「CS(顧客満足)」と「ES(従業員満足)」は常にセットで考えていますが、この両者が高め合うサイクルを回すことこそが、経営の役割だと確信します。

400席体制でコールセンターを運営している。

2000人の組織を「挑戦」と「DX」で塗り替える

――現在、グループ全体で2000人を超える組織となりました。多様なバックグラウンドを持つ社員たちに対し、どのようにビジョンを共有し、組織としての活力を最大化させているのでしょうか。

臼井氏:私が社長に就任した当初、最大の課題だと感じたのは、グループ5社が完全に「分断」されていたことです。各社が個別の採算を追うあまり横の連携が機能しておらず、時には反目し合うことさえありました。

そこでまず取り組んだのが、徹底した対話による意識改革です。現場の冷ややかな空気を変えるべく、自ら足を運んで幹部と議論を重ね、全社員への経営方針説明会を実施しました。

さらに、新たに掲げたのが、新しく定義した「挑戦・団結・誇り・顧客目線」の4つのバリューです。1足す1を3にも5にもするためには、これまでの成功体験にとらわれず、グループ一体となってシナジーを生み出すための「挑戦」が必要だと説き続けました。

――具体的に、どのような仕組みを取り入れたのでしょうか。

臼井氏:象徴的な事例は、店舗(保険見直し本舗)とコールセンター(ニュートン・フィナンシャル・コンサルティング)を連携したことです。保険見直し本舗は新規獲得に長けていますが、保有する膨大な顧客データが活かされず、アフターフォローが手薄という弱点がありました。一方で、コールセンターは非対面での深いコミュニケーションと、定期的なアプローチのプロです。

そこで私は、店舗側にコールセンターの精鋭によるCRM(顧客関係管理)を専門に行うチームを組成しました。眠っていた顧客リストにコールセンターの知見を掛け合わせ、メンテナンスの機会を創出したのです。その結果、二次的な相談アポイント数は従来の3倍以上に跳ね上がりました。まさに、バリューの一つである「団結」が形になった事例と言えます。

――組織の連携で人の力を最大化させる一方で、御社はテクノロジーの活用においても業界で一歩抜きん出ている印象です。その意図はどこにあるのでしょうか。

臼井氏:私たちのDXは、単なる効率化ではありません。人間のコンサルティング能力を最大化させるためのITです。

例えば、店頭にあるパンフレットラックの前にお客様が5秒間留まったら記録を開始する、AIカメラを導入しています。スタッフがお声掛けできなかった、機会損失のタイミングを把握することができ、要因の分析や、管理者による指導が可能となります。

さらに、AIによる商談の文字起こしや要約システムも活用しています。これは現場の事務負担を減らすだけでなく、コンプライアンス上の不備を自動で検知することにも役立ちます。テクノロジーで「ムリ・ムダ」を徹底して排除し、そこで浮いた時間を「お客様を理解し、寄り添う」という、AIには代替不可能な高付加価値業務に全振りする。これこそが、私の考えるデジタル戦略の極意です。

人生100年時代の社会をサポートする「インフラ」へ!

――保険代理店という業態は、今後どのような社会的使命を背負っていくべきだとお考えですか。

臼井氏:私たちが目指す「ライフサポートプラットフォーマー」という概念を、自社グループの成長を目的としたものだけに留めておくつもりはありません。目指しているのは、社会全体の「お金と健康」を守るための、オープンで強靭なインフラストラクチャーとしての存在です。

その具体的な展開の一つが、「エンベデッド・ファイナンス(組込型金融)」の流れを保険領域へと発展させた「エンベデッド・インシュアランス(組込型保険)」の構想です。今多くの非金融企業が顧客接点の強化を目的とした金融サービスの提供を模索していますが、そこには高い専門性とコンプライアンスのリスクがつきまといます。

ならば、我々が培ってきた350店舗のオペレーションノウハウ、堅牢なシステム、専門人材というインフラを、それらの企業にプラットフォームとして開放し、BaaS(Banking as a Service)ならぬ「IaaS(Insurance as a Service)」として提供していく。そうすることで、地域や属性を問わず、あらゆる国民が質の高い保障とサービスにリーチできるようになります。

――そのプラットフォームの先には、どのような未来を見据えておられるのでしょうか。

臼井氏:私たちが最終的に解決したいのは、今の日本が直面している社会課題そのものです。例えば、地方の空き家問題や高齢化問題といった課題は、一企業や既存の縦割りサービスだけでは到底解決できません。

しかし、全国に根を張る私たちの店舗やパートナーのネットワークは、地域住民の切実な声が集まる「センサー」でもあります。IaaSとして私たちの機能を地域インフラに組み込んでいただければ、例えば住宅ローンの相談から空き家の兆候をいち早く察知したり、ヘルスケア領域での接点を通じて独居高齢者の異変に気づいたりすることが可能になります。

保険という枠を飛び越え、地域社会の「セーフティネット」としての役割を担っていく。これこそが、私たちが目指すライフサポートプラットフォーマーの真の価値だと考えています。

――臼井社長が「プラットフォームの構築」にこだわるモチベーションは何なのでしょうか。

臼井氏「お金があって幸せになれるかは分からないが、お金があれば防げる不幸は確実に存在する」。これが、私が金融の現場で向き合ってきた実感です。不測の事態が起きたとき、経済的な基盤さえあれば救われる家族や、守れる未来はあります。しかし現在の日本の金融・保険環境は、その「守るための手段」に誰もが平等、かつ正しくリーチできる状態にあるとは言い切れません。それを変えることこそが、金融の世界に身を置いてきた私の使命だと思っています。

目指すのは、お客様が「人生100年」という長い航路を歩むための羅針盤となる場所です。保険ショップを単なる窓口から、人々の人生に寄り添い、不幸を未然に防ぐ「人生のインフラ」へと進化させていく。

お客様が、そして社員が、私たちのプラットフォームを通じて「将来への安心」を実感したとき、初めて私たちの存在意義が証明されるのだと考えています。その高みを目指し、私はこれからも「挑戦」の手を緩めるつもりはありません。「このプラットフォームがあって本当に良かった」――そう言っていただける未来を創るために、これからも一歩も妥協することなく、挑戦し続けていきます。

今回お話を伺った企業
株式会社保険見直し本舗グループ
この記事のインタビュアー
竹澤 佳
著者NET MONEY編集部 編集長
詳細はこちら 立教大学大学院修了。流通業界専門の出版社で編集長を務めた後、IT企業のメディア部門に転職。現在は金融ジャンルに特化し、クレジットカード・カードローン・証券などの取材、編集執筆に従事。与信審査や金融商品比較など専門性の高いテーマを多数手がける。自身でも5枚のクレジットカードを使い分け、暗号資産・株式投資・外貨投資で資産運用中。

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