BANZAI税理士事務所様_伴氏画像
(画像:NET MONEY編集部)

「税理士に相談したいけれど、なんだか敷居が高そう」「専門用語ばかりで”お固い”イメージがある」。

そんな悩みを抱える若手経営者やフリーランスの不安を、「徹底した敷居の低さ」と、ITを活用した「圧倒的な効率化」で解消しているのが、愛知県西尾市のBANZAI税理士事務所です。

人口約17万人の地方都市(愛知県西尾市)に拠点を置きながらも、全国から若手事業主の顧問依頼や監修依頼が集まる同事務所。代表の伴 洋太郎(ばん・ようたろう)氏は、クラウド会計やスキャナーの無償貸し出しなどを駆使し、経理の事務作業を「10分の1以下」にまで圧縮した事例も持つ、“攻めの税理士”。

旧来型の「固い税理士像」を刷新するブランディングや、地域密着とIT活用を両立させた独自の取り組み、そして「安心のよりどころ」を目指す今後のビジョンについて伺いました。

今回お話をお伺いした方
伴 洋太郎(ばん ようたろう)氏
BANZAI税理士事務所 代表
税理士、1級ファイナンシャルプランニング技能士、freee会計上級エキスパート
大学卒業後、一般企業や税理士事務所での勤務を経て税理士試験に合格。個人事業主や中小法人を対象とした税務・会計業務の経験が豊富で、業務のデジタル化支援やスモールビジネスの立ち上げ、個人事業の法人化などを多数サポート。
著書「7日でマスター フリーランス・個人事業主の確定申告がおもしろいくらいわかる本」(ソーテック社)
事務所HP:https://ban-tax.com/
事務所Instagram:https://www.instagram.com/banzai_tax/

税理士を志した理由と、西尾市で開業したワケ

――まずは、これまでのご経歴と、税理士を目指された理由を教えてください。

伴 洋太郎氏(以下、伴氏):大学を卒業した後、最初は一般の事業会社に就職して、現場の業務改善など、経営企画に近い仕事をしていました。けれども、当時の仕事は正直そこまで好きになれなかったので、「難しい国家資格に挑戦してみよう」と思い出会ったのが税理士でした。「経営者の伴走役になれる」という触れ込みに惹かれて、「よし、税理士を目指そう」と決めました。

――働きながらの挑戦は相当大変だったのではないでしょうか。

伴氏:フルタイムで仕事をしていたので、平日に勉強できる時間は1日1時間ほどでした。そのぶん土日は1日6~7時間ぐらい勉強しましたね。前職との関連性はまったくなく、活かせる経験もほぼゼロ。完全にゼロからのスタートでした。

――資格取得後、地元である愛知県西尾市での開業を決めた理由を教えてください。

伴氏:「地元を離れる気がなかった」からです(笑)。家族も地元に住んでいて、とにかく西尾が居心地よかったんです。

西尾市は合併を経て人口17万人弱の市で、全国的に見れば市場規模は小さいほうです。ただ、裏を返すと、強力なライバルとなる事務所もあまり多くありません。「自分が飛び込めば独自の価値を出せる、唯一無二に近い存在になれる」と感じました。

市場が小さいからこそ、差別化しやすい。そこに魅力を感じて、西尾で開業しました。

BANZAI税理士事務所

画像:BANZAI税理士事務所

「固い・怖そう」な税理士像を壊すブランディング戦略

――BANZAI税理士事務所の公式サイトを拝見しましたが、「税理士っぽくない」というか、とてもフランクで相談しやすい印象があります。

伴氏:既存の税理士事務所って、「堅そう」「怖そう」「敷居が高そう」というイメージのところが多いんですよね。SNSやブログで情報発信していないケースも多くて、外からは中身がまったく見えない。

そこで、「敷居が低い」「相談しやすそう」「フランクな感じがする」という印象を、あえて前面に出そうと考えました。公式サイトやSNSでは、事務所の雰囲気や考え方ができるだけ透けて見えるように、デザインや文章を工夫しています。

ブランディングとデザインをお願いした会社さんには、「税理士という職業でこれをやったら怒られるんじゃないか、と思うくらい攻めた案をください」とお願いしたんです(笑)。その結果が、今の少しポップで「税理士っぽくない」世界観につながっています。

――コンセプトを言語化するとどんな感じになりますか?

