NISAは開始当初から「非課税」が強調されてきた。もちろん、この「非課税」は投資家にとって大きなメリットである。しかし、NISAにはデメリットや注意しなければならない点もある。特に非課税期間は最長5年と定められており、この5年の期間の終了時は要注意だ。
目次
- NISA(ニーサ)とは?(概要とメリット)
- 見過ごされやすいNISAのデメリット
- NISA口座は1年ごとに変更できる
- 金融機関変更のメリット:投資できる商品の幅が広がる
- 各ネット証券会社のNISAの特徴比較
- 金融機関を変更するための手順
- NISAからつみたてNISAに変更するための手順
- 金融機関変更のデメリット:ロールオーバーできなくなる
- 口座変更は1年ごとに可能 自分に合った金融機関を選ぶ
- 実際に証券口座を開設する
- NISAのメリットは?
- 5年後に非課税期間が終了するとどうなる?
- 最長5年の非課税期間が終了したときの選択肢
- 非課税期間終了時のロールオーバーとは?
- 課税口座に移管するとは?
- 手続きが煩雑なNISA
- 損失したのに税金を払う必要がある?NISA最大のデメリット
- デメリットも理解したうえでNISAを利用しよう
- NISA口座を扱っているネット証券比較表
NISA(ニーサ)とは?(概要とメリット)
2014年1月から始まったNISA(ニーサ)とは「少額投資非課税制度」の愛称であり、文字通り毎年120万円までの少額投資に対して、そこから得られる利益は非課税となる制度である。具体的には、公募株式投資信託や上場株式(以下、株式等)に投資をした場合に得られる配当・分配金や譲渡益には、その取得から最長5年間は所得税・住民税[所得税:15%、住民税:5%、復興特別所得税:所得税額の2.1%(合計20.315%)]が課されない。
売却で利益が出ても、配当等を受け取っても、非課税になるのはNISAの最大の特徴であり、投資家から見ても大きなメリットだ。証券会社や銀行も、この「非課税」という特徴を前面に押し出してキャンペーンを行ってきた。「非課税」やそれに伴う金融機関のキャンペーンに惹かれて、NISAの口座開設手続きを踏んだ投資家も少なくないはずだ。
見過ごされやすいNISAのデメリット
「非課税」というメリットが強調された一方で、NISAのデメリットについて、認識している投資家は多くない。NISAに関する説明資料等には、デメリットについても説明されているが、文字が小さかったり目立たない位置に説明されていたりするケースがある。
一方、投資家側から考えても、非課税であれば何も損することはないと感じるため、仮にデメリットの説明を聞いたり読んだりしても見過ごすかもしれない。しかし、NISAには確かにデメリットが存在する。場合によっては損失が発生したにもかかわらず課税されることさえも生じ得る。
投資限度額は年間120万円
NISAの非課税投資枠は1年あたり120万円である。そのため、個別株投資を検討している場合は注意が必要だ。50万円の株式3銘柄に投資したい場合、2銘柄を購入できるが、3銘柄目は、残りの非課税投資枠20万円があるにもかかわらず、NISAで購入することができない。また、投資単位が120万円を超えているような銘柄はNISAで投資不可能だ。
NISAは損益通算ができない
損失が発生しても損益通算ができない点もデメリットだ。NISAで株式等を売買して利益が発生しても非課税となるが、損失が発生してもその損失は税計算上ないものとみなされるためだ。
例えば、NISAではない課税口座で、同一年内にC株式の売買で50万円の利益が発生し、D株式の売買で50万円の損失が発生していたとする。このケースでは、利益と損失を相殺する損益通算が可能であり、税金は発生しない。仮にC株式の利益に対して税金が源泉徴収されている場合でも、確定申告をすることにより取り戻すことができる。
一方、同じ売買でもC株式が課税口座でありD株式がNISA口座であった場合、D株式の損失は損益通算に利用できず、C株式の売買による50万円の利益に対する税金約10万円を納める必要がある。NISAの利用により税負担が増えてしまったケースとなる。
また、NISAで発生した損失は、翌年に損失を繰越して翌年の利益と相殺する「損失の繰越控除」も利用することはできない。
※1. 2019年度のIPO取扱実績
※2. 楽天証券のNISA口座ではIPO投資はできない
税制優遇制度があることから、投資を始めてみようという人たちの人気を集めているNISA。金融機関でNISA口座を開設するだけで、手軽に始めることができる。
