2018年、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」が公布され、2019年4月からの労働基準法を筆頭にさまざまな関連法令が改正されています。特に残業に関するこれまでの法令の改正については注意が必要です。
おそらく読者の耳に馴染みがあるのは、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」 という長い法律案ではなく、「働き方改革関連法」でしょう。
日本の平均的な残業時間は「働き方改革関連法」によって、どのように変化しているのでしょうか。また、残業時間ランキングでは、業種別や職種別の平均残業時間などを詳しく紹介するので、「自分の残業時間は他と比べてどうなのだろう?」といった疑問も解決することができるでしょう。
サラリーマンの平均残業時間は?
最初に、サラリーマンの平均残業時間を見ていきましょう。期間は2014年から2020年まで 、3ヶ月ごとの平均残業時間を表にしたものになります。
最新の平均残業時間
1~3月 | 4~6月 | 7~9月 | 10~12月 | |
---|---|---|---|---|
2014年 | 45.09 | 44.36 | 43.93 | 43.32 |
2015年 | 43.13 | 39.57 | 38.44 | 37.58 |
2016年 | 36.03 | 35.43 | 34.41 | 34.63 |
2017年 | 33.67 | 31.37 | 31.19 | 29.81 |
2018年 | 29.08 | 28.15 | 27.89 | 27.19 |
2019年 | 26.79 | 26.27 | 25.62 | 25.76 |
2020年 | 24.86 | 23.53 | 24.11 | 24.02 |
日本は「残業大国」と思われがちですが、2014年~2020年にかけては、前年からは確実に平均残業時間が減少していることがわかります。
ちなみに国際統計を専門とするサイトが2020年にまとめた調査では、現在世界で一番労働時間が長い国はメキシコで、2位がコスタリカ、3位が韓国になっています。
日本は、アメリカや、仕事よりもプライベートを重視している印象がとても強いギリシャ、イタリア、スペインよりも少ない労働時間となっています。これはあくまで年間の総労働時間なので、残業という観点から見るとまた少し変わった統計になるかもしれません。
具体的な職業別残業時間ランキング
続いて職業別に見た場合、残業時間はどのようになっているのでしょうか。
順位 | 職種 | 残業 時間 |
---|---|---|
1位 | 美容関連職 (理美容/エステ/マッサージ) |
10.3時間 |
2位 | 営業事務・アシスタント | 11.1時間 |
3位 | 生産・製造・プロセス開発 (医療系) |
11.4時間 |
4位 | 医療事務 | 13.6時間 |
5位 | 経理事務・財務アシスタント | 14.8時間 |
6位 | 総務アシスタント | 15.4時間 |
6位 | 金融事務 | 15.4時間 |
8位 | 一般事務・アシスタント | 15.6時間 |
9位 | 銀行(個人向け) | 15.9時間 |
10位 | 貿易事務 | 16.0時間 |
11位 | 調理/ホールスタッフ/フロアスタッフ | 16.8時間 |
12位 | 秘書/受付 | 16.9時間 |
13位 | 薬事 | 17.2時間 |
14位 | 品質管理/品質保証(素材・化学・食品・化粧品・その他) | 17.3時間 |
15位 | 技術営業・アプリケーションエンジニア(化学・素材・化粧品・トイレタリー) | 17.4時間 |
16位 | 臨床開発関連 | 18.6時間 |
16位 | 学術/メディカルサイエンスリエゾン | 18.6時間 |
18位 | マーケティング・広報アシスタント | 18.8時間 |
19位 | 分析/評価(素材・化学・食品・化粧品・その他) | 19.0時間 |
19位 | 分析/評価(素材・化学・食品・化粧品・その他) | 19.0時間 |
1位に理容師やエステ、マッサージなどの美容関連職、続いて2位に営業事務やアシスタント、3位に医療系の生産、製造、プロセス開発などの職業がランクインしています。
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残業の多い業種ランキング
続いて、業種別に残業の多い、少ないを見ていきましょう。残業の多い業種は以下のような業界が挙げられています。
順位 | 業種 | 残業 時間 |
---|---|---|
1位 | 広告 | 49.1 |
2位 | 新聞 | 40.9 |
3位 | EC/ポータル/ASP | 36.5 |
4位 | コンビニエンスストア | 36.3 |
5位 | 建物管理/安全作業 | 35.8 |
6位 | コンサルティングファーム/シンクタンク | 35.3 |
7位 | 印刷関連 | 34.7 |
8位 | ディベロッパー | 33.2 |
9位 | 通信/ネットワーク機器メーカー | 33.0 |
10位 | 外食/レストラン | 32.6 |
このように残業の多い業種としては、広告や新聞、コンビニエンスストアや外食・レストラン関連があります。いずれも業種を通しての平均で36時間となっています。
残業の少ない業種ランキング
では、逆に残業の少ない業種を見ていきましょう。
順位 | 業種 | 残業 時間 |
---|---|---|
1位 | スポーツ/ヘルス関連施設 | 12.3 |
2位 | 薬局 | 12.4 |
3位 | クレジット/信販 | 12.8 |
4位 | 病院 | 13.2 |
5位 | 専門店/小売店 | 13.8 |
6位 | 医療機器メーカー | 13.9 |
7位 | ホテル/旅館 | 15.0 |
8位 | 服飾雑貨メーカー | 15.0 |
9位 | 士業関連 | 15.2 |
10位 | 投信/投資顧問 | 15.2 |
意外なことに24時間営業のイメージがあるジムなどのスポーツやヘルス関連施設、ホテルや旅館などが挙げられています。これらの業種の平均残業時間は13時間となっていました。
これらの業種は営業時間などがしっかりと定められているため、スタッフのシフトなどにより残業は発生しにくい業種なのだと予想されます。
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サラリーマンの残業に関する法律は?