伴氏:「相談しやすそう」「敷居が低そう」と感じてもらうこと。そして、見た瞬間0.1秒で「この事務所、ちょっと特殊だな」と思ってもらうことです。

万人受けを狙うというよりは、「この雰囲気が好きな人には深く刺さるけれど、合わない人には“ちょっと嫌だな”と思われる」くらい振り切ろうと決めました。結果的に、「刺さる人には刺さる」ブランディングになったと思います。

BANZAI税理士事務所HP

BANZAI税理士事務所HP

画像引用:BANZAI税理士事務所HP

若手事業主が抱える税務の悩みと、BANZAIの顧客像

――実際に開業されて、どのようなお客様が多いのでしょうか。

伴氏:新規で顧問契約をいただくお客様の大半が「初めて税理士を探す方」です。年齢層でいうと30~40代の若手事業主がボリュームゾーンですね。

フリーランスや、立ち上げたばかりの法人の経営者の方が多くて、「これから事業をスケールさせたい」という意欲的な方が非常に多いです。60代以上の顧問先はほとんどいません。うちの打ち出し方的にも、ご高齢の方には旧来型の「しっかりした先生」のほうが安心、ということもあると思います。

――顧問契約に至るまでのパターンには、どのようなものがありますか。

伴氏:大きく2パターンあります。1つは「開業したばかりで税金のことがよくわからないし、苦手なので最初から任せたい」というケース。もう1つは、「最初は税理士に頼むとお金がかかるから自分でやっていたけれど、事業が忙しくなり、もう自分でやる余裕がなくなってきたので任せたい」というケースです。

――お客様の地域性はいかがでしょうか。

伴氏:地元・愛知県西尾市を中心に、愛知県内のお客様が約7割です。残りの3割は完全オンラインでつながっている遠方のお客様で、一番遠いのは沖縄や石川の方、過去には韓国のお客様ともお仕事をさせていただいたことがあります。

また弊所では、顧問契約のほかに単発相談サービスというものもご用意しており、顧問契約を前提としないスポット相談も承っております。相談内容としては、「確定申告書を自分で作ってみたけれど、自信がないのでチェックしてほしい」というものが多いですね。

ほかには、「会社員の副業で想定以上に収入が出たが、申告が必要か」「投資や仮想通貨で利益が出たが、税金はどうなるのか」といった、副業や投資まわりのご相談も単発相談サービスではよくいただきます。

コミュニケーションと効率化で「経理10分の1」を実現

――他の税理士事務所からの「切り替え案件」では、お客様はどのような不満をお持ちなのでしょうか。

伴氏:意外かもしれませんが、「専門性」よりも「コミュニケーション」に関する不満が圧倒的に多いです。

よく聞くのは、例えば次のような声ですね。「契約時だけ税理士が出てきて、その後は職員任せで、税理士本人と話す機会がない」「決算を締めてから、納税期限直前になって「税金はこれだけです」といきなり知らされる」「資料はすべて紙ベースで、郵送や持ち込みが必要。電話も多く、細かい指示が多すぎて本業が圧迫される」。

特に3つ目の「非効率さ」は深刻で、事例としては、アパレルの製造販売をされているお客様のケースが印象に残っています。その方は当時、個人事業主としてご夫婦とアシスタントの少人数で事業をされていましたが、税理士事務所側から指示される経理に関する事務作業が多すぎて、「経営に集中できない」と悩んでいらっしゃいました。

――そのお客様には、どのような提案をされたのでしょうか。

伴氏:まず「やるべき作業とやらなくていい作業」を整理して、本当に必要な経理業務に絞り込みました。そのうえで、クラウドツールなどを導入して、できるだけ自動化・省力化できるように提案しました。

結果として、お客様の体感では「経理にかかる事務作業量が10分の1以下になった」と言っていただけました。その後、その事業を法人化して、現在では年商2億円規模にまで成長されています。

――効率化の面では、ITやツールの活用も積極的にされていると伺いました。

伴氏特徴的な取り組みのひとつが、「スキャナーの無償貸し出し」です。多くの税理士事務所では、経費の領収書や通帳のコピーなどを「毎月郵送してください」「事務所まで持ってきてください」とお願いするスタイルがまだ主流です。僕が以前勤めていた事務所もそうで、とにかく紙ベースのやりとりが前提で、「非効率だな」とずっと感じていました。

そこで当事務所では、お客様にスキャナーを買っていただくのではなく、私どもがスキャナーを用意してお客様の事務所に設置します。スキャンした資料が自動的にGoogle Driveにアップロードされ、そこから会計ソフトに取り込まれるところまで、すべてこちらで設定します。

お客様は、こちらが指定した資料を「スキャンするだけ」でOKです。紙がほとんど出ない業種のお客様であれば、完全オンラインで完結できますし、紙が多い建設業・製造業などでは、現地に伺ってスキャナーを設置・設定する「現地現物」の対応を行っています。ここは、地元密着だからこそできる強みですね。

税務顧問と相続税申告、二本柱で事務所経営を安定化

――BANZAI税理士事務所は、税務顧問だけでなく相続税申告にも力を入れていると伺いました。その理由を教えてください。

伴氏:理由は大きく2つあります。1つ目は、事務所経営の観点です。税務顧問は「ストック収入(継続的な収入)」ですが、相続税申告は「フロー収入(単発でまとまった報酬)」です。この2つをバランスよく持つことで、事務所の収益構造を安定させたいと考えています。