しかし、同じNISAでも金融機関によってサービス内容や扱う商品やその数に違いがあるので、始める前にはよく比較検討することが大切だ。目についた金融機関で安易に開設してしまうと、後で「あの証券会社で開設したほうがよかった」などということにもなりかねない。
そんな事態はできるだけ避けたい。ただし、そうなったとしても、条件はあるが1年に1回金融機関を変更することができる。
では、具体的にどのように変更すればいいのだろうか。手続き方法と変更した際のメリット・デメリットに加えて、NISAを扱っている各ネット証券の特徴などを紹介しよう。
NISA口座は1年ごとに変更できる

NISA口座は当初、口座開設後4年間は変更できないことになっていたが、2015年から金融機関の乗り換えができるようになった。
注意したいのは、金融機関を変更できる時期だ。その年にNISA枠を利用して投資を行ったかどうかによって変更できる時期が異なる。
たとえば2020年の時点で、2020年分のNISA口座を別の金融機関に変更したい場合、1月以降一度もNISAを利用していなければ、2020年9月までに変更を申し出ることで、口座を変更できる。しかし、1月以降すでにNISAを利用して投資していた場合、2020年分のNISA口座の変更はできない。
その場合は、2021年分以降のNISA口座を変更することになる。2021年分の口座変更は、2020年10月から申し出ることができる。
金融機関変更のメリット:投資できる商品の幅が広がる
NISA口座を置く金融機関を変更することによって、投資できる商品の幅が広がることがある。
・少額での取引が可能な口座がある
・NISA口座変更・新規口座開設による、お得なキャンペーンが存在する
・NISA口座で米国株取引やIPO投資にも挑戦できる
NISA口座は証券会社だけでなく、銀行でも開設できる。ただし、銀行では株式を扱っていないので、購入できる金融商品が投資信託などに限られる。さらに、投資信託自体の数も少ない。もし、現在NISA口座がある金融機関の商品ラインナップに不満がある場合は、金融機関を変更することで選択の幅を広げることができる。
各ネット証券会社のNISAの特徴比較
各ネット証券会社のNISAの特徴を比較していこう。
以下のネット証券口座は、全て取引手数料が「無料」である。
夜間PTS取引やIPO銘柄数が魅力のSBI証券のNISA口座
ネット証券最大手のSBI証券でNISA口座を開設するメリットの一つは、夜間取引ができる点だ。SBI証券ではPTS(取引所金融商品市場外取引)サービスを実施しており、午前8時20分から深夜23時59分まで、株式市場の取引時間外でも株取引ができる。日中仕事をしている人にとっては、大きなメリットだろう。
また、2018年のIPO銘柄数は86本で、NISA口座を扱っているネット証券のうち最多だ。投資信託の本数も多く、100円からの取引ができるので、気軽に投資を始められる。
独自のポイント制度もあり、対象となる投資信託の月間保有額に応じてポイントを獲得できる。貯まったポイントは現金や商品のほか、Tポイントやマイルなど他社のポイントにも交換できる。
楽天スーパーポイントで投資信託を購入できる 楽天証券のNISA口座
楽天グループ共通のポイント制度である楽天スーパーポイントを活用できるのが、楽天証券でNISA口座を開設する最大のメリットだ。
楽天市場など楽天グループのサービスを利用すると獲得できる楽天スーパーポイントは、楽天証券で投資信託の購入費用として使うことができる。さらに、投資信託の積立資金を楽天カードのクレジット決済で引き落とせば、積立金額100円につき1ポイントが付与される。
投資信託は2,550本以上、米国株式約1,760銘柄、中国株式約730銘柄などを取引できる金融商品もあり、充実した投資が行えるのも楽天証券の魅力と言える。
楽天証券で口座開設するなら、楽天カードを利用するのがおすすめだ。 楽天証券では、楽天カードでの投信の積立や保有でも楽天ポイントが付与される。楽天カードを持っている人はもちろん、まだ持っていない人もこの機会に新規申込すると良いだろう。
楽天カードでは、現在新規カード発行でもれなく7,000ポイントもらえるキャンペーンを実施中だ。
幅広い商品と手数料の安さが魅力 マネックス証券のNISA口座
マネックス証券は、商品を幅広く取りそろえているのが魅力だ。国内株式では、上場株式のほかETFやREIT、IPOなども対象に含まれる。米国株式も3,000銘柄以上、中国株式はほぼ全銘柄がそろっており、投資信託も1,000本以上あるため、幅広い商品から自分に合ったものを選ぶことができる。
手数料も安く、国内株式の売買手数料は無料となっている。
「プチ株」が魅力 au カブコム証券のNISA口座
au カブコム証券でのNISAの魅力は、「プチ株(単元未満株取引)」サービスがあることだ。毎月500円以上1円単位という少額で単元未満株を積み立てできる。これを使えば、指定した銘柄を毎月一定金額ずつ買い付けることで、買付単価を長期的に平準化することができる。
これなら少額で投資ができるため、無理なく投資をスタートできる。買い増ししていくことで単元株にもなる。さらに自分の名義で株を保有できるため、単元未満株にも株式優待を行っている企業を選べば、優待を受けることもできる。投資信託とはまた別の、コツコツ型投資をしたい人にはおすすめだ。
また、三菱UFJフィナンシャルグループなので、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が引き受けるIPO(新規公開株)を申し込むことができる(一部取り扱わない場合がある)。
無料で使える情報ツールが充実 松井証券のNISA口座
老舗の総合証券会社として、情報サービスや分析力に定評のある松井証券。NISAでも使える投資情報ツールを、無料で豊富に提供している。
たとえばQUICKリサーチネットには、最新の個別銘柄レポートや全銘柄の優待情報、注目企業の人気サービスなど、投資に必要な情報がそろっている。またテーマ投資ガイドでは、個人投資家が今注目しているテーマをランキング形式で表示でき、相場の流行を知る手助けとなる。
これらの情報サービスやツールは、NISAでの投資をより充実したものにしてくれるだろう。
金融機関を変更するための手順
では、実際NISA口座を置く金融機関を変更するには、どうしたらいいのだろうか。具体的な手順について説明していこう。
NISAは1年に1回、口座を置く金融機関を変更することができる。まずは現在口座がある金融機関に変更を依頼し、「金融商品取引業者等変更届出書」を送付してもらう。必要事項を記入して提出すると、「非課税管理勘定廃止通知書」が発行される。申し込みから発行まで約1ヵ月かかる。
次に、新しくNISA口座を置きたい金融機関に口座開設を申し込む。すでに口座を開設している金融機関に変更する場合は、NISA口座の開設を申請するだけでいい。すると、「非課税口座開設届出書」が届くので必要事項を記入し、すでに発行された「非課税管理勘定廃止通知書」と一緒に提出すると、新しいNISA口座を開設できる。
NISAからつみたてNISAに変更するための手順
NISAからつみたてNISAに変更したい場合は、どうすればいいのだろうか。その変更手順について紹介しよう。
NISAとつみたてNISAは併用できない
つみたてNISAは、金融庁が定めた基準を満たす投資信託やETFが投資対象となる税制優遇制度だ。年間投資上限額は40万円と一般NISAより少ないものの、非課税期間が投資した年から最長20年と長いのが魅力だ。
一般NISAとつみたてNISAは併用できないため、毎年どちらかを選ばなくてはならない。もし、NISAをつみたてNISAに変更したい場合は、NISAは廃止することになる。
同じ金融機関内で、つみたてNISAへ変更する場合
同じ金融機関内の変更なら、さほど難しい手続きは必要ない。公式サイトでつみたてNISAへの変更を申し込むと、「つみたてNISAへの変更届け出書」が郵送されてくる。その書類に必要事項を記入して提出すれば、変更は完了だ。
金融機関を乗り換えて、つみたてNISAへの変更する場合
金融機関を変更してNISAからつみたてNISAに口座を変更する場合は、まず現在利用している金融機関に変更を依頼し、「金融商品取引業者等変更届出書」を送付してもらう。必要事項を記入して提出すると、「非課税管理勘定廃止通知書」が発行される。
次に、新しくつみたてNISA口座を開設したい金融機関に申し込む。申し込みは公式サイトから行うことができる。総合口座を開設していない場合は、まずは総合口座の開設が必要になる。
申し込み後、金融機関から書類が送られてくるので、必要事項を記入して「非課税管理勘定廃止通知書」とともに送付する。問題なく書類が受理されれば、つみたてNISAの口座が開設される。
NISAとつみたてNISAの両方を取り扱うネット証券会社は
NISAとつみたてNISAの両方を取り扱うネット証券会社を紹介していこう。
SBI証券
取り扱い金融商品が充実しているネット証券会社最大手。つみたてNISAの対象となる投資信託は169本と選択肢が多いのが魅力。
楽天証券
一般NISAやつみたてNISAで投資する投資信託の買付代金に、楽天スーパーポイントを利用できるのが魅力。他の買い物で付与されたポイントを使って、投資を行うことができる。
マネックス証券
国内外の上場株式や投資信託など、幅広い投資商品がそろう証券会社。IPO取扱件数も多い。つみたてNISAの対象となる投資信託も130本以上そろっている。
au カブコム証券
三菱UFJファイナンシャル・グループならではのIPO取扱件数の多さが魅力。IPOの抽選は全員公平にチャンスが与えられるので、初めてでも挑戦しやすい。NISA口座を開設すると、他の取引手数料が優遇されるサービス「NISA割」もある。
松井証券
投資信託の購入時手数料が全額ポイント還元されるなど、お得なサービスが充実。NISA口座での株式取引の売買手数料も無料で、コストを抑えた投資ができる。
ライブスター証券(新:SBIネオトレード証券)
つみたてNISAの対象となる金融商品は「ひふみプラス」のみだが、手数料が無料なので利用しやすい。ひふみプラスに投資したい人であれば選択肢に入れるべきだろう。
金融機関変更のデメリット:ロールオーバーできなくなる
NISAでは、購入した金融商品で得られた譲渡益や配当金、分配金は、優遇措置によって5年間非課税となる。5年間の非課税期間が満了した後は、翌年のNISA非課税投資枠にその金融商品を移して、非課税期間を5年間延長することができる。これをロールオーバーという。
たとえば、2015年にNISA枠で購入した株式は、2019年で非課税期間が終了する。その後は課税口座に払い出しをしたり、株式を売却したりして譲渡益を得てることもできるが、2020年のNISA枠に移して2024年まで再度非課税にすることもできるのだ。
しかし、ロールオーバーができるのは同じ金融機関内だけで、金融機関を変えた場合は延長できない。
仮に、2015年から2016年はA銀行のNISA口座を利用し、2017年からB証券会社のNISA口座を利用していた人がいるとする。この場合、A銀行で2015年に購入した金融商品を2020年のNISA枠にロールオーバーすることはできない。
ロールオーバーしたければ、2020年からNISA口座を再びA銀行に変更しなければならない。ただし、前述のとおり2020年分のNISA投資枠をすでに一部でも利用していれば、2020年分の口座変更は認められない。
投資信託など長期保有が前提の金融商品や、5年間の非課税期間に値下がりしたものの、今後値上がりが期待できる株式などを保有している場合は、ロールオーバーできない点がデメリットとなるので注意したい。
口座変更は1年ごとに可能 自分に合った金融機関を選ぶ
一般NISA、つみたてNISAではどちらも税制優遇が受けられるため、投資を行うのであれば限度額いっぱいに利用したい。
ただし、投資できる金融商品はNISA口座を開設している金融機関によって数も種類も異なる。特に銀行は株式投資ができず、投資信託の種類も限られているため、自由度がかなり低い。できればネット証券会社など金融商品を幅広く選べる金融機関に口座変更するのがおすすめだ。
一般NISA、つみたてNISAともに口座を置く金融機関は1年ごとに変更できるが、変更するとロールオーバーができないなどのデメリットもある。できれば変更しなくて済むように、しっかりと金融機関の特徴を見極め、長く利用できる金融機関を選びたい。
まずは、それぞれのネット証券会社で取り扱う商品ラインナップや手数料を確認し、自分のライフプランや資金形成の目的に合った証券会社でNISA口座を開設してほしい。(ZUU online 編集部)
個人投資家 Q.NISAのメリット・デメリットとはどのような点でしょうか?
NISAは、大きなメリットである利益が出た場合に非課税になる一方で、損失をしてしまうケースでも税務上なかったものと見なされてしまいます。本来、株式や投資信託の損失は、その他の株式・投資信託の利益と相殺することが可能ですが、NISA用の口座ではこれができません。
また、金融商品売却の際に損失が出たとしても、損失を3年間繰越ができる制度(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除)を利用できないというデメリットもあります。