2020年末から2021年1~3月にかけて、ビットコイン価格は大きく上昇した。4月末現在は落ち着きつつあるが、一時は1BTCの価格が700万を超える場面もあった。こうした価格上昇にはどのような背景があるのだろうか。また、ビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)への投資は今からでも始める価値があるのだろうか。こうした疑問について、マネックス証券の暗号資産アナリスト・松嶋真倫氏に話を聞いた(収録日:4月22日)。

松嶋 真倫

松嶋 真倫

暗号資産アナリスト

オーストリア生まれ、シンガポール・千葉県育ち。大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に業界参入し、暗号資産調査会社BaroqueStreetのメンバーとして業界調査・相場分析に従事。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」、「国内外のサプライチェーン領域におけるブロックチェーン活用事例と課題」などを執筆。

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「投機先」から「投資先」へと変化しつつあるビットコイン

ビットコイン 10万ドル
(画像=PIXTA)
―昨年末からのビットコイン価格の急激な上昇の背景について教えてください。

 

松嶋:ビットコインが急騰した要因は大きく分けて3つあります。

1つ目は、金融市場の緩和ムードが継続していることです。昨年、アメリカでは3兆ドル規模、GDP比10~15%という大規模な財政出動がありました。さらに今年に入り、バイデン政権は1.9兆ドル規模の追加の財政支出を行い、市場に流通するお金がさらに膨らんだのです。

また、FRB(連邦準備理事会)も2023年ぐらいまでは、利上げを行わない方針を示しています。こうした要因でダブついた資金がビットコインへ向かったと考えられます。

2つ目は機関投資家や企業の参入が相次いでいることです。昨年、マイクロストラテジーやスクエアといった企業がビットコインを大量購入しました。こうした流れは今年に入っても継続しています。2月にはテスラがビットコインの購入を表明し、3月には香港の上場企業・メイツがビットコインとイーサリアムを購入するなど、アメリカだけでなくアジアやヨーロッパにも企業の暗号資産参入の動きが広がりつつあります。

そして、3つ目は昨年末からの機関投資家・企業の参入に続いて、個人投資家の参入がものすごい勢いで広がっているという点です。アメリカの場合、アプリストアの1位と2位がロビンフッド(米国で若年層を中心に人気の投資アプリ)とコインベース(2021年4月にナスダック上場を果たした暗号資産取引所)が占めているといった状況が生まれています。

その背景には、PayPalやVISAなどの決済大手が暗号資産での決済の導入を表明したことがあります。これは、ビットコインはただ投資するだけでなく「使う市場」が広がりつつあることを意味します。

これらの理由がビットコイン価格の急激な上昇を後押ししたと考えられます。

―ビットコイン、暗号資産といえば、2017年~2018年の「ビットコインバブル」を想起する人も多いと思います。当時との違いには、どのような点があるのでしょうか。

松嶋:現在と2018年では、暗号資産への投資環境が大きく異なります。

当時は、規制やルールの整備が不十分な中で生まれた、「ビットコイン=儲かるもの」という投機的なブームでした。現在では、国内であれば金融庁、アメリカであればSEC(米国証券取引委員会)といった機関による、暗号資産業界に対する規制の整備が進んでいます。また、取引所のセキュリティ体制なども当時と比較すると大幅に改善されています。海外などでは、取引所がハッキングに遭う事件なども起きていますが、被害発生を受けての対応も迅速さを増しています。

機関投資家クラスが参入する土壌も整備され、アメリカを中心にカストディアン(投資家に代わって、株式や債券などの有価証券の保管・管理を行う金融機関)のサービスも充実してきています。

一方、暗号資産に投資している人たちも以前とは異なっています。2018年当時は個人投資家が中心でしたが、現在は機関投資家・企業の割合が増えているのです。

例えば、暴落が起きたとき、個人投資家が多ければ、すぐに売却することができるため資産価格は下がりやすくなります。しかし、機関投資家・企業が多い場合は、売買する際にも社内プロセスが必要になるため、「価格が下がる=すぐに売る」ということにはなりづらい。つまり、当時と比較すると暗号資産の価格も下がりづらくなっていると考えられます。

これらに加えて、暗号資産の「語り手」も変わってきていると思います。

当時は、個人投資家すなわちブロガーや芸能人、インフルエンサーなどが、ビットコインを中心に様々な暗号資産に言及していました。しかし、現在は金融メディアや金融機関、有名企業のCEOがビットコインについてコメントするなど、既存の金融業界と一定の関係性がある人たちがコメントするようになってきています。

これは、これまで投機的なものとして語られてきた暗号資産が、現在では「デジタル資産」として既存の金融業界から認められつつあることの一つの証左だと言えるでしょう。

年内に10万ドルも?伸び代の多い暗号資産市場

ビットコイン 10万ドル
(画像=PIXTA)


―株式投資であれば決算、FXであれば雇用統計など、取引する際にチェックすべき様々な指標があります。暗号資産の場合は、どのような指標を参考に取引すべきなのでしょうか?

松嶋:ビットコインについては、ミクロではなくマクロな視点で捉えることが重要だと思います。ビットコインは、「ファンダメンタルズがない」と言われることが多いのですが、ファンダメンタルズがないからこそ、企業や国がヘッジ的な意味合いで購入することがあるのです。法定通貨の信用が不安定になった場合、金と共にビットコイン価格が上昇する傾向があります。

ビットコインを始めとする暗号資産市場は、株式市場のようにできあがった市場ではなく市場としての伸び代があります。そのため、「長期保有するメリットがある」ということが大前提ではありますが、短期的な値動きを予測する上では、景気の動向をチェックすることが重要と言えるでしょう。

一方、イーサリアムについては、様々なアプリケーションが開発されているため、これらアプリやイーサリアムのブロックチェーン自体の開発動向などが重要です。これまでお話ししてきたように、現在では多くの機関投資家がビットコインに参入していますが、彼らが次に注目する暗号資産はイーサリアムだと言われています。実際、カナダでイーサリアムETFが上場承認されたことで人気を集めています。

ビットコインとイーサリアム以外の暗号資産に関しては、「どこが発行しているのか」に注目すべきでしょう。例えば、リップルであればリップル社、バイナンスコインであればバイナンス社の動向をチェックする必要があります。

暗号資産を発行する際には、ホワイトペーパーを発行する必要があり、その中には「そのプロジェクトがどのような経済効果があるのか」「どのようなサービスを目指しているのか」「発行する上で分配する割合」といった情報が書かれています。こうしたものを参考にするとよいでしょう。

また、これは特殊な事例になりますが、ドージコインなどは、イーロン・マスクが言及したことで大きな注目を集めました。暗号資産はデジタル上で価値が移動するものなので、SNSなどのコミュニティ主導で価格が動く事例も頻繁に発生しています。こうした短期的な動きにもついていきたい人は、暗号資産ごとのコミュニティなどをチェックして、情報を取得する必要があると思います。ただ、それだけのコストをかけられる人は多くないのではないでしょうか。

―2021年のビットコイン価格については、どの程度のレンジになるとお考えですか?

松嶋:非常に難しいところですね。

2020年末の時点で6万ドルと考えていたのですが、これほど早く6万ドルに到達するとは思っていませんでした。1月に入ってから10万ドルという予想も出ていますが、現在の流れを考慮すると10万ドルになってもおかしくないと思います。

「買いムード」が続くことが大前提にはなりますが、10万ドルに届くとしても、おそらく一度は下落局面が来るでしょう。

ポイントとしては、機関投資家の参入が挙げられます。アメリカではゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーなどの大手金融機関が「暗号資産関連のビジネスを始める」と言っているので、さらに本格化してくると予想されます。こうした動きが、どれだけ欧州・アジアに広がるか、が注目されます。

さらにビットコインETFが年内に承認されれば、より資金が入ってくると予想されるので、10万ドルに届く可能性は十分にあると思いますね。

デジタル技術が生み出す「新しい世界」に投資する

ビットコイン 10万ドル
(画像=PIXTA)
―ビットコインを中心とした暗号資産は、「長期で保有する資産」としてどの程度伸び代があると思いますか?

 

松嶋:ビットコインは金と比較されることが多いのですが、現在の金の時価総額10兆ドル程度に対して、ビットコインは1兆ドルほどです。金が持っているパイをビットコインがどの程度取れるか?ということを考えると、半分取ったとしても5兆ドルです。これは感覚値ではありますが、あり得る規模感だと思います。

社会全体のデジタル化の流れを考えれば、物理的な金から「デジタルゴールド」と呼ばれるビットコインにお金が流れていく可能性は十分にあります。ポートフォリオの中に金を組み入れている人たちが、徐々にそれをビットコインにしていくと考えると、5兆ドルという規模感は現実的なものなのではないでしょうか。

2017・2018年当時に、暗号資産を売却した人の多くは損失を出していますが、持ち続けた人の多くは利益が出ていると思います。同じことが、ここ数年のスパンで起きる可能性は高いでしょう。「半減期」が起こり、供給量が減り需要が高くなれば価格は上がるので、今回高値で掴んでしまった人も長期的に保有すればペイできる可能性はあると思います。

―最近では、NFTも注目されてきています。ブロックチェーン技術を使ったデジタル資産の定着も暗号資産にとって追い風といえるのでしょうか?

松嶋: NFTの存在は大きいと思います。現在は、アートなどがメインですが、VR世界のファッションアイテムをNFT化するという動きもありますし、グッチなどの高級ブランドが参入する可能性も報道されています。

NFTの売買には暗号資産が利用されるため、普及を後押ししていくことになるでしょう。実際に、NFTはNBAなどのスポーツ界でも注目されていて、選手の給料をビットコインで支払うといった動きもあります。

暗号資産は技術と紐づいているので、単純な値動きだけでなく「投資を通じて世界が変わる」という体験ができることも醍醐味の1つだと思います。デジタル技術を用いた既存の世界から新しい世界への変化を応援するのが暗号資産への投資といえるかもしれないですね。