2つ目は、相続の仕事そのもののやりがいです。相続案件は一つひとつ形になっていく実感があり、相続人の方から感謝していただける場面も多いんです。税務顧問とはまた別のモチベーションになりますね。

売上の内訳としては、税務顧問にまつわるものが7割、相続税申告が3割程度で推移しています(年によって変動あり)。

――地元密着だからこそ、相続でも強みを発揮できる場面はありますか。

伴氏:相続で対象になるのは、多くの場合「地元の不動産」です。そうした案件では、現地に行って写真を撮ったり、距離を測ったり、役所に足を運んで「役所調査」を行ったりと、現地現物での対応が非常に重要です。

地域に根ざした事務所だからこそ、こうした細かな調査を迅速に行える。結果として、より精密な財産評価ができる点は、大きな強みだと考えています。

BANZAI税理士事務所HP

画像引用:BANZAI税理士事務所HP

情報発信とSEO、そして「安心のよりどころ」へ

――情報発信という点でも、ブログやSNS、書籍の執筆、メディア監修など、非常に積極的に取り組まれています。その背景を教えてください。

伴氏:開業当初は、仕事もそこまで多くなかったので(笑)、事務所サイトのブログに自分で記事を書いて発信していました。それがきっかけとなって、少しずつ有償の執筆依頼が増え、さまざまなメディアに寄稿するようになりました。

その後、執筆業務は工数が大きくなってきたので少し抑えるようにしたところ、今度は商業出版の話をいただき、フリーランス向けの確定申告本を出すことになりました。現在は、自分で本文を書くというよりも、記事監修のご依頼をいただくことが多いです。つい最近も、大手ネット証券会社さんの確定申告特集記事について、構成案の確認と監修を担当しました。

――監修を依頼されるきっかけは、どのあたりにあるとお考えですか。

伴氏:おそらく、「税理士 監修」などのキーワードで検索していただいたり、過去に監修した記事のクレジットを見ていただいたりして、ご依頼をいただいているのだと思います。

また、複数のオウンドメディアを運用している会社さんから継続的に声をかけていただけるようになったのも大きいですね。

SEO(検索エンジン最適化)的な話でいえば、監修者としてクレジットをいただく際に、事務所サイトへの被リンクを張っていただくことを条件にしているので、その積み重ねが当事務所のドメインパワーを育ててくれているのかもしれません。

――SNSの活用についても教えてください。

伴氏:X(旧Twitter)は、ほぼ趣味アカウントに近いですね(笑)。メインの情報発信はInstagramで、以前は「事務所の中の人が見える」日常的な投稿をスタッフも巻き込んで行っていました。

最近は、より相続案件を増やしていきたいという狙いから、Instagramのアカウントを「相続専門」に方向転換しました。コンサルや一部代行をお願いして、見せ方や運用の仕方もガラッと変えたところです。ホームページの世界観と違和感がないようにしつつ、「見た目の敷居の低さ」はそのまま保つように心がけています。

――今後、事業を発展させていくうえで、どのようなビジョンをお持ちでしょうか。

伴氏当事務所が大切にしているのは、「まずはどんな相談でも、最初の窓口として選んでもらえる存在でありたい」というスタンスです。

税金や相続、経営課題など、お客様が苦手とする部分は専門家である私たちに任せていただき、お客様ご自身には本来注力すべき「得意な領域」に集中してもらいたい。そのために、私が目指しているのは「安心のよりどころ」です。「あの税理士がついてくれているから安心だ」「何か不安なことがあれば、まず伴さんに相談しよう」と思ってもらえる、敷居の低い、頼れるパートナーであり続けたいですね。

――インタビューを通じて、「敷居の低さ」と「圧倒的な効率化」で旧来の税理士像を塗り替える、BANZAI税理士事務所の挑戦と情熱が伝わってきました。苦手な経理や税務は専門家に任せ、経営者が本来の強みに集中できる環境をつくる——そのスタンスこそ、真の“伴走者”のあり方なのだと感じます。

今回お話を伺った企業
BANZAI税理士事務所
  • 所在地:愛知県西尾市今川町仲屋敷48-2 ムシカ事務所D号
  • 公式サイト:https://ban-tax.com//
この記事のインタビュアー
竹澤 佳
著者NET MONEY編集部 編集長
詳細はこちら 立教大学大学院修了。流通業界専門の出版社で編集長を務めた後、IT企業のメディア部門に転職。現在は金融ジャンルに特化し、クレジットカード・カードローン・証券などの取材、編集執筆に従事。与信審査や金融商品比較など専門性の高いテーマを多数手がける。自身でも5枚のクレジットカードを使い分け、暗号資産・株式投資・外貨投資で資産運用中。

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