特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

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(画像=株式会社シーユーシー)
濵口 慶太(はまぐち けいた)――代表取締役
大学卒業後、株式会社リクルートに入社。人材領域の広告営業からキャリアをスタートし、財務マネジメント、ネット事業責任者を経て、2008年に企業再生ファンドに入社。半導体メーカーや旅館、乳製品メーカーなどの経営再建を手掛ける。2014年、エムスリードクターサポート株式会社(現・株式会社シーユーシー)を創業。
株式会社シーユーシーと国内連結子会社14社、海外連結子会社23社からなるグループ企業です(2024年3月末時点)。グループのミッションとして「医療という希望を創る。」を掲げ、さまざまな医療課題の解決に向けて、国内外の医療機関の経営支援やホスピス・居宅訪問看護など多角的な事業を展開しています。

目次

  1. 上場を目指された背景や思い
  2. 今後の事業戦略や展望
  3. 今後のファイナンス計画
  4. ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

ーーまず、貴社の創業の背景について教えてください。

株式会社シーユーシー 代表取締役・濵口 慶太氏(以下、社名・氏名略):私が40歳の時に、シーユーシーを起業しました。それまでは新卒で入社したリクルートで20代を過ごし、30代になって企業再生ファンドであるジェイ・ウィル・パートナーズに転職したのちに現在に至っています。創業前から事業を通じて社会にインパクトを与えたいという思いがあり、起業を決意しました。

ーー医療業界に目を向けたきっかけは何でしょうか?

濵口:2点あります。1点目は医療業界が抱える問題の大きさです。創業前から、医療介護業界の中で高齢化問題と社会保障費の膨張は大きな問題だと感じていました。高齢化問題によって、医療現場の負担はより大きくなり、社会保障費の膨張によっては医療従事者だけでなく税負担を負う労働従事者の負担も増す一方です。その現実から目を背け続けると、負担を負うのは私たちの子供達の世代になります。しかし、長年大きな変化はなく課題は残り続けていました。誰かがこの巨大な課題の解決に、本気で取り組む必要があると考えたのです。

株式会社シーユーシー
(画像=株式会社シーユーシー)

2点目は成長性です。私は入社2社目の企業再生ファンドにいた際に、リーマンショックと東日本大震災を経験しています。多くの企業が影響を受ける中、医療の分野は大きな影響を受けていないことに気づきました。さらに、在宅医療や訪問看護にはニーズがあっても、整備が追いついていません。こうした、安定した需要と未整備な業界の状況、そしてこれからの高齢化の未来に、医療業界の成長性の高さを確信しました。

上場を目指された背景や思い

ーー上場を目指された背景にはどのような思いがあったのでしょうか?

濵口:シーユーシーの親会社はエムスリーという日本最大級の医療従事者専用サイト「m3.com」などを運営している企業です。シーユーシーとして独立した形で事業を推進していくために上場を目指しました。結果的に大企業の資本を借りて事業を伸ばして上場するスイングバイIPOに近い形となりました。 エムスリーは高マージンなITサービスがメインであり、特に製薬メーカーの法人を対象顧客としています。一方でシーユーシーは資本のかかるホスピス事業や、労働集約的な事業を複数展開しており、ITサービスに比べるとマージンは低いものになっています。

このように医療という分野では同じものの、事業の根本は異なっているため、自分たちで事業を推進していこうと決めました。そして創業から9年、売上が350億を超え、利益もしっかりと出ているタイミングで上場を決めました。

今後の事業戦略や展望

ーー今後の事業戦略を教えてください。

濵口:最終的には、個々人が住み慣れた住まいで、命をまっとうできる社会にしていきたいと思っています。たとえ余命が短いとしても、患者さんは残された時間を自分らしい姿で生き続けたいと思うでしょう。現状では病院で亡くなることが通常ですが、生まれることと亡くなることは自然の節理であるため、これまでの生活環境で迎えられることがベストだと考えます。そのためできる限り最後まで残された時間を有意義に過ごしていただけるよう、住まいのような安心できる空間で命を引き取ることができる社会を目指しています。

病院では社会の高齢化や人材不足によって、医療依存度の高い患者を抱えることが難しくなっています。現在は医療依存度の高い高齢者を抱えることができる老人ホームは少ないため、そのような高齢者でも受け入れられるホスピス型住宅を全国に増やし、病を抱える患者様にとって自分らしい時間を過ごせるような場を増やしていきたいと思っています。

株式会社シーユーシー
(画像=株式会社シーユーシー)

また、海外展開も進めており、足元ではアメリカへ進出しています。これまでは、2019年にベトナムとインドネシアに進出しています。まずは事業規模が小さい中でインパクトを発揮できる地として最適だった新興国、その中でも成長できると考えた2カ国を選びました。今後アメリカでの事業拡大を目指す理由としては、テクノロジーとヘルスケアの分野で進んでいるからです。その他の国も検討していましたが、現代のカントリーリスク等を考慮してアメリカを選択しています。

ーーなぜ海外進出を目指しているのでしょうか?

濵口:シーユーシーは「医療という希望を創る。」というミッションを掲げており、医療に対して負の要素があることは全て解決するということを目指しています。その使命に基づけば、日本だけに止まっている理由はありません。また国内だけで行っているとガラパゴス化してしまうリスクもあります。医療の標準化という意味でも、海外に進出することでより多くの事例を集め、属人化しない医療提供につながります。一番は医療課題の解決にあり、常により良いサービスを提供し続けるためにも海外進出を目指しています。

株式会社シーユーシー
(画像=株式会社シーユーシー)

今後のファイナンス計画

ーー今後のファイナンス計画について教えてください。

濵口:今後の調達は基本的にローンを検討しており、特にホスピスの建築に投資をしていきます。これまで営業キャッシュフローも十分でており、それに加えてIPOで調達した資金を当て、足りない部分をローンで賄っていきたいと考えています。

ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

ーーZUU onlineのユーザーに向けて一言お願いします。

濵口:シーユーシーはこれからも成長していく会社です。創業当時と比べれば大きくスケールすることができ、事業も成長しています。しかし、日本の医療、そして世界の医療に目を向けても解決すべき問題はたくさんあります。日本には、高齢化と社会保障費の増大の問題があり、世界には医療の基盤が整っておらず、救える命に手を差し伸べられない問題を抱える地域がいくつも存在しております。そんな問題と向き合い、「医療という希望を創る。」というミッションに基づいた事業を続けていきたいと思います。これからは、世界でも認知される企業になっていくつもりです。決して派手さのあるビジネスではありませんが、今後も医療を通じて世界に希望を届けられる企業を目指していきますので、これからも応援のほどよろしくお願いいたします。

株式会社シーユーシー
(画像=株式会社シーユーシー)
氏名
濵口 慶太(はまぐち けいた)
社名
株式会社シーユーシー
役職
代表取締役