続いて、サラリーマンの残業に関する法律を見ていきましょう。
労働基準法32条で定義されている残業は、法律で定められた労働時間(法定労働時間)を超えた時間を指しています。その上で、サラリーマンの残業に関する法律がどのようなものとなっているのかを改めて確認していきましょう。
残業は、週40時間、1日8時間以上の労働部分
一般的には週で40時間、1日にすると8時間を超えて働く場合は、その超過分の労働時間が残業となります。
一定以上の残業には、36協定が労使で結ばれていることが必要
そして、残業や休日出勤を労働者にさせるためには労働基準法36条で定める、いわゆる「36協定」を企業側と労働者側とで締結する必要があります。ただ、36協定を結んだからといって、無制限に残業を行ってよいということではもちろんありません。
36協定が結ばれていると、残業週45時間までOK
36協定の趣旨は、休日労働や残業を無制限に認めるというものではありません。あくまでイレギュラーなケースへの対応するためであることを、特に企業側がしっかりと認識した上で36協定を結ぶこととされています。
36協定は無制限に残業を認めるものではなく、しっかりと上限が定められています。
- 月45時間
- 年間360時間、1ヶ月で45時間、1週間で15時間
このように労働基準法36条4項に明記されています。
特別条項付き36協定が結ばれていると年間720時間までOK
ただし、以下のような条件で特別条項付きの36協定を結んでいる場合、年間360時間から2倍の720時間まで上限が上がります。
これは2019年4月に施行された「働き方改革法」で新しく定められたものです。どのような特別な条項を盛り込んだものなのでしょうか?
- 特別条項を適用して上限延長する回数は年6回まで
- 業務量の突然の増加などイレギュラーな予想がされた場合に限る
- 過労死などを引き起こさないように十分に留意を
残業が月80時間を2ヶ月以上はNG
また見落としがちなのが、月80時間を2ヶ月以上続けることはNGという部分です。これは、いわゆる「複数月平均80時間以内要件」と呼ばれ、労働基準法36条6項3号で定められています。
単月100時間以上の残業は完全にアウト
また、過労死ラインと呼ばれる残業時間があります。それはいわゆる「単月100時間未満要件」とも呼ばれ、労働基準法第36条6項2号に定められています。
平成13年に発表された「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」で、100時間以上の時間外労働は、健康に著しく悪影響を及ぼす可能性が大きいと示されており、この要件を超えた残業が発症の1ヶ月前にある場合は、限りなく労災認定となる可能性が高いということになります。
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月45時間以上残業できるのは、年間6ヶ月まで
またこちらも見落としがちなのですが、労働基準法36条5項にもあるとおり、残業時間の上限である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までなので、その点も注意しておきましょう。
年俸制でも1日8時間以上は残業
一般的に年俸制の場合、個人の裁量や成果によって年間の給与を決定するため、労働基準法とは無縁のように思われがちですが、実際はそんなことはありません。
あくまで労働基準法第37条にもとづいて「週40時間、1日8時間」を超えた分は時間外労働として残業代を支払う必要があります。
残業の平均は24時間前後
冒頭でもお伝えした通り、日本の企業においては年を追うごとに確実に残業時間は減ってきています。今後さらに減ることはあっても、大幅に増えるということはないでしょう。
業界や職業別の残業時間と法律など、基本的な情報を把握した上で、自身のキャリアを考える際の判断材料にしてみてください。
調査概要
実査機関 | 株式会社クロス・マーケティング |
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調査目的 | 転職エージェント各社の利用状況および満足度に関する調査 |
調査対象 | 転職経験のある国内の20歳以上の男女 |
調査方法 | インターネットリサーチ |
調査対象者数 | 2400名 |
調査実施期間 | 2021年5月 |
調査対象地域 | 日本国内 |
母集団 | 転職経験のある20歳~59歳の男女2400名